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第三章。社長の友人。12

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 あぁ、もっと前に念入りに掃除をしておくべきだったと後悔する。そうではなくても狭いのに……。
「とりあえず、この部屋で待っていて下さい。すぐ作りますから」
「はいはい」
 そう言いながら社長は背広を脱いだ。私は背広をハンガーにかけて、すぐに作りにかかった。私の部屋は一DKの安い賃貸アパートだ。結構古いが、駅にも近いためココにした。きっと大きくて立派な住宅に住んでる社長にとったら狭くてガッカリしているだろう。だから、少しでも部屋の中とか綺麗にしたかったのに。
 いやいや、まず社長を自宅に入れるなんて思わないけどさ。しかも、こうやって料理まで作っているし。料理を作っている最中にお茶を淹れると社長に話しかけた。
「社長。もうすぐ出来ますから待ってて……って、何をやっているのですか⁉」
「えっ? 暇だったから君の洗濯物を取り込んでたたんでいるのだが?」
「いや、後でやりますから。たたまなくてもいいですから」
 見ると社長は、せっせと洗濯物を中に入れてたたんでくれていた。しかも社長が今、手に持っているのは私の下着だし。
「この前見て思ったけど夏希って意外と下着が派手だよな? これなんて、真っ赤でなかなかセクシー」
 ご満悦に見る社長だった。その下着、真っ赤でレースが付いたやつだった。
 キャアッ~何をやっているのよ⁉ 私は恥ずかしさのあまり慌てて下着を取り返した。ああ、本当に油断も隙も無い。
「社長。こんな事はいいですから、テレビでも観てて下さい」
「えぇ~何でさ? 今から写真でも撮ろうと思ったのに。あ、そうだ。今度もっと派手な下着をプレゼントしてあげようか?」
「撮らないで下さい。それに、そんなのいりませんから」
 キッパリと否定する。この人……私の部屋に置いておくと何するか分かったものではない。そもそも写真を撮ってどうする気だ⁉
「チェッ……まぁいいや。持って来たDⅤDでも観よっと」
 社長は諦めたように呟くとカバンからDⅤDを出そうとしていた。そうよ。DⅤDでも何でも観て、大人しくしててくれた方が助かるわ。そう思い食事作りに戻るが。
 社長が持って来たDⅤDってのが厄介だった。
「ちょっと社長⁉ 何のDⅤDを持って来たんですか?」
「うん? これか?『社長と秘書のオフィスでの甘い密会』だ!」
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