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番外編・皇太子の憂鬱(レイヴァン視点)29

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 お腹の子の能力は母親に影響する。それを利用してクリスティーナの力を借りて私の命を前の状態に戻してくれたらしい。
 つまり私は助かったのだ。まるで奇跡のような事だった。良かった……本当に。
 その後、クリスが連れて来られ、今の状況を説明してくれた。
 エルザはマナの使い過ぎで眠っているらしい。でも命の別条はなく、時期に目が覚めるらしい。そうか……それなら良かった。
 しかし、クリスはある事実を私に言ってきた。
『父上は一度死んだ身。本来なら生き返る事は不可能だ。しかしクリスティーナの能力で、その魂を別の世界に逆行させた。この世界は、父上の世界であってそうじゃない。転生させたのだ……過去に』
 最初はその意味が分からなかった。だが、人を生き返らせるにはリスクがあるものだ。
 私はその現実を静かに受け入れる事にした。
「そうか……なら一つ聞いていいか? 本当の世界の私はどうなっているんだ? エルザは、その事を知っているのか?」
「……いいや、誰にも話してはいない。元の世界でも父上は生き返っている。他の次元から来た、もう一人の貴様がな」
「……そうか。エルザが悲しませなかったのなら、なんでもいいよ。私はこの世界で私として生きて行こう。もちろんエルザには内密するつもりだ」
 彼女には心配や不安にさせたくない。結果として私が生き返ったのなら、事実は墓まで持って行こう。彼女が笑っていられるように。
 その言葉にクリスは静かに笑う。二人だけの秘密になった。

 そして私は順調に回復して、エルザが目覚めるのを待つ。
 目覚めてからも私とクリスの即位式があったり、エルザとの結婚式があったりと大忙しだった。でも無事にエルザを妻として迎える事が出来て良かったと思う。
 この世界の彼女も美しく、私の愛する彼女のままだったからすぐに恋に落ちた。絶対に幸せにしようと心に誓う。
 挙式も無事に終わり二ヶ月後。エルザのお腹も五ヶ月になった頃。
家族だけでサファード公爵家が所有する山でピクニックを出かける。まさか、そこでクリスティーナがマナを使い時間を早め、早産にさせるとは夢にも思わなかったが。
 陣痛に苦しむ彼女にどうしたらいいか分からず戸惑うが、メアリー夫人が助言をしてくれ私が取り上げることに。初めての経験で狼狽えたりしたが、無事に取り上げる事が出来たのは一生の思い出になるだろう。
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