転生したら悪役令嬢になるが、隣国の極悪非道な皇帝に嫁いだら実はただのツンデレでした。

第八章・ユリアの決意。18

　相変わらず涙もろいわね……。私は、疲れながらもクスッと笑みをこぼした。
「もう～泣かないでよ？　父親でしょ？」
「だって……あんな苦しそうにしていて。そうしたら……息子と娘が……おぎゃあって生まれて」
　涙声の上に初めての立ち会い出産をしたため、頭の中が上手く整理が出来ていない様子だった。これで極悪非道と言われているなんて可笑しい話だ。
　私は陛下の手をギュッと握った。そして微笑みかける。
「しっかりしてよ。名前……もう決めたの？」
「ユリア……」
　名前が決まったのかと優しく声をかけると、さらに涙を流しながらもコクりと頷き、
私の手を握り締め返してくれた。
　もう……どちらが権利を握っているのか分からないわね。そう思うと何だか微笑ましく思えた。
　そして双子の名前を教えてもらった。息子は『アシェル』幸運を呼ぶ男になるように。娘は『リリアン』になった。
　リリアンは、自分と同じユリの意味を持つ。とても素敵な名前だと思う。
　これからどんな風に成長して大きくなっていくのか楽しみである。
「元気で大きくなってね。アシェル、リリアン」
　アシェルを抱かせてもらうと二人に聞こえるように話しかける。リリアンは、陛下が抱っこしていた。初めて抱っこするこの子達は、本当に小さくあたたかい体温とズシッとした重さがあった。これが生きている命の重みだろう。
　涙が出るほど嬉しかった。これで本当に母親と父親になったのだと実感する。
　チラッと陛下を見ると頬を染めながら、その命に感動していた。
　私は、その姿を見てどうしようもなく幸せを感じたのだった。そして陛下と一緒に頑張ってこの子達を育てて行こうと心に誓う。

　それから数ヵ月後が経った。私達は子育てに奮闘する。なんせ双子だ。泣くのも世話をするのも二倍だから大変。
　お腹が空いたとぐずるので、私は手早く母乳をあげる。この世界の貴族は子育ては
乳母の役目だが、私は自分の手で育てたかった。
　元の世界の母親は、そうやって育ててきた。私も例外ではない。