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第三章・ご懐妊。5

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「あ、あの……私、妊娠しました。レイヴァン様の子です」
「あぁ……そうだろうな。君は私以外の男に抱かれた事はないからな」
「この子は男の子かもしれません。次期の皇太子候補になるでしょう」
「……何が言いたい?」
「えっ……?」
 低く冷たい言葉に思わず顔を上げる。するとその表情に愕然とした。
 レイヴァン様は酷く冷たい表情になっていた。ゴクッと恐怖で唾を吞む。
「で、ですから……その……」
 身体がガタガタと震え上がる。少しでも機嫌を損ねると、突き放されると思うような重苦しい雰囲気に。
「……そうだ、丁度いい。君に話しておく事があったのだった。卒業パーティーは悪いが、君のパートナーにはなれそうにない」
「えっ……な、何でですか!?」
 パートナーにはなれないって……まさか。やっぱりレイナ様と!?
「……先約が出来てな。話は以上だ」
 レイヴァン様はそう言うと背中を向けて行こうとする。ま、待って。
「もしかして、その先約ってレイナ様ですか!?」
 言ったらいけないと思ったのに、咄嗟に口から出てしまった。すると、レイヴァン様は動きが止まり、こちらを振り返ってくれた。
 しかし、その表情は変わらず冷たい。
「……だとしたら?」
「そ、そんなのおかしいですわ。私は婚約者です。パーティーは……婚約者と同席するのが習わし。それなのに、婚約者でもないレイナ様と主席されるなんて。それに私のお腹にはあなたの子が……」
 本来なら絶対にあってはならないこと。周りの方々にどう説明するの?
 それに……私は婚約者なのに。
 思わず命が宿ったばかりのお腹に手を乗せる。だがレイヴァン様はクスッと笑う。
「……そんなの私にとったら何の意味のない事だ。それに、気安く彼女の名前を呼ぶな。不愉快だ。それと、お腹の子の事はここに居る者以外には一切口に出すな。侍女には、すでに口止めしてある。以上だ」
「れ、レイヴァン様!?」
 それだけ言うと行ってしまう。私は涙が止まらなかった。
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