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番外編・皇太子の憂鬱(レイヴァン視点)9

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 そうすれば、私が生まれやすい環境を整えられる』
 「しかし、そんな事をして本当に上手くいくのか? もし失敗したら、どうするんだ。それにエルザを傷つけてしまうだろ?」
 婚約破棄だけでもとんでもないのに、森の奥にある別宅に追放。いくら避難させるためだと言っても許される事ではない。それにサファード公爵家の能力を重んじる皇族に取っては、それは許されるはずがない。父が絶対に怒るだろう。
 何よりもエルザを……彼女を傷つけてしまう。
 もしかしたら嫌われてしまうだろう。そんなのは私自身でも耐えられない。
『貴様はアホか? そんなのは上手くやれば、いくらでも回避は出来る。つまり父上の演技と対応力次第だ』
「しかし……そうだ。エルザに事情を話して協力してもらえば」
『貴様は無能か? そんな事をしてみろ。下手な大根演技に誰が引っかかると思うか? すぐに聖女達に、ばれてしまうだけだ。父上みたいな無能な演技力を活かすためにも、母上には何も言うな。少しでも信憑性を出すためにもだ。分かったか? ヘタレ』
 大根演技とか、無能って……何気に酷くないか? 仮にも父親に対してさ。
 我が息子は、かなりの毒舌家だった。本当に父親だと思っているのか?
『何だ? 不満なら辞退してもいいのだぞ? その代わりに父親の座を降りてもらうだけだからな。母上の代わりは居ないが父親候補は、いくらでも居る。そうだな、父上のイトコであるセインって男でもいいな。同じ皇族だし、元々母上を好いている。何ならいずれ皇帝に押し上げてやってもいい。それか母上の専属騎士の一人であるライリーって男でもいい。あれも伯爵家の長男だからな。それに聖女とは関わり合わないし、母上を慕っている。事情を話せば守ってくれそうだ』
「ちょっと待て。セインでもどうかと思うのに、何でライリーが⁉ そ、そんなのは許される訳がないだろう。エルザの夫と父親の座も私以外には居ない」
 そんなのは認めない。認めたくない。しかしクリスは鼻で笑った。
『父上……いや、貴様は何か勘違いをしていないか? 貴様の事情なんてどうでもいい。大切なのは母上の身の安全と我々を生んでもらう事だ。それすら出来ないのなら黙っててもらおう』
「な、何だと⁉ もう一度同じ事を言ってみろ」
 私はクリスの言葉にカッとなって文句を言ったが、それでも強気な彼は
『何度でも言ってやるが?』と返してくるので押し黙ってしまった。
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