上 下
64 / 140

第五章・秘書としての役割。4

しおりを挟む
「はい。幸い軽い怪我で済んだみたいです。しかし親御様が酷く怒っている様子で、我が社を訴えると言っているそうです」
 訴えでもされたら、会社のイメージダウンになりかねない。なんとしてでも取り下げてもらわないと。
「今すぐ車を出せ。その家に謝罪に行くぞ!」
「は、はい。承知致しました」
「それぐらいの対処なら部下に行かせたらどうですか? わざわざ多忙な社長が出る必要は無いのでは? スケジュールの都合もありますし」
 だが、栗本さんが慌てて止めてきた。しかし社長は背広を羽織ながら、
「いや、ただのおもちゃの不満ぐらいならいい。だが子供が我が社のおもちゃで怪我をしたのなら、社長として謝るのが筋だ!」
 と言った。私は早々と車の手配をする。栗本さんも一緒にクレームをしてきた自宅に行き、深々と頭を下げて謝罪をする。
「今回は誠に申し訳ありませんでした!」
「少しの怪我で済んだから良かったけど、ウチの子に怪我をさせるなんてどういうつもりよ⁉ もし酷い怪我だったらどうする気だったのよ?」
「大切なお子様が怪我をされてお怒りなのは、ごもっともです。今回の件は我々の不手際です。本当に申し訳ありませんでした」
 一切言い訳をせずに社長は自ら深々と頭を下げて謝罪をした。その姿は潔くて男らしいと思った。私は頭を下げながら、その姿に思わず見惚れてしまう。
「そ、そんな謝罪程度で済むなんて思わないで。あんな危ないおもちゃなんて、もう二度と遊ばせ……」
「もしかして今、抱いているお子様が怪我をしたお子様ですよね?」
 お客様が言い終わる前に突然社長が言い出した。お客様は困惑した表情をすると社長は気にすることなく、その怪我をしたお子さんに近づく。
「痛い思いさせて悪かったな。今度は、もっと安全にしたおもちゃで、たくさん遊ばせてやるからな」
 そう言って優しい笑顔で微笑みかけ頭を撫でてあげていた。すると、小さなお子さんはキャッキャッと笑顔で抱っこを要求してくる。
「よしよし。抱っこしてもよろしいですか?」
「えっ……あ、はい」
 許可をもらうと社長は笑顔で高い高いをする。お子さんは、キャッキャッと大はしゃ
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

黒髪に黒いカクテル

恋愛 / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:2

私の婚約者が完璧過ぎて私にばかり批判が来る件について

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,902pt お気に入り:5,617

抱縄~ダキナワ~

恋愛 / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:10

副社長と出張旅行~好きな人にマーキングされた日~【R18】

恋愛 / 完結 24h.ポイント:42pt お気に入り:62

【完】初めてのベッドの上で珈琲を(カットページ掲載済2023.5.13)

恋愛 / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:28

社内恋愛は考えてもみませんでした

恋愛 / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:11

好きな気持ちが止まらない

恋愛 / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:104

処理中です...