魔探偵

霊内

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#2 続く日々

誘拐事件

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によって、彼を目の前で連れていかれてしまった。
おかしい、いつもならもう少し猶予があったはずだ、最低でも1、2週間程度は、
そんな考えを頭の中で巡らせているときみーちゃんがこう言った、
「どうする?仕事を優先するか、それとも連れ戻すのを優先するか。」
みーちゃんもみーちゃんで色々考えていたらしく、今まで塀の上で横になっていたにも関わらず、その体を四つの足で起こしていた。
「…まずは仕事を…霊内さんの方はアイツが相手だから、悪いようにはならない…はず。」
そう私が言うと 、みーちゃんは、
「そっかぁ、あの馬鹿が何であんなことをしたのかも気になるし、手伝うよ。」
そう言ってみーちゃんは、いや、彼女は塀から飛び降り、
自身に何らかの魔法を掛け、姿が人のそれへと変わっていった。
今ではコスプレと言われるような古い、胸元の露出の多い、大きいお姉さんへと、変わっていった。
「……毎回元の姿を見て思うんだけど、何で胸の露出がそんなに多いの?」
「ん?さぁ?何でだろうねぇ?」
彼女はそうケラケラ笑いながら、頭に被っていた帽子を取り、目を瞑り、何かを行使していた。
「……見つけた、こっから数キロ先、怪我が酷い、こりゃ烏にやられたな。」
そう、彼女は言いながら目を開け、帽子を被り、走り始めた。
その背中に私も走ってついていった。


目の前の物が見える程視界が回復した頃、俺は何処かの部屋にいた。
天井程まである本棚と、それから溢れかえっている大量の本、
大抵の本の山があと少しで天井に届く、そんな量だった。
俺が周りを見回している様子を見て、連れて来た本人は嬉しそうに笑っていた。
「うんうん、記憶は完全に封印されてるね、しかしまあ、やはり主役か、まさかあんな風に関わりを持ってくるとはね……。」
そう男は言っているが何を言っているのか意味が分からない、どういう事なのだろうか。
「能力もただ程度、それも集中しなければ分から無いほど、これなら心配は無かったか?しかし、
念には念をって言葉もあるからな。」
いつの間にか、男は手に持っているカルテの様な何かを見てそう言っている。
「しかし血筋が犬神ってのはぁ、ちょっと設定が甘いと言わざるを得無いなぁ……。」
訳がわから無い、何なのだこの男は、人間なのか?
「……このまま肉体を封印しておけば問題は無いだろう、しかし樹蜷さんの記憶処理は難しいな……。
どうするか、消そうにも彼女は抵抗をするだろうし……、彼女を失うのは手痛いからなぁ。」
まるで樹蜷さん程度ならいつでも片付けられるというかの様に言葉を発している……
何なのだろう、この男は、無性に腹が立つ……、そうか、この男は、樹蜷さん達人間を、
虫ケラ以下の存在としか見てい無いのだ……力が有れば……俺にコイツを殺せる力さえあれば……。
そう願っていると、部屋の中で異変が起きたのだ、部屋の中でいきなり、大きな遠吠えが聞こえ、
目の前の男の右腕が食いちぎられたのだ、その右腕は中に浮き、そのまま本の山へと放り投げられた。
そして,部屋の中に薄くだが、大きな白い狼らしき何かがゆっくりと現れていく。
「……はぁ、本物の犬神を使うって馬鹿かよ、アホか?本が血で汚れるじゃ無いか……。」
男はそんな事を言いながら余裕をこいていた。
確か犬神とは、犬神と呼ばれる神様を祀っている一族の事だったはずだ。
そして犬神はその一族の悪意や害意などに反応して対象を呪い殺す、
そう言った類の神のはずだ。
ならばこの男は死ぬ筈、まず腕を食いちぎられたから、出血多量で死ぬ、そう思っていた。
しかし、いくら待っても男は倒れず、血が腕から流れきった瞬間、俺の後頭部に凄い勢いで何かが当たり、
俺の意識はそこで途絶えてしまった。

依頼のあった、猫を依頼主に届け、報酬を貰い、
彼女によって、久しぶりにこの世界にやって来た。
やはり彼女の服装は目を引くのか、周囲の魔法使いは一様にこちらを見ている。
そして彼女が、アイツの部屋の前で止まり、勢い良く扉を蹴破った。
「おいバカ弟子、師匠が来てy……」
彼女はそこで言葉を途切れさせ、唖然としていた、何があったのだろうか、
そう思い、見ようとするも、目の前にいる彼女に止められる。
「……おいバカ弟子、こりゃ一体何だ?何が起きた?」
「ああ、師匠、どうしたんですか?向こうで待ってて良かったのに。」
「何が起きたって聞いてんだよ!」
そう彼女の声に怒気が入る、そして、恐ろしい程の寒気がした、
彼女はここで攻撃魔法を放つつもりだ、それもとても強い物を。
「ちょ!何してるの!とりあえず落ち着いて!」
私が彼女にそう言うと彼女は、
「……っ、そうだな、とりあえずお前は外で待っててくれ、部屋の中で二人で話す。」
と、言い放ったのだ、どうせ部屋に二人にするとこのままでは喧嘩するだろうと思い、
「私も入ります!今のままじゃ喧嘩しちゃうでs」
「良いから!」
彼女は食い気味にそう言った。
彼女がそこまで言うのも珍しいので、私は大人しく外で待つ事にした。

血の匂いが香る部屋の中、私は目の前のバカ弟子に殺意を放っていた。
「……お前は何でこんな事をした?」
部屋の中は惨状の一言だった。部屋のあちこちに血は飛び、霊内バイトは気絶、そして、
部屋の大部分を大きな白い毛色の狼らしき何かが占拠し、男の体は血で濡れていた。
怪我をしてる人は一人もおらず、普通なら不思議に思うだろう、しかし私は理由を知っている。
そして私もそうなのだ、と言う呪いを身に刻む、
悲しき生を生きる魔物達。
その二人なのだ………。
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