既婚者に溺愛されて!?(エタニティ向け)

第一章・不倫と疑われて。7

　そして、その怒りをまた女子会で発散させる。ビール片手で、いつもの居酒屋で愚痴るのだった。
「アハハッ～本当に最高。あんた達の夫婦漫才。面白過ぎる」
「ちょっと笑わないでよ⁉　こっちは真剣に怒っているのだから」
「だってさ～ホテルの予約までしちゃってるのよ？　もうヤる気満々じゃん。むしろヤってあげないと社長が可哀相よ」
　香奈子は、そう言ってきた。可哀相って……あんた。これは、社長が勝手に予約しただけじゃん。叶えてあげる義理は無いし。
　むしろ、それを奥さんが知ったら奥さんの方が可哀相よ‼　夫が好き勝手に不倫しているのだから。
「香奈子……無茶を言ったらダメよ⁉　相手は家庭持ちなんだから。そんなの絶対に断るべきだわ」
　恵美は、そう言って止めてくれた。さすが……恵美。まともな意見で安心する。
「あら、だって。それまでして夏希とヤりたいんでしょ？　だったら一回経験させてあげたら満足するんじゃない？」
　香奈子は不思議そうに、そう言ってくる。……そうかしら？　一回で済むとは思えないのだが。それ以前に問題が発生するのでは？
「何言っているのよ。その一回が、やめられない原因を作るのよ。特にああ言う癖のある男はね。いい？　絶対に断りなさいよ。夏希」
　それに対して恵美はキッパリと否定してきた。確かに癖のある社長だ！
　私は恋愛経験が少ないが、これだけは分かる。あんな人にハマったらなかなか抜け出せなくなるだろうって。それぐらい社長の魅力は絶大なのだ。セクハラを除いてはだが。ハァッ……ともう一度ため息を吐く。
　何で社長の異状なまでのセクハラと溺愛ぶりに、こうも悩まされないといけないのかしら？　普通悩むなら自分の仕事の未熟さとか売り上げとかじゃないの？　あと普通の恋愛や結婚とかさ。
「そういえば、前から思っていたのだけど。社長の奥さんってどんな人なの？」
　すると突然、香奈子がそんなことを質問してきた。社長の奥さん……。その言葉に胸がズキッと痛んだ。
「私は、まだ一度も会った事がない」
「え～秘書なのに？」
「だってプライベートは一切踏み込んだらいけない契約だし。気になっても深く聞けないのよ」