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第三章・ご懐妊。4

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 三日も眠っていたの!? 
 いや……それよりも、夢じゃなかったの? なら、あの話は本当なの?
 卒業パーティーでレイヴァン様はレイナ様をパートナーに選んだ事は……。
「それよりもおめでとうございます。エルザ様」
「えっ?」
 おめでとうございますってどういうこと?
 突然ルルとビビアンにお祝いの言葉を言われて驚く。何に対しておめでとうなの?
 二人は目をキラキラさせながら、こちらを見ている。
「お医者様に診て頂いたら、ご懐妊していると報告を受けました」
「……えぇっ!?」
 私が妊娠したの? レイヴァン様の子を?
 本来なら皇妃になる婚約者がご懐妊するとなると喜ばしい事だ。
 特に皇族で皇太子の子。将来の後継者が生まれたのも当然。
 しかし、私は素直に喜べなかった。もし女の子だったら……。
 男の子だったらいい。しかし、女の子だったらサファード一族の能力を受け継ぐ事になる。そうなったら私はどうなるの?
 レイナ様の事を思い出す。もし、私との関係がサファード一族の能力を手に入れるためだったのなら……私は用済みになるのだろうか。
 それこそ子供を奪われ、離縁されるの? 私はこんなにもレイヴァン様の事を想っていても……。
「どうされましたか? エルザ様」
「どこかご気分でも悪いのですか? お医者様をお呼びしましょうか?」
 ルルとビビアンは心配そうに声をかけてくれる。しかし私は溢れる涙を止める事が出来なかった。私はどうしたらいいの?
 私はその場で泣くことしか出来なかった。
 しばらく塞ぎ込んでいるとレイヴァン様が自ら私のところまで足を運んでくれた。
「目を覚ましたようだな? 気分はどうだ? 話なら医師から聞いている」
 レイヴァン様もすでにご存知なの? 私が妊娠している事を……。
 恐る恐るレイヴァン様の顔を見ると複雑そうに眉にシワを寄せていた。
 どう見ても妊娠した事に対しての喜びようではない。まるで本意ではなかったかのような表情だった。もしかして妊娠さえも望んでいない?
 私は顔が見る事が出来なくてすぐに下を向いてしまう。
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