上 下
98 / 142

女は度胸。18

しおりを挟む

「若……お疲れ様でした。それでどうなったんですか?お話の方は?」
 と聞いてきた。すると鬼龍院さんの表情が変わった。

「重勝さん、至急幹部達を集めろ。大切な話がある」

 私をギュッと抱き締めたままそう伝えた。重勝さんは、返事をするとすぐに周りに指示を出した。
 その姿を見て何だか大変なことが起きそうな雰囲気で不安になってきた。
 しばらくして幹部の人達が大広間に集められた。
 さすがヤクザの幹部って言われているだけのことはある。どの人も迫力と怖そうな雰囲気の人ばかりだった。
 鬼龍院さんは、奥の上座の席に座った。キリッとしている姿は、若頭モードで、さっきまでの、か弱い雰囲気がまったくない。

「皆に集まってもらったのは他でもない。最近無断で出回っている麻薬の出所と販売のことだ。知っての通り……我々鬼龍院組の名を名乗り、大量の麻薬が民間に出回り金儲けをしているらしい」

 ピリッとした雰囲気は、まるでドラマや映画の極道のワンシーンを見ているようだ。
 リアルに見ると迫力があり過ぎて怖い。私は、近くに居ても本当にいいのだろうか?
 明らかに、私は場違いのような気がする……。

「若。これは、鬼龍院組に対する侮辱ですぜ。早く取っ捕まえて濡れ衣を晴らし、痛め付けないと我々の名誉が傷つく」

「そうだ。こんな濡れ衣してきた野郎を許せる訳がねぇ。見つけ次第ボコボコにぶち殺してやりましょう」

 幹部の人達は、かなり苛立っていた。異様で今にも争い事が起きそうな空気に私は、ただ恐怖を覚える。
 手がガタガタと震えてきた。すると鬼龍院さんは、ハァッとため息を吐いた。そして1枚の紙を重勝さんに渡した。

「そう慌てるな。すでに目星は分かっている。これは、警察から頂戴した極秘書類だ!そこに犯人は、伊崎組の名が入っていた」

「伊崎組だ!?」

 その名を聞いた幹部達は、ざわつきだした。えっ? 伊崎って誰? そんなざわつくような人達なの?
 何も知らない私は、おろおろしながら聞いていた。すると重勝さんがこっそりと教えてくれた。

「伊崎組は、我々鬼龍院組に反する組織です。やり方も全く違い暴力、恐喝や犯罪にも手を染めていています。その上……極道界のトップを狙っており我々鬼龍院組を邪魔のように思っている連中ですよ!」

 犯罪にも手を染めている!? そんな危ない連中が他にも居るの?
 そんなのを野放しにしていたら危険じゃない。だったら早く捕まえなくちゃあ……。
 私は、悶々としていると幹部も同じ気持ちだったらしい。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

人違いラブレターに慣れていたので今回の手紙もスルーしたら、片思いしていた男の子に告白されました。この手紙が、間違いじゃないって本当ですか?

石河 翠
恋愛
クラス内に「ワタナベ」がふたりいるため、「可愛いほうのワタナベさん」宛のラブレターをしょっちゅう受け取ってしまう「そうじゃないほうのワタナベさん」こと主人公の「わたし」。 ある日「わたし」は下駄箱で、万年筆で丁寧に宛名を書いたラブレターを見つける。またかとがっかりした「わたし」は、その手紙をもうひとりの「ワタナベ」の下駄箱へ入れる。 ところが、その話を聞いた隣のクラスのサイトウくんは、「わたし」が驚くほど動揺してしまう。 実はその手紙は本当に彼女宛だったことが判明する。そしてその手紙を書いた「地味なほうのサイトウくん」にも大きな秘密があって……。 「真面目」以外にとりえがないと思っている「わたし」と、そんな彼女を見守るサイトウくんの少女マンガのような恋のおはなし。 小説家になろう及びエブリスタにも投稿しています。 扉絵は汐の音さまに描いていただきました。

隠れオタクの女子社員は若社長に溺愛される

永久保セツナ
恋愛
【最終話まで毎日20時更新】 「少女趣味」ならぬ「少年趣味」(プラモデルやカードゲームなど男性的な趣味)を隠して暮らしていた女子社員・能登原こずえは、ある日勤めている会社のイケメン若社長・藤井スバルに趣味がバレてしまう。 しかしそこから二人は意気投合し、やがて恋愛関係に発展する――? 肝心のターゲット層である女性に理解できるか分からない異色の女性向け恋愛小説!

隠れ御曹司の愛に絡めとられて

海棠桔梗
恋愛
目が覚めたら、名前が何だったかさっぱり覚えていない男とベッドを共にしていた―― 彼氏に浮気されて更になぜか自分の方が振られて「もう男なんていらない!」って思ってた矢先、強引に参加させられた合コンで出会った、やたら綺麗な顔の男。 古い雑居ビルの一室に住んでるくせに、持ってる腕時計は超高級品。 仕事は飲食店勤務――って、もしかしてホスト!? チャラい男はお断り! けれども彼の作る料理はどれも絶品で…… 超大手商社 秘書課勤務 野村 亜矢(のむら あや) 29歳 特技:迷子   × 飲食店勤務(ホスト?) 名も知らぬ男 24歳 特技:家事? 「方向音痴・家事音痴の女」は「チャラいけれど家事は完璧な男」の愛に絡め取られて もう逃げられない――

地味系秘書と氷の副社長は今日も仲良くバトルしてます!

めーぷる
恋愛
 見た目はどこにでもいそうな地味系女子の小鳥風音(おどりかざね)が、ようやく就職した会社で何故か社長秘書に大抜擢されてしまう。  秘書検定も持っていない自分がどうしてそんなことに……。  呼び出された社長室では、明るいイケメンチャラ男な御曹司の社長と、ニコリともしない銀縁眼鏡の副社長が風音を待ち構えていた――  地味系女子が色々巻き込まれながら、イケメンと美形とぶつかって仲良くなっていく王道ラブコメなお話になっていく予定です。  ちょっとだけ三角関係もあるかも? ・表紙はかんたん表紙メーカーで作成しています。 ・毎日11時に投稿予定です。 ・勢いで書いてます。誤字脱字等チェックしてますが、不備があるかもしれません。 ・公開済のお話も加筆訂正する場合があります。

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

ヤクザと私と。~養子じゃなく嫁でした

瀬名。
恋愛
大学1年生の冬。母子家庭の私は、母に逃げられました。 家も取り押さえられ、帰る場所もない。 まず、借金返済をしてないから、私も逃げないとやばい。 …そんな時、借金取りにきた私を買ってくれたのは。 ヤクザの若頭でした。 *この話はフィクションです 現実ではあり得ませんが、物語の過程としてむちゃくちゃしてます ツッコミたくてイラつく人はお帰りください またこの話を鵜呑みにする読者がいたとしても私は一切の責任を負いませんのでご了承ください*

Promise Ring

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
浅井夕海、OL。 下請け会社の社長、多賀谷さんを社長室に案内する際、ふたりっきりのエレベーターで突然、うなじにキスされました。 若くして独立し、業績も上々。 しかも独身でイケメン、そんな多賀谷社長が地味で無表情な私なんか相手にするはずなくて。 なのに次きたとき、やっぱりふたりっきりのエレベーターで……。

そこは優しい悪魔の腕の中

真木
恋愛
極道の義兄に引き取られ、守られて育った遥花。檻のような愛情に囲まれていても、彼女は恋をしてしまった。悪いひとたちだけの、恋物語。

処理中です...