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第三章・ご懐妊。9

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 私は一瞬にして、聖女様を貶めようとした悪役令嬢になってしまった。
 あまりのショックでふらつきそうになる。
「で……ですが……私の……」
 震える声でお腹の子の事を話そうとする。婚約破棄されたら……お腹の子は、どうなるの?
 途中まで言いかけるがレイヴァン様にギロッと睨まれ、それ以上に言う事を阻止される。あぁ、私達は見捨てられたのね。
 本当に私も我が子の事はどうでもいいのね。
 必死で涙が出そうになるが耐える。涙を流したら自分の能力が世間にバレてしまう。それだけは……我慢しないと。
「もういいだろ。この話は終わりだ。おい、サファード公爵家の令嬢を外に連れていけ」
 レイヴァン様は冷たくそう言うと、二人の騎士達が私の腕を掴み強引に連れて行こうとしてきた。そ、そんな。レイヴァン様!?
「や、やめて下さい。レイヴァン様~」
 私は必死に彼の名前を呼んだ。しかし冷たい表情で何も答えてくれなかった。
 レイヴァン様は最後に名前すら呼んでくれる事はなかった。
 会場の外に出されると、そこにライリーが待ち構えていた。ライリー!?
 彼は悲しそうな表情で私を見ていた。ライリーも皇族の意志には逆らえない。
 もしかしたら私の事を疑っているかもしれないと思った。
 すると強引な騎士の手から私を引きはがしてくれた。
「エルザ様に対して無礼だぞ。この方は私が連れていく」
 えっ……?
「し、しかし。この者は重罪を犯した者。速やかに牢獄に」
「二度も言わん。この方は私が連れていく」
 ライリーがそう言うと、私を連れ出してくれた。さっきの騎士達と違い、気遣ってくれる。そのまま用意された馬車に乗せられる。
「あ、あの……どちらに?」
 彼も一緒に乗り込んだが、黙ったままだった。答えたくないのだろうか?
 何処に連れて行く気だろう。幽閉と聞いたから皇宮から離れた塔だろうか?
 しかし、そうなると逆方向だ。どんどん皇宮から離れていく。
 静まる馬車の中で、私はレイヴァン様の事を考えていた。どうしてこんな事に……。
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