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第三章・ご懐妊。15

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 無暗にレイヴァン様の手を触れようしたので拒まれてしまった。ズキッと胸が痛む。
 そんなに私の事が嫌いなの?
「も、申し訳ございません」
「い、いや……すまない。これは、自分への戒めだ」
「戒め……?」
「……あぁ、私はもう行く。また来るからな」
 それだけ言い残すと、レイヴァン様は寝室から出て行ってしまった。
 私は呼び止める事も出来ずにボー然とする。また来ると仰って下さいましたわ。
 それはつまり、またお会いして下さるって解釈でいいのよね?
 婚約破棄して、追放された身。しかし、見放された訳ではない様子だった。
 何故……? 嫌われたはずの私に?
 それにあの手の傷。戒めって言っていたけど、何のために?
 チラッとトムソンを見る。すると悲しそうな表情を見せてきた。
「殿下は誰よりもエルザ様を大切にしております。何か事情があるのでしょう」
「事情……何の?」
「そこまでは私にも。ですが私達に仰っていました。お腹の子は、紛れもなく次期皇太子になる子だと。エルザ様も、お腹の子もそのように敬えと」
「レイヴァン様が?」
 辻妻が合うようで合わない彼の行動。私を試しているの? いや、それにしたら不自然だ。感情と嚙み合っていないというか……。
 それに、お腹の子を次期皇太子と言ったわ。あれ?
 でも、どうしてレイヴァン様は『皇太子』と言ったのだろう?
 まだ生まれてもいないから性別は分からないはずだ。女の子の可能性もある。
 なのに、何故男の子だと思ったのだろうか?
 頭の中が困惑してくる。レイヴァン様は、生まれてくるなら能力を受け継いでいる女の子がいいはずだ。なのにどうして……?




 
 
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