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番外編・皇太子の憂鬱(レイヴァン視点)24

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 三日後。国外の視察に行くと理由をつけて馬車に乗った。そして魔法石を使い、移動魔法で森の奥にある別宅に向かう。着くとすぐに中に入って行く。『ホワイトキャッスル』にそっくりにリフォームされた別宅は希望通りに完成していた。
 エルザは、まだ目を覚まさないらしい。酷く取り乱していたと聞いて胸が痛む思いだった。しかし、奇跡的にも私が来て、しばらくすると目を覚ましてくれた。
 私は申し訳なく思ったが、会える喜びと心配で思わず抱き締めてしまった。彼女は困惑しているみたいだったが。
 どうにか説明が出来ないかと思ったら彼女は、右手の包帯の他にレイナ事を気にしていた。婚約破棄をしたばかりだし無理もないが。
 だが私はその名を聞いただけでも思わず拒否反応が出てしまい『彼女の名を口にするな』と怒鳴ってしまった。すでにトラウマみたいになっている。
 その名が出ただけでも身体が震えあがってしまっている。それを隠すために早々と寝室から出てしまった。長いすると、もっと情けない姿を見せかねない。
 エルザのお見舞いは、また改めて来る事にした。
 お見舞いの際には今、貴族の令嬢にも話題のレアチーズケーキを持って行く。他にも装飾品や有名デザイナーが作ったドレスなどをプレゼントする。
 こんな山奥の何もないところに送り込まれたんだ。婚約破棄の事もあるが、せめて彼女が喜びそうなモノを贈りたかった。大事な時期だし。
 もちろん、それに関してはクリスに小言を言われる。まだ危険な状態の時に無暗に優しくするな。注文の際に気づかれたらどうするのだと。
 デザイナーに注文する際にはレイナにも別のデザインで、ドレスを作るように頼んである。これでカモフラージュは出来るはずだ。
「口止めをしておいたから大丈夫だ。それに今は妊娠で不安な時期なんだから、出来るだけ気を遣ってあげないと。ストレスで流産したらどうするんだ?」
『私はそこまでやわじゃない』
 いや、やわとかの問題じゃなくて……。
 結局、何を言っても文句を言ってもくるので、無視して自分の出来る範囲で気遣うことに。もちろんレイナ達に気づかれないように特に注意を払いながら。
 
 そして七ヶ月頃が過ぎた頃。今日出産するとクリス本人から知らせがきた。
 私はとにかく彼女が居る別邸に急いだ。やっとだ。やっと本当の事が打ち明けられる。今まで苦労して隠してきた事が実るんだ。
 彼女がそれに対して許してくれるか分からないが、それでも精一杯謝罪しよう。
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