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クリスマスの夜に。9
しおりを挟むうん……? 見てみると鬼龍院さんは、言いかけたまま寝てしまったようだった。
何とも子供みたいな人だろうか。私は、クスッと笑うと手を離すと布団をかけ直してあげた。
スヤスヤと眠る鬼龍院さんを見て静かに微笑んだ。この人は……不思議な人だ。
頼りないように見えてきちんと組のことを考えている。仕切れるほどの行動力も信頼も厚い。だが、やっぱり放っておけないほど危なっかしい。
そうなるとお節介な性格の私がしっかりしないと……と思えるから相性がいいのかもしれないわね。
フフッと笑うと鬼龍院さんの頬にチュッとキスをした。おやすみなさい……と言いながら。
翌日鬼龍院さんの車で学校に向かった。朝起きたらお互いに照れくさかったけど新たな気持ちになることが出来た。
その気持ちは、学園に着いたら保健室に向かい奈緒に、そのことを話した。
「あらま~そんなことがあったの? 驚きよねぇ~一晩一緒に寝て何もないなんて」
奈緒……驚くところは、そこじゃない!! ずれた感想に思わず崩れ落ちた。
「だって……色々と驚き過ぎて。一番ツッコミやすそうなのが、それなんだもの。でも一ヶ月も会えないなんて寂しいわね。無事に帰って来れるならいいけど心配だし」
「うん……心配なのがそこなんだよね」
一ヶ月も会えないのも寂しいし、鬼龍院さんの身も心配だし……。
「心配の前に辞めちまえよ!!そんな危ない奴」
えっ? と振り向くといつものように坂下君が窓から顔を出してきた。相変わらず話をしていると出没してくるわね。
「大体なんだよ…それ? 警察に捕まるし、敵対と戦う? ヤクザの本性もクソもないじゃねぇーか。そんなんで結婚したって幸せになるどころか、先生の身の方が危ないじゃん」
「捕まった訳ではないのよ……任意同行だったし。話を聞くだけだし、それに……形だけで本当は…」
「そんなの普通に生きていたらされないじゃん。鬼龍院って奴がヤクザだからされた。そんなの普通の人間から見たら異常だよ! 危ない奴には変わらない」
坂下君は、怒ったように言ってくる。私の心配をしてくれていた。
確かに普通に生きていたら任意同行なんてされないだろう。でも、それは仕方がないことだ。彼は、それだけ大きな責任があるのだから。
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