国王陛下に溺愛されて～メイド騎士の攻防戦～

第一章・メイド騎士の日常。11

　もちろん命中率はいい。手足に目がけて狙う。だが素早いのか、すぐに避けられてしまった。

「アイリス。走れ‼」

　レオンハルト殿下に言われて慌てて私達は走った。逃げてると思われるかもしてないが、ここで乱闘が起きたら民達まで巻き込まれてしまうからだ。何とかしても人気のないところに。黒く怪しい男達は、屋根から屋根へと飛び越えて追いかけてくる。
　あんな奴ら見た事がない。しかし、このままだと捕まってしまう。せめてルチア様の安全性を確保しないと。私は、向きを変えると短剣を一本投げた。集団は、その短剣に気を取られる。その一瞬を狙い私は瞬発力と跳躍を利用して、同じように屋根の上に上がり総攻撃した。ちなみに私は、両手使いだ。

「うわぁっ⁉」

「ぐわっ～」

　何十人かの黒い人物は切られて、どんどんと倒れていく。すると一人が私を取り押さえようとしてくる。私は足を蹴り上げ宙返りをして避けた。
　そしてウエストポーチから新たに短剣を両手に持つと、同じぐらいの速さで相手に攻撃する。
　だが怪しい人物は反射神経に優れているようで短剣を取り出すと、一騎討ちに。

「くっ……お前。メイドではないな⁉　しかも、その身のこなし。忍びか？」

　初めて怪しい人物が喋った。はぁっ？　忍び？　何よそれ？
　しかもなんて身のこなしなの⁉
　私も生まれつき身軽な方だが、この男達も同じぐらいだろうか。だが、だからと言って負けられない。

「私は、メイドではなく女騎士だ」

　右腕に短剣が、かすれるが私も負けじと攻撃した。
　怪しい人物の右腕に怪我を負わすことが出来た。お互いに血がポタポタッと垂れ落ちた。

「いや……この身のこなしはメイドでも騎士でもない。忍びの才能だ！」

　私を見ながら、またそう言ってきた。だから忍びって何なのよ？
　困惑していると、その隙をついてか地面に向かって何かを叩きつけてきた。煙が出てきて視界が見えなくなってしまう。

「うっ……ケホッケホッ。何よ……これ？」

　そして煙が薄くなった頃には、あの怪しい人物達の姿は消えていた。