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現実逃避
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ああ、だるい、めんどくさい、帰りたい。帰ってゲームしたい。
週の終わりで疲労がたまってるからか、負の感情がグルグルと全身を巡る。
ゲームに逃げたい。
キーボードをカタカタと打ちながら、左を見る。
右側を見たくないから。
右側には、1年先輩の倉橋さんが座っている。
彼女は私のことが嫌いなようで、よく無視される。
仕事上、重要な話はきちんとしてくれるけれど、それ以外は全く知らせてくれない。
たとえ重要でなくても、知っておくべきことはたくさんあるはずなのに。
教育係りの彼女がほとんど教えてくれないおかげで、私は新入社員のときから自分で試行錯誤しながら、資料作成をしてきた。
幸い、上司にはそれなりに認めてもらえているから、なんとか仕事を続けられている。
「通さん!」
急に声をかけられて、内心びっくりする。
「おお……三葉、どーした?」
「これ見てくださいよ、作ったんです」
輝くような笑顔で三葉は資料を差し出す。
彼女は新入社員で、なんだかすごく元気な人だ。
一見年下か同い年に見えるけれど、実は2才年上だ。
一浪して大学に入り、大学院を卒業している。
非常に優秀で、普通の人に任せれば丸1日かかる仕事を、数時間で終わらせる。
「おー、いいじゃん」
手渡されたのは企画書だった。
内容そのものは別の人が考えたものだけれど、発表するためのデザインを考えたらしい。
「わかりやすいですか?」
「うん、いいと思うよ」
私たちのいる企画部は、1課と2課に分かれている。
彼女は1課で、私は2課だ。
別々の課なのに、なぜか彼女は私のところによく来る。
「よかった!!改善するところありますかね?」
「んー?特にないんじゃない?」
正直、2年目の私に聞くより、3年目、4年目の先輩に聞いた方がいい気もする。
「了解です!…ところで通さん」
「ん?」
「例のお店、また行きましょー!今日忙しいですか?」
「おー、忙しくないよ。行こ行こ」
例のお店とは、彼女のお気に入りの居酒屋だ。
数ヵ月前に、美味しいからと誘われて、既に6回行っている。
「通さん!仕事終わったら教えてください!」
定時の5分後、ニコニコと眩しい笑顔で三葉が言う。
「30分待って」
「了解です!」
ひとりの食事は虚しい。
就職のために上京してから、友達と呼べる人がいなかった。
会社の同期ともほとんど話さないから、余計孤独な感じがしていた。
だから三葉からの食事の誘いは素直に嬉しい。
元気で気さくな彼女のことだから、いろんな人と食事に出かけているのだろうと思っていたけれど、ほとんど私とだけらしい。
彼女いわく「外食はあまり好きじゃない」んだそうな。
実際、昼には手作りの弁当を持参しているし、部署の飲み会は心底面倒そうにしている。
上司の前ではニコニコ笑っているが、私に向ける笑顔とは全然違うのは明らかだ。
まず、目が笑っていない。
若干怖いくらいだ。
「通さん、ほんと可愛いですよねー」と、彼女は1日に3回は言ってくれる。
可愛いなんて言われ慣れていない私は、最初言われたとき、かなり戸惑った。
地元の友人たちに、そういうことを言う人はいなかった。
最近やっと慣れてきて「ありがとう」と言えるようになった。
三葉は、愛嬌があって可愛いけれど、外見はどちらかと言うとかっこいい感じだ。
キリッとした二重で、鼻筋が通っている。
耳が隠れるくらいの長さのショートヘアで、髪を耳にかけるとツーブロックになってるのがわかる。
服装もお洒落で、いつもスタイリッシュだ。
私は、地元にいたときは、あまり外見を気にしていなかった。
だから、気にするようになったのは上京してから。
社会人デビューというやつだろうか。
雑誌やSNSでファッションを参考にしているけれど、これで正しいのかはわからなかった。
そこで、初めて人に相談してみることにした。
ようやく、相談できる相手ができたのだから。
変じゃないか三葉に聞くと「すごく似合ってますよ」と爽やかな笑顔で言われた。
週に1回くらいのペースで聞いていたけれど、毎回褒めてくれる。
それも具体的に、この色とこの色が合ってるだとか、この形とこの形の組み合わせがいいだとか……。
「服って、その人に似合ってるか似合ってないかが大事だと思うんですよ。全体的な雰囲気と言うか……。たまに、よくあるファストファッション着てても『組み合わせは悪くないんだけど、なんかこの人に似合ってないな』って思う人もいるんですよ。理由はわからないですけど。その点、通さんは自分のことがよく見えてるんだなって思います。自分に似合うものがよくわかってるんだなって」
なんて言われてから、少し自分に自信を持てるようになった。
そんな風に三葉は、整った顔立ちをしている上に、褒め上手だ。
話を聞いてる限り、かなりモテてるようだけれど、当然のことと言えば当然のことだ。
1課にいる、4年目の立川さんは、三葉に好意を抱いてるような気がする。
彼は積極的に三葉を食事に誘っているし、いつも2人で楽しそうに話している。
「通さん、悩んでますか?」
例のお店につき、ボーッとメニューを眺めていると、三葉に覗きこまれた。
「あー、いや、決まった」
目を合わせると三葉はニコッと笑い、店員さんを呼んだ。
こういうところだ。
彼女の、こういうところがモテる一番の要因なのではないだろうか!
これがいわゆる、余裕のある感じ、なのだろうか。
女の私でも、油断するとドキッとしてしまう。
「通さん、眼鏡似合いますね」
「そー?…ありがとう」
「目、悪いんですか?」
「いや、度なしの眼鏡だよ。ブルーライトカットの眼鏡なんだ」
「あー、なるほど。ほぼ1日中パソコン見てますもんね。私も買おうかな」
「心なしか目が疲れにくくなった気がするから、オススメだよ」
三葉はふふっと笑い「どんなのが似合うと思います?」と、手で眼鏡を作っておちゃらける。
「どんなのだろね」
何て答えればいいかわからず、私は水を飲んだ。
「私もショートヘアにしようかな」
答えられないことに対して、なんとなく気まずく思い、急な話題転換。
自分をコミュ障だなーと思う瞬間。
「んー……きっと似合うけど、私はロングが好きです」
一方三葉は、コミュ力の塊のような人だ。
急に話題を変えても、ちゃんと話を合わせてくれる。
「そっかー」
じゃあ、しばらくはロングにするか。
「ショートも絶対似合いますけどね!」
三葉は少し身を乗り出して言う。
「うん、ありがとう」
鼻の穴を膨らませた三葉が可笑しくて、笑える。
「ほんと、通さんの髪はサラサラで綺麗ですよね」
伸ばされた手におさまるように、頭を傾げた。
優しく、指で髪を梳かれる。
心地よくて、目をつむる。
「三葉も髪サラサラじゃん」
「まあ、そうですね」
三葉がケラケラ笑う。
あたたかい手が離れていくのを感じて、名残惜しくなる。
いつだったか、私がポニーテールにしていた日、コピー機の前でコピーが終わるのを待っていると、後ろに立った彼女がふいに髪に触れてきた。
驚いて振り返ると「あ、すみません、つい」なんて、ヘラヘラ笑いながら謝ってきた。
それから彼女は、徐々に、自然に、私の髪に触れるようになった。
私のなかで、彼女に頭を触られるのが当たり前になった。
お酒がまわってくると、彼女がきまって言うことがある。
「通さん、絶対モテますよね」
どこをどうしたらそんな結論に至るのか、私にはさっぱりわからない。
「ほんとにモテないよ」
三葉は机の上で組んでる腕に顔を半分埋めながら、上目遣いに睨む。
「嘘だー」
「ほんとだって」
梅酒をゴクリと飲んで、彼女を睨み返す。
すぐにうつむいて「今まで1回も、誰とも付き合ったことないもん」と、小さく言った。
居酒屋の喧騒でかき消えたかと思ったけれど、チラリと三葉を見やると、彼女は目をまん丸くさせていた。
聞こえていたみたいだ。
「ニヘァャ」という効果音が聞こえてきそうなくらい顔をほころばせる。
「可愛い」
鼓膜に届いた少し低い声が、鼓動をはやくさせる。
「どこが」
「いじけてるところ?」
三葉は首を傾げながら、右側の口角だけ上げる。
ドクドクと心臓が鳴る。
私も、酔ってきたかな。
「三葉こそ、すごいモテるじゃん」
「まあ、そうですね」
平然と肯定されると、微妙にイラッとする。
でも事実だから仕方ないとも思う。
「この前も、立川さんと楽しそうにしてた」
「ん?いつですか?」
「一昨日だよ……頭、撫でられてたじゃん」
「あー、あの時ですか。べつに楽しくなかったですよ」
「嘘」
「本当ですって」
私は口をすぼめて、目をそらした。
「ヤキモチ……ですか?」
「はあ!?」
思わずすっとんきょうな声を出してしまった。
「まあ、立川さん、明らかに好意むき出しですよね。私、わかるんですよ、恋愛的に好かれてるなっていうの。なんとなく」
三葉はコップに残ったハイボールを飲み干し、おかわりを注文する。
「好かれるのはありがたいですけど、正直、恋愛的に好きじゃない人に好意を持たれても、困ります」
ゴクリと唾を飲む。
なぜか私に言われているような気になって、スーッと酔いが冷めていく感じがした。
「なんて……生意気ですかね?」
彼女はおどけたように笑い、新しいハイボールに口をつける。
「生意気」
コップのふちに口をつけた。
少し傾けて、ちびちびと梅酒を飲み始める。
「ですよねー」
ニシシと笑って、彼女はまたハイボールを飲んだ。
「もっと生意気なこと言うと、立川さんって距離つめるのが早いんですよね。あれじゃ女の人に引かれかねないですよ」
「どういうこと?」
「いきなり頭ナデナデされたら、ビビりますよ。ビビりません?」
「たしかに……」
「ん?待てよ。君、人のこと言えなくないか?」と、考える。
でも頭のなかで、すぐに前言撤回した。
彼女の距離のつめ方はゆっくりだった。
新卒で入ってきて、初めは挨拶からだった。
会社の最寄り駅から会社までの行き帰りで会うと、必ず声をかけてくれた。
普段ご飯は自炊か外食か聞かれ、外食が多いと答えたら、食事に誘われた。
職場では、すれ違ったときや印刷のタイミングが重なったときに話しかけられるようになった。
次第に仕事のアドバイスを求められるようになり、昼休みに話しかけられるようになり、それからコピー機の前で髪に触れられた。
それも全体ではなく、毛先を少し触られた程度だった。
「たまたま友人がそこにいたから、声をかけるために触れた」と言われても違和感がないほどに、さりげなかった。
そのあと「髪触られるの嫌いな人っているけど、通さんはどっちですか?」と聞かれ「あんまり人に触られたことないからわからないけど、美容院に行ったときは気持ちいいかな」と答えると、徐々に触られるようになった。
「私は?」
手に汗がにじむ。
「私が三葉の頭を撫でたのは、ビビった?」
恐る恐る三葉を見ると、目をパチパチと瞬かせていた。
「ある意味ビビりましたね」
「ある意味?」
「ときめいたという意味で」
三葉は右側の口角だけ上げて、意地悪に笑う。
「なにそれ」
私は笑いながら、最後のひとくちを飲み干す。
「通さん」
まっすぐ見つめられ、緊張する。
「な、なに」
「そろそろ終電、やばいです」
彼女はニコッと笑いながら、スマホを片手に出す。
「通さん、今から家に遊びに行っちゃだめですか?…嫌ならダメってハッキリ言ってくださいね!気遣いや嘘は無用です!あー、無用だーよー!」
手を私の顔の目の前で広げ、仁王立ちする。
歌舞伎の真似でもしているのか……謎だ。
「遊びにって…何するの?」
「ゲームしましょ!FPSやりたいです!」
魅力的な誘いだった。
「通さんがどんな風にゲームしてるのか見てみたかったし」
「どんな風にって…普通だよ」
「普通じゃないですよ、無言でやってるなんて。普通は、暴言を吐いてしまいます」
三葉は肩をすぼめながら、上目遣いに私を見た。
私よりも10センチ以上背が高いのに上目遣いができるってどういうことだ。
「で、どうです?今回は行かない方がいいですか?」
「いいよ、おいで」
「泊まっていくことになりますけど、大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ」
「明日は何か用事はありませんか?」
「大丈夫ですよ」
秋の夜は、少し肌寒い。
シャツの襟に口元を寄せる。
「じゃー、バスタオルとか貸してくださいね」
嬉しそうに笑う三葉。
私もつられて、笑ってしまう。
「歯ブラシとかもあるよ」
コンビニで夜食を買い、ふたりで家路についた。
部屋に入ると、三葉は興味深そうに見回して、軽くスキップしながら移動し、床に座った。
テレビをつけて、ゲーム機の電源を入れる。
コントローラーを三葉に渡そうとすると、首を横に振られた。
「それにしても、通さんって偉いですよね」
「急にどうした?」
「倉橋さんですよ」
装備を確認し、プレイを始める。
「あ、話しながらでもできます?1回黙ります?」
思わず笑いながら「話し続けていいよ」と答える。
「1年目からあんな感じだったんですよね?」
「うん」
「私だったら耐えられませんよ、1年上の先輩に無視されてたら。たぶん、辞めてます」
状況を確認しつつ、敵を撃ち殺していく。
普段ならイヤホンをして、他のプレイヤーの会話を聞いて状況確認をするけれど、今は画面だけが頼りだ。
「私も辛かったよ、こっちに相談できる友達もいないしね」
「そうですよねー。よく耐えましたよね」
「ほんとね、自分でも思う」
「無視する理由はなんなんですかね?」
「さあ?私も知りたいよ」
ため息混じりの、諦めの笑いをこぼす。
「今でも、辛いですか?」
「まあ、楽しくはないよね」
コントローラーを握る手が強くなる。
「仕事、辞めたいですか?」
「仕事自体は楽しくなってきたからなあ……辞めたいとまでは思わないかな」
「良かった」
三葉がチップスを広げ、缶チューハイをあける。
「私、通さんが会社にいなかったらとっくに辞めてますよ」
驚いて、手元の操作が狂う。
「え、そーなの?」
「はい、藤嶺さんと合わなくて」
「ああ……藤嶺さんはね、仕方ないよね」
藤嶺さんは1課の課長だ。
社内の一部の人は「藤嶺さんの部下になったら諦めるしかない」とまで言っている。
パワハラ、セクハラ、モラハラとまではいかないけれど、かなり面倒な性格をしているらしい。
2課にいる限り、害はほとんどないので、私は実感としてはわからない。
「この前、仕事を頼まれたんで2時間くらいで終わらせたんですよ。そしたら『もう終わったの!?』って驚かれて『もうちょっと考えたら?』って言うんですよ」
ゴクゴクと飲む音が聞こえてくるくらい、勢いよくチューハイを飲む。
「具体的に何か悪いところがあるなら、もちろん直しますよ。でも、特に出てこないんですよ。じゃあ何を考えろと?どうしろと?って感じです」
「たしかになあ」
「前にも同じようなことがありました。そのときは、改めて考え直したんですけど、最初に提出した案の方が良いってことになって、考えた時間が無駄になったんです。それで、同じことを繰り返してもラチがあかないし、仕方ないからデスクに持ち帰って、考えたんですよ。今回はどうしようかな?って。ちょこちょこーっといじって2、3時間別のことして、時間潰したあと、藤嶺さんのとこ持ってってみたら…『いいんじゃない?』って言われたんですよ。大きく変えたところなんてないんですよ。それでOKが出たってことは、つまり、時間の問題ってことですよね?」
怒気を混ぜながら、三葉は早口になる。
「早く終わると、手を抜いてると思われるってことですよ。残業を減らそうって言うけど、そういう考えだから減らないんじゃないですか!根本的に考え方を変えないと、残業なんて永久になくなりませんよ」
たしかにそうだ。
きっと若手社員はみんな共通して思っていることだろう。
「藤嶺さんに、今の話をしたんですよ。もうちょっとオブラートに包んで。でも、逆ギレされて終わりました」
でも、みんな言葉にはしない。
どうせ聞き入れてもらえないと諦めているから。
「どんなに若手が工夫しても、上がそれを潰してしまったら結局意味ないよね」
ゲームと会話の両方に意識を持っていくのは、なかなか難しい。
いつもより操作の精度が劣っている。
「そうですよ」
「しかも、若手は若手でギクシャクしてるところあるしね……」
乾いた笑みを浮かべると「笑えねー」と、笑いながら三葉が言った。
「通さんは、イライラしないんですか?」
「んー、するよ」
「してるように見えないです」
「そう?たまに泣きそうになってるよ」
初めて人に告げて、少し顔が火照る。
「え?……あ、そっか」
三葉がなにやら横で考え始める。
「なに?」
「いや、たまに通さんが震えてるように見えたのは、そのせいだったのかなーって思って」
「え!震えてた!?」
思わず画面から目をそらしてしまう。
「はい」
三葉が自信満々に頷く。
「でも、泣いてはいないよ?」
「はい、知ってます。指先が震えてるなーって思ってたんです」
「そ、そーなんだ……自分のことなのに気づいてなかった」
「自分のことがよく見えてる」と三葉は言ってくれたけれど、私はいつも目の前のことに必死で、あまり見えていないんだと思う。
震えていた記憶を思い出そうとして、少し考え込んだところで、対戦が終わった。
負けだった。
やっぱり、プレイと会話を両立させるのは厳しい。
ポンと、頭にあたたかさと、少しの重みを感じる。
三葉が手を伸ばしていた。
「通さん、この1年半、よくがんばりました。おつかれさまでした」
優しい笑みを浮かべられ、思わず目の奥が熱くなる。
私は顔を隠すようにうつむいて、三葉の頭に両手を伸ばした。
わざと、グシャグシャと手を乱暴に動かす。
「もー!やめてくださいよ……!」
三葉は嬉しそうに、無邪気に笑った。
胸がぎゅっと締め付けられる。
「三葉もよくがんばった!……がんばった!!いい子いい子」
私よりも三葉の方がいろんなことが見えている。
三葉自身のことだけでなく、周りのことも。
そして、ただ見えているだけでなく、どうしたらいいのか考え、行動にうつす力がある。
「いい子って、私の方が年上ですよ?」
「でも後輩だもん」
「なんだそれ……可愛すぎ」
ふいに、天井が視界にうつる。
影ができ、三葉が目の前に現れる。
「三葉……?」
「通さん」
いつも愛嬌があって、ニコニコしてる三葉が、真剣な表情をしている。
吸い込まれてしまいそうなほど透き通った瞳が、私の目を捕らえて離さない。
「好きですって言ったら、どう思いますか?」
心臓がドクドクと音をたてる。
唾を飲んでも、飲んでも、乾くような気がして、頭が混乱する。
「どうって……」
「恋愛的に好きですって言われるのと、先輩として好きですって言われるの、どっちが嬉しいですか?」
「恋愛って……女同士じゃん」
「好きに性別って、関係ありますか?通さんは、そういうの、気持ち悪いですか?」
前に同じようなことを聞かれたことを思い出した。
私の答えはなんだったかな。
「気持ち悪いとは思わない。そもそも、恋愛がどんなものかわからない?」
そうだ、そう答えたんだ。
「でも通さん。私のこと、好きでしょ?」
これ以上は出てこないと、無い唾に告げられる。
それでも喉を鳴らして、何かを飲み込む。
「それとも、好きじゃない?……遠慮も嘘も無用だーよー」
優しく微笑む彼女は、少し不安げで、儚げに思えた。
目が、離せない。
「ねえ、好き?もし私が立川さんにとられたらどう思います?」
「とられたら……」
想像した。
立川さんが三葉の頭を撫でていたところ。
さらに想像を膨らませて、2人が抱きしめあっているところ。
そして、キスする寸前で 意識を戻した。
「嫌」
三葉が楽しそうに笑う。
手のひらの上で転がされてる感がハンパじゃない。
「それで、私のこと…好き?ちゃんと言葉にして」
それでも、まっすぐ見つめられると、答えないわけにはいかない気がした。
「……好き」
声が震えた。
彼女は嬉しそうに満面の笑みを浮かべる。
「聞こえない」
私は眉間にシワを寄せて、口をつぐんだ。
「ねえ、言って」
三葉の顔が近づく。
「言って」
包み込むような、中性的な声。
「好き、だよ」
「やっぱりね」
「なに」
「通さんは私のことを好きだと思った」
「なんか……それ、むかつく」
三葉の視線が私の口元に移る。
また顔が近づいて、私は慌てた。
「ちょ、待っ……」
咄嗟に、三葉の胸元を手で押さえる。
「嫌……ですか?」
傷ついたような、悲しい顔をする彼女を見て、さらに動揺する。
わからない。
自分の気持ちが、わからない。
立川さんに三葉をとられたら嫌だという気持ちはある。
だから、三葉のことが好きなんだとも思う。
でも、初めてのことばかりで 脳が追い付かない。
心臓の音がうるさいくらいに鳴っている。
耳を押さえたくなるほどだ。
ドク、ドク、ドク、ドク、ドクと 脈打つのがハッキリとわかる。
ふいに、両頬をつままれた。
「通さん、ちゃんと 私を見て」
いつの間にか顔をそらしていたらしい。
「私も、通さんが好きです」
なぜかその言葉にホッとして、心臓の音が少し静まった。
三葉は笑ったあと、私に優しい口付けをした。
押し当てられたそれは柔らかくて、すぐに離れていったのに、ピリピリとなにかが残っている感じがした。
でも、あたたかさは失われ、寂しさが募り始める。
彼女は優しく微笑み、もう一度、キスをした。
「嫌な感じ、しましたか?」
「しない」
「よかった」
頭を優しく撫でられ、心地よくなる。
「もっと」
口からポロッと出た言葉に、自分で驚く。
はじけるような笑顔で三葉は私を見つめる。
「もっと?……なにを?」
湿った唇を舐めると、三葉の視線も口元に移る。
すぐに目が合って、からかうように 眉を上げた。
「なに?」
「……いじわる」
「可愛い」
唇を突き出してみるけど、彼女はわかってて、それでも あえて何もしない。
「いじわるじゃないですよ。ちゃんと、思ってることは言葉にしないと、わからないじゃないですか。察することはできても、それが100%正しい答えかなんて 他人にはわからないんです。だから…通さんは、ちゃんと言葉にして、お願い…しなきゃいけないんです」
それがいじわるだと言ってるんだ。
わざわざ「お願い」を強調しなくてもいいのに……。
フウッと深呼吸して、目一杯の勇気を出す。
「もっと、キス……して」
三葉は、若干引くくらいの とろけるような笑顔になる。
私が ハアとため息をつき終える前に、三葉の唇にふさがれた。
今度はさっきよりもずっと長くて、苦しくなった。
わずかな隙間から彼女の吐息が入り込み、舌が絡まる。
「んっ」
胸元で縮こまっている両手が震える。
ぎゅっと目をつぶり、懸命に彼女の舌にすがる。
夢中になっていると、突然「ぷはあっ」と息を吐き出し、勢いよく三葉が起き上がった。
私のやり方がダメだったのかと、不安になる。
「腕が……腕が痛くなっちゃいました」
「へへへ」と、甘い空気を壊したことに悪びれる様子もなく、三葉はベッドを背もたれに座る。
「通さん、やっぱ 可愛いですね」
ニコニコと、いつもの愛嬌ある笑顔で言う。
「なんで?……下手、だった?」
「下手じゃないですよ。でも、一生懸命なのが可愛くて。……腕の限界さえ来なければ、もっと可愛い姿を拝められたのに。自分の体力のなさが憎いです!」
一生懸命って、イコール下手って意味じゃないのか?
でも、それでも仕方がない。
私は、今まで誰ともこういうことをしたことがなかったのだから……。
恥ずかしさを堪える。
土日の両日とも2人で部屋で過ごし、 日曜の夜に三葉は帰宅した。
初めてお付き合いする相手が同性だとは思わなかったけれど、自分が男の人と付き合っているところも あまり想像できなかった。
結果的に、特段緊張することもなく付き合えて、私にはこちらの方が性に合っているような気さえした。
三葉は相変わらず立川さんと仲良しそうにしている。
でも、もう わけのわからないモヤモヤは生まれない。
これが付き合うことの利点なのだと、また新しいことを知った。
椅子に深く腰をかけ、左右に揺れる。
フウッと深呼吸する。
意を決して、右側を向く。
「倉橋さん」
倉橋さんは作業をピタッと止め、視線だけこちらに向けた。
「私、なにか倉橋さんの気に障るようなことしましたか?」
一度も聞いたことがなかった。
独りでは聞く勇気がなかったし、聞かなくていいとも思ってた。
「嫌われている」ただその事実だけ勝手に察して、放置していた。
触らぬ神に祟りなし…に倣って。
でもきっと、人間関係においては その行為は ただ臭いものに蓋をするだけなんだと思う。
小さなストレスがたまりにたまって、いつか自分が壊れてしまうかもしれない。
もし誰も私の頑張りを認めてくれる人がいなかったなら、いつか、私は壊れてしまっていたかもしれない。
物理的に距離をとれない関係なら、少しでも改善した方がいいに決まってる。
そして、自ら相手を知ろうとしなければ 改善できるわけがない。
私は両膝の上に両手を握りしめて乗せた。
「どんな言葉がきても受け止めよう」という気持ちで、倉橋さんを見つめる。
数秒がいやに長く感じる。
壁にかかっている時計の秒針が聞こえてきそうなほどだ。
倉橋さんがわずかに口を開ける。
同時に、彼女の指がパソコンのキーボードを打ち始めた。
まるでスローモーションだ。
「さあ!なんて来る!?」と、心のなかで呟く。
前のめり気味になり、彼女の口元に注目した。
「べつに、とくにないけど」
ズゴーッと、脳内で 椅子から滑り落ちる自分を想像した。
「……そうですか」
これ以上なにかを聞く気力は残っていなかった。
どんな回答でも受け止めると決めたけれど「とくにない」というのは想定外だった。
「じゃあなんで無視するんですか!?」と聞くこともできるのだろうけど、今までほとんど自己主張してこなかった私にとっては、難易度が高いように思えた。
また元気になったら聞いてみることとする。
「とりあえず今日は、それを聞けただけでも素晴らしい進展ですね。よく頑張りました」
三葉はそう言って、優しく頭を撫でてくれた。
日の暮れた薄暗い公園のベンチに並んで座る。
落ち込む私の顔を強引に自分の方に向け、そっと額にキスをする。
私は驚いて周りをキョロキョロした。
「そ、外だよ!?」
思わず小声になる。
「誰も見てないですよ」
たしかに、周りに人はいなかった。
三葉はそれを知っていて、あえてこの場所にしたのかもしれない。
相変わらず、三葉は私よりも周りをよく見ている。
「ねえ、三葉」
「はい」
「三葉は、なんで倉橋さん、私を無視すると思う?」
「んー」
三葉は腕を組み、空を見上げた。
しばらく考えて、目が合う。
「通さんのことが好き、とか?」
「はあ!?」
すっとんきょうな声が出る。
「ほら、小学生男児が、つい好きな子にいじわるしちゃう的な」
「そんなわけ……!」
三葉はニコッと笑って「ないですよね」と言った。
目が笑っていなかった気もしたけれど、きっと外灯に上から照らされて、目元に影が出来たせいで、そう見えたんだろう……と思うことにした。
缶コーヒーを飲む。
その動作がシンクロして、2人でケラケラ笑った。
そっと手をつなぐ。
三葉がぎゅっと強く握り、私も 握り返した。
風が吹き、葉が落ちる。
秋の夜は、少し肌寒い。
週の終わりで疲労がたまってるからか、負の感情がグルグルと全身を巡る。
ゲームに逃げたい。
キーボードをカタカタと打ちながら、左を見る。
右側を見たくないから。
右側には、1年先輩の倉橋さんが座っている。
彼女は私のことが嫌いなようで、よく無視される。
仕事上、重要な話はきちんとしてくれるけれど、それ以外は全く知らせてくれない。
たとえ重要でなくても、知っておくべきことはたくさんあるはずなのに。
教育係りの彼女がほとんど教えてくれないおかげで、私は新入社員のときから自分で試行錯誤しながら、資料作成をしてきた。
幸い、上司にはそれなりに認めてもらえているから、なんとか仕事を続けられている。
「通さん!」
急に声をかけられて、内心びっくりする。
「おお……三葉、どーした?」
「これ見てくださいよ、作ったんです」
輝くような笑顔で三葉は資料を差し出す。
彼女は新入社員で、なんだかすごく元気な人だ。
一見年下か同い年に見えるけれど、実は2才年上だ。
一浪して大学に入り、大学院を卒業している。
非常に優秀で、普通の人に任せれば丸1日かかる仕事を、数時間で終わらせる。
「おー、いいじゃん」
手渡されたのは企画書だった。
内容そのものは別の人が考えたものだけれど、発表するためのデザインを考えたらしい。
「わかりやすいですか?」
「うん、いいと思うよ」
私たちのいる企画部は、1課と2課に分かれている。
彼女は1課で、私は2課だ。
別々の課なのに、なぜか彼女は私のところによく来る。
「よかった!!改善するところありますかね?」
「んー?特にないんじゃない?」
正直、2年目の私に聞くより、3年目、4年目の先輩に聞いた方がいい気もする。
「了解です!…ところで通さん」
「ん?」
「例のお店、また行きましょー!今日忙しいですか?」
「おー、忙しくないよ。行こ行こ」
例のお店とは、彼女のお気に入りの居酒屋だ。
数ヵ月前に、美味しいからと誘われて、既に6回行っている。
「通さん!仕事終わったら教えてください!」
定時の5分後、ニコニコと眩しい笑顔で三葉が言う。
「30分待って」
「了解です!」
ひとりの食事は虚しい。
就職のために上京してから、友達と呼べる人がいなかった。
会社の同期ともほとんど話さないから、余計孤独な感じがしていた。
だから三葉からの食事の誘いは素直に嬉しい。
元気で気さくな彼女のことだから、いろんな人と食事に出かけているのだろうと思っていたけれど、ほとんど私とだけらしい。
彼女いわく「外食はあまり好きじゃない」んだそうな。
実際、昼には手作りの弁当を持参しているし、部署の飲み会は心底面倒そうにしている。
上司の前ではニコニコ笑っているが、私に向ける笑顔とは全然違うのは明らかだ。
まず、目が笑っていない。
若干怖いくらいだ。
「通さん、ほんと可愛いですよねー」と、彼女は1日に3回は言ってくれる。
可愛いなんて言われ慣れていない私は、最初言われたとき、かなり戸惑った。
地元の友人たちに、そういうことを言う人はいなかった。
最近やっと慣れてきて「ありがとう」と言えるようになった。
三葉は、愛嬌があって可愛いけれど、外見はどちらかと言うとかっこいい感じだ。
キリッとした二重で、鼻筋が通っている。
耳が隠れるくらいの長さのショートヘアで、髪を耳にかけるとツーブロックになってるのがわかる。
服装もお洒落で、いつもスタイリッシュだ。
私は、地元にいたときは、あまり外見を気にしていなかった。
だから、気にするようになったのは上京してから。
社会人デビューというやつだろうか。
雑誌やSNSでファッションを参考にしているけれど、これで正しいのかはわからなかった。
そこで、初めて人に相談してみることにした。
ようやく、相談できる相手ができたのだから。
変じゃないか三葉に聞くと「すごく似合ってますよ」と爽やかな笑顔で言われた。
週に1回くらいのペースで聞いていたけれど、毎回褒めてくれる。
それも具体的に、この色とこの色が合ってるだとか、この形とこの形の組み合わせがいいだとか……。
「服って、その人に似合ってるか似合ってないかが大事だと思うんですよ。全体的な雰囲気と言うか……。たまに、よくあるファストファッション着てても『組み合わせは悪くないんだけど、なんかこの人に似合ってないな』って思う人もいるんですよ。理由はわからないですけど。その点、通さんは自分のことがよく見えてるんだなって思います。自分に似合うものがよくわかってるんだなって」
なんて言われてから、少し自分に自信を持てるようになった。
そんな風に三葉は、整った顔立ちをしている上に、褒め上手だ。
話を聞いてる限り、かなりモテてるようだけれど、当然のことと言えば当然のことだ。
1課にいる、4年目の立川さんは、三葉に好意を抱いてるような気がする。
彼は積極的に三葉を食事に誘っているし、いつも2人で楽しそうに話している。
「通さん、悩んでますか?」
例のお店につき、ボーッとメニューを眺めていると、三葉に覗きこまれた。
「あー、いや、決まった」
目を合わせると三葉はニコッと笑い、店員さんを呼んだ。
こういうところだ。
彼女の、こういうところがモテる一番の要因なのではないだろうか!
これがいわゆる、余裕のある感じ、なのだろうか。
女の私でも、油断するとドキッとしてしまう。
「通さん、眼鏡似合いますね」
「そー?…ありがとう」
「目、悪いんですか?」
「いや、度なしの眼鏡だよ。ブルーライトカットの眼鏡なんだ」
「あー、なるほど。ほぼ1日中パソコン見てますもんね。私も買おうかな」
「心なしか目が疲れにくくなった気がするから、オススメだよ」
三葉はふふっと笑い「どんなのが似合うと思います?」と、手で眼鏡を作っておちゃらける。
「どんなのだろね」
何て答えればいいかわからず、私は水を飲んだ。
「私もショートヘアにしようかな」
答えられないことに対して、なんとなく気まずく思い、急な話題転換。
自分をコミュ障だなーと思う瞬間。
「んー……きっと似合うけど、私はロングが好きです」
一方三葉は、コミュ力の塊のような人だ。
急に話題を変えても、ちゃんと話を合わせてくれる。
「そっかー」
じゃあ、しばらくはロングにするか。
「ショートも絶対似合いますけどね!」
三葉は少し身を乗り出して言う。
「うん、ありがとう」
鼻の穴を膨らませた三葉が可笑しくて、笑える。
「ほんと、通さんの髪はサラサラで綺麗ですよね」
伸ばされた手におさまるように、頭を傾げた。
優しく、指で髪を梳かれる。
心地よくて、目をつむる。
「三葉も髪サラサラじゃん」
「まあ、そうですね」
三葉がケラケラ笑う。
あたたかい手が離れていくのを感じて、名残惜しくなる。
いつだったか、私がポニーテールにしていた日、コピー機の前でコピーが終わるのを待っていると、後ろに立った彼女がふいに髪に触れてきた。
驚いて振り返ると「あ、すみません、つい」なんて、ヘラヘラ笑いながら謝ってきた。
それから彼女は、徐々に、自然に、私の髪に触れるようになった。
私のなかで、彼女に頭を触られるのが当たり前になった。
お酒がまわってくると、彼女がきまって言うことがある。
「通さん、絶対モテますよね」
どこをどうしたらそんな結論に至るのか、私にはさっぱりわからない。
「ほんとにモテないよ」
三葉は机の上で組んでる腕に顔を半分埋めながら、上目遣いに睨む。
「嘘だー」
「ほんとだって」
梅酒をゴクリと飲んで、彼女を睨み返す。
すぐにうつむいて「今まで1回も、誰とも付き合ったことないもん」と、小さく言った。
居酒屋の喧騒でかき消えたかと思ったけれど、チラリと三葉を見やると、彼女は目をまん丸くさせていた。
聞こえていたみたいだ。
「ニヘァャ」という効果音が聞こえてきそうなくらい顔をほころばせる。
「可愛い」
鼓膜に届いた少し低い声が、鼓動をはやくさせる。
「どこが」
「いじけてるところ?」
三葉は首を傾げながら、右側の口角だけ上げる。
ドクドクと心臓が鳴る。
私も、酔ってきたかな。
「三葉こそ、すごいモテるじゃん」
「まあ、そうですね」
平然と肯定されると、微妙にイラッとする。
でも事実だから仕方ないとも思う。
「この前も、立川さんと楽しそうにしてた」
「ん?いつですか?」
「一昨日だよ……頭、撫でられてたじゃん」
「あー、あの時ですか。べつに楽しくなかったですよ」
「嘘」
「本当ですって」
私は口をすぼめて、目をそらした。
「ヤキモチ……ですか?」
「はあ!?」
思わずすっとんきょうな声を出してしまった。
「まあ、立川さん、明らかに好意むき出しですよね。私、わかるんですよ、恋愛的に好かれてるなっていうの。なんとなく」
三葉はコップに残ったハイボールを飲み干し、おかわりを注文する。
「好かれるのはありがたいですけど、正直、恋愛的に好きじゃない人に好意を持たれても、困ります」
ゴクリと唾を飲む。
なぜか私に言われているような気になって、スーッと酔いが冷めていく感じがした。
「なんて……生意気ですかね?」
彼女はおどけたように笑い、新しいハイボールに口をつける。
「生意気」
コップのふちに口をつけた。
少し傾けて、ちびちびと梅酒を飲み始める。
「ですよねー」
ニシシと笑って、彼女はまたハイボールを飲んだ。
「もっと生意気なこと言うと、立川さんって距離つめるのが早いんですよね。あれじゃ女の人に引かれかねないですよ」
「どういうこと?」
「いきなり頭ナデナデされたら、ビビりますよ。ビビりません?」
「たしかに……」
「ん?待てよ。君、人のこと言えなくないか?」と、考える。
でも頭のなかで、すぐに前言撤回した。
彼女の距離のつめ方はゆっくりだった。
新卒で入ってきて、初めは挨拶からだった。
会社の最寄り駅から会社までの行き帰りで会うと、必ず声をかけてくれた。
普段ご飯は自炊か外食か聞かれ、外食が多いと答えたら、食事に誘われた。
職場では、すれ違ったときや印刷のタイミングが重なったときに話しかけられるようになった。
次第に仕事のアドバイスを求められるようになり、昼休みに話しかけられるようになり、それからコピー機の前で髪に触れられた。
それも全体ではなく、毛先を少し触られた程度だった。
「たまたま友人がそこにいたから、声をかけるために触れた」と言われても違和感がないほどに、さりげなかった。
そのあと「髪触られるの嫌いな人っているけど、通さんはどっちですか?」と聞かれ「あんまり人に触られたことないからわからないけど、美容院に行ったときは気持ちいいかな」と答えると、徐々に触られるようになった。
「私は?」
手に汗がにじむ。
「私が三葉の頭を撫でたのは、ビビった?」
恐る恐る三葉を見ると、目をパチパチと瞬かせていた。
「ある意味ビビりましたね」
「ある意味?」
「ときめいたという意味で」
三葉は右側の口角だけ上げて、意地悪に笑う。
「なにそれ」
私は笑いながら、最後のひとくちを飲み干す。
「通さん」
まっすぐ見つめられ、緊張する。
「な、なに」
「そろそろ終電、やばいです」
彼女はニコッと笑いながら、スマホを片手に出す。
「通さん、今から家に遊びに行っちゃだめですか?…嫌ならダメってハッキリ言ってくださいね!気遣いや嘘は無用です!あー、無用だーよー!」
手を私の顔の目の前で広げ、仁王立ちする。
歌舞伎の真似でもしているのか……謎だ。
「遊びにって…何するの?」
「ゲームしましょ!FPSやりたいです!」
魅力的な誘いだった。
「通さんがどんな風にゲームしてるのか見てみたかったし」
「どんな風にって…普通だよ」
「普通じゃないですよ、無言でやってるなんて。普通は、暴言を吐いてしまいます」
三葉は肩をすぼめながら、上目遣いに私を見た。
私よりも10センチ以上背が高いのに上目遣いができるってどういうことだ。
「で、どうです?今回は行かない方がいいですか?」
「いいよ、おいで」
「泊まっていくことになりますけど、大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ」
「明日は何か用事はありませんか?」
「大丈夫ですよ」
秋の夜は、少し肌寒い。
シャツの襟に口元を寄せる。
「じゃー、バスタオルとか貸してくださいね」
嬉しそうに笑う三葉。
私もつられて、笑ってしまう。
「歯ブラシとかもあるよ」
コンビニで夜食を買い、ふたりで家路についた。
部屋に入ると、三葉は興味深そうに見回して、軽くスキップしながら移動し、床に座った。
テレビをつけて、ゲーム機の電源を入れる。
コントローラーを三葉に渡そうとすると、首を横に振られた。
「それにしても、通さんって偉いですよね」
「急にどうした?」
「倉橋さんですよ」
装備を確認し、プレイを始める。
「あ、話しながらでもできます?1回黙ります?」
思わず笑いながら「話し続けていいよ」と答える。
「1年目からあんな感じだったんですよね?」
「うん」
「私だったら耐えられませんよ、1年上の先輩に無視されてたら。たぶん、辞めてます」
状況を確認しつつ、敵を撃ち殺していく。
普段ならイヤホンをして、他のプレイヤーの会話を聞いて状況確認をするけれど、今は画面だけが頼りだ。
「私も辛かったよ、こっちに相談できる友達もいないしね」
「そうですよねー。よく耐えましたよね」
「ほんとね、自分でも思う」
「無視する理由はなんなんですかね?」
「さあ?私も知りたいよ」
ため息混じりの、諦めの笑いをこぼす。
「今でも、辛いですか?」
「まあ、楽しくはないよね」
コントローラーを握る手が強くなる。
「仕事、辞めたいですか?」
「仕事自体は楽しくなってきたからなあ……辞めたいとまでは思わないかな」
「良かった」
三葉がチップスを広げ、缶チューハイをあける。
「私、通さんが会社にいなかったらとっくに辞めてますよ」
驚いて、手元の操作が狂う。
「え、そーなの?」
「はい、藤嶺さんと合わなくて」
「ああ……藤嶺さんはね、仕方ないよね」
藤嶺さんは1課の課長だ。
社内の一部の人は「藤嶺さんの部下になったら諦めるしかない」とまで言っている。
パワハラ、セクハラ、モラハラとまではいかないけれど、かなり面倒な性格をしているらしい。
2課にいる限り、害はほとんどないので、私は実感としてはわからない。
「この前、仕事を頼まれたんで2時間くらいで終わらせたんですよ。そしたら『もう終わったの!?』って驚かれて『もうちょっと考えたら?』って言うんですよ」
ゴクゴクと飲む音が聞こえてくるくらい、勢いよくチューハイを飲む。
「具体的に何か悪いところがあるなら、もちろん直しますよ。でも、特に出てこないんですよ。じゃあ何を考えろと?どうしろと?って感じです」
「たしかになあ」
「前にも同じようなことがありました。そのときは、改めて考え直したんですけど、最初に提出した案の方が良いってことになって、考えた時間が無駄になったんです。それで、同じことを繰り返してもラチがあかないし、仕方ないからデスクに持ち帰って、考えたんですよ。今回はどうしようかな?って。ちょこちょこーっといじって2、3時間別のことして、時間潰したあと、藤嶺さんのとこ持ってってみたら…『いいんじゃない?』って言われたんですよ。大きく変えたところなんてないんですよ。それでOKが出たってことは、つまり、時間の問題ってことですよね?」
怒気を混ぜながら、三葉は早口になる。
「早く終わると、手を抜いてると思われるってことですよ。残業を減らそうって言うけど、そういう考えだから減らないんじゃないですか!根本的に考え方を変えないと、残業なんて永久になくなりませんよ」
たしかにそうだ。
きっと若手社員はみんな共通して思っていることだろう。
「藤嶺さんに、今の話をしたんですよ。もうちょっとオブラートに包んで。でも、逆ギレされて終わりました」
でも、みんな言葉にはしない。
どうせ聞き入れてもらえないと諦めているから。
「どんなに若手が工夫しても、上がそれを潰してしまったら結局意味ないよね」
ゲームと会話の両方に意識を持っていくのは、なかなか難しい。
いつもより操作の精度が劣っている。
「そうですよ」
「しかも、若手は若手でギクシャクしてるところあるしね……」
乾いた笑みを浮かべると「笑えねー」と、笑いながら三葉が言った。
「通さんは、イライラしないんですか?」
「んー、するよ」
「してるように見えないです」
「そう?たまに泣きそうになってるよ」
初めて人に告げて、少し顔が火照る。
「え?……あ、そっか」
三葉がなにやら横で考え始める。
「なに?」
「いや、たまに通さんが震えてるように見えたのは、そのせいだったのかなーって思って」
「え!震えてた!?」
思わず画面から目をそらしてしまう。
「はい」
三葉が自信満々に頷く。
「でも、泣いてはいないよ?」
「はい、知ってます。指先が震えてるなーって思ってたんです」
「そ、そーなんだ……自分のことなのに気づいてなかった」
「自分のことがよく見えてる」と三葉は言ってくれたけれど、私はいつも目の前のことに必死で、あまり見えていないんだと思う。
震えていた記憶を思い出そうとして、少し考え込んだところで、対戦が終わった。
負けだった。
やっぱり、プレイと会話を両立させるのは厳しい。
ポンと、頭にあたたかさと、少しの重みを感じる。
三葉が手を伸ばしていた。
「通さん、この1年半、よくがんばりました。おつかれさまでした」
優しい笑みを浮かべられ、思わず目の奥が熱くなる。
私は顔を隠すようにうつむいて、三葉の頭に両手を伸ばした。
わざと、グシャグシャと手を乱暴に動かす。
「もー!やめてくださいよ……!」
三葉は嬉しそうに、無邪気に笑った。
胸がぎゅっと締め付けられる。
「三葉もよくがんばった!……がんばった!!いい子いい子」
私よりも三葉の方がいろんなことが見えている。
三葉自身のことだけでなく、周りのことも。
そして、ただ見えているだけでなく、どうしたらいいのか考え、行動にうつす力がある。
「いい子って、私の方が年上ですよ?」
「でも後輩だもん」
「なんだそれ……可愛すぎ」
ふいに、天井が視界にうつる。
影ができ、三葉が目の前に現れる。
「三葉……?」
「通さん」
いつも愛嬌があって、ニコニコしてる三葉が、真剣な表情をしている。
吸い込まれてしまいそうなほど透き通った瞳が、私の目を捕らえて離さない。
「好きですって言ったら、どう思いますか?」
心臓がドクドクと音をたてる。
唾を飲んでも、飲んでも、乾くような気がして、頭が混乱する。
「どうって……」
「恋愛的に好きですって言われるのと、先輩として好きですって言われるの、どっちが嬉しいですか?」
「恋愛って……女同士じゃん」
「好きに性別って、関係ありますか?通さんは、そういうの、気持ち悪いですか?」
前に同じようなことを聞かれたことを思い出した。
私の答えはなんだったかな。
「気持ち悪いとは思わない。そもそも、恋愛がどんなものかわからない?」
そうだ、そう答えたんだ。
「でも通さん。私のこと、好きでしょ?」
これ以上は出てこないと、無い唾に告げられる。
それでも喉を鳴らして、何かを飲み込む。
「それとも、好きじゃない?……遠慮も嘘も無用だーよー」
優しく微笑む彼女は、少し不安げで、儚げに思えた。
目が、離せない。
「ねえ、好き?もし私が立川さんにとられたらどう思います?」
「とられたら……」
想像した。
立川さんが三葉の頭を撫でていたところ。
さらに想像を膨らませて、2人が抱きしめあっているところ。
そして、キスする寸前で 意識を戻した。
「嫌」
三葉が楽しそうに笑う。
手のひらの上で転がされてる感がハンパじゃない。
「それで、私のこと…好き?ちゃんと言葉にして」
それでも、まっすぐ見つめられると、答えないわけにはいかない気がした。
「……好き」
声が震えた。
彼女は嬉しそうに満面の笑みを浮かべる。
「聞こえない」
私は眉間にシワを寄せて、口をつぐんだ。
「ねえ、言って」
三葉の顔が近づく。
「言って」
包み込むような、中性的な声。
「好き、だよ」
「やっぱりね」
「なに」
「通さんは私のことを好きだと思った」
「なんか……それ、むかつく」
三葉の視線が私の口元に移る。
また顔が近づいて、私は慌てた。
「ちょ、待っ……」
咄嗟に、三葉の胸元を手で押さえる。
「嫌……ですか?」
傷ついたような、悲しい顔をする彼女を見て、さらに動揺する。
わからない。
自分の気持ちが、わからない。
立川さんに三葉をとられたら嫌だという気持ちはある。
だから、三葉のことが好きなんだとも思う。
でも、初めてのことばかりで 脳が追い付かない。
心臓の音がうるさいくらいに鳴っている。
耳を押さえたくなるほどだ。
ドク、ドク、ドク、ドク、ドクと 脈打つのがハッキリとわかる。
ふいに、両頬をつままれた。
「通さん、ちゃんと 私を見て」
いつの間にか顔をそらしていたらしい。
「私も、通さんが好きです」
なぜかその言葉にホッとして、心臓の音が少し静まった。
三葉は笑ったあと、私に優しい口付けをした。
押し当てられたそれは柔らかくて、すぐに離れていったのに、ピリピリとなにかが残っている感じがした。
でも、あたたかさは失われ、寂しさが募り始める。
彼女は優しく微笑み、もう一度、キスをした。
「嫌な感じ、しましたか?」
「しない」
「よかった」
頭を優しく撫でられ、心地よくなる。
「もっと」
口からポロッと出た言葉に、自分で驚く。
はじけるような笑顔で三葉は私を見つめる。
「もっと?……なにを?」
湿った唇を舐めると、三葉の視線も口元に移る。
すぐに目が合って、からかうように 眉を上げた。
「なに?」
「……いじわる」
「可愛い」
唇を突き出してみるけど、彼女はわかってて、それでも あえて何もしない。
「いじわるじゃないですよ。ちゃんと、思ってることは言葉にしないと、わからないじゃないですか。察することはできても、それが100%正しい答えかなんて 他人にはわからないんです。だから…通さんは、ちゃんと言葉にして、お願い…しなきゃいけないんです」
それがいじわるだと言ってるんだ。
わざわざ「お願い」を強調しなくてもいいのに……。
フウッと深呼吸して、目一杯の勇気を出す。
「もっと、キス……して」
三葉は、若干引くくらいの とろけるような笑顔になる。
私が ハアとため息をつき終える前に、三葉の唇にふさがれた。
今度はさっきよりもずっと長くて、苦しくなった。
わずかな隙間から彼女の吐息が入り込み、舌が絡まる。
「んっ」
胸元で縮こまっている両手が震える。
ぎゅっと目をつぶり、懸命に彼女の舌にすがる。
夢中になっていると、突然「ぷはあっ」と息を吐き出し、勢いよく三葉が起き上がった。
私のやり方がダメだったのかと、不安になる。
「腕が……腕が痛くなっちゃいました」
「へへへ」と、甘い空気を壊したことに悪びれる様子もなく、三葉はベッドを背もたれに座る。
「通さん、やっぱ 可愛いですね」
ニコニコと、いつもの愛嬌ある笑顔で言う。
「なんで?……下手、だった?」
「下手じゃないですよ。でも、一生懸命なのが可愛くて。……腕の限界さえ来なければ、もっと可愛い姿を拝められたのに。自分の体力のなさが憎いです!」
一生懸命って、イコール下手って意味じゃないのか?
でも、それでも仕方がない。
私は、今まで誰ともこういうことをしたことがなかったのだから……。
恥ずかしさを堪える。
土日の両日とも2人で部屋で過ごし、 日曜の夜に三葉は帰宅した。
初めてお付き合いする相手が同性だとは思わなかったけれど、自分が男の人と付き合っているところも あまり想像できなかった。
結果的に、特段緊張することもなく付き合えて、私にはこちらの方が性に合っているような気さえした。
三葉は相変わらず立川さんと仲良しそうにしている。
でも、もう わけのわからないモヤモヤは生まれない。
これが付き合うことの利点なのだと、また新しいことを知った。
椅子に深く腰をかけ、左右に揺れる。
フウッと深呼吸する。
意を決して、右側を向く。
「倉橋さん」
倉橋さんは作業をピタッと止め、視線だけこちらに向けた。
「私、なにか倉橋さんの気に障るようなことしましたか?」
一度も聞いたことがなかった。
独りでは聞く勇気がなかったし、聞かなくていいとも思ってた。
「嫌われている」ただその事実だけ勝手に察して、放置していた。
触らぬ神に祟りなし…に倣って。
でもきっと、人間関係においては その行為は ただ臭いものに蓋をするだけなんだと思う。
小さなストレスがたまりにたまって、いつか自分が壊れてしまうかもしれない。
もし誰も私の頑張りを認めてくれる人がいなかったなら、いつか、私は壊れてしまっていたかもしれない。
物理的に距離をとれない関係なら、少しでも改善した方がいいに決まってる。
そして、自ら相手を知ろうとしなければ 改善できるわけがない。
私は両膝の上に両手を握りしめて乗せた。
「どんな言葉がきても受け止めよう」という気持ちで、倉橋さんを見つめる。
数秒がいやに長く感じる。
壁にかかっている時計の秒針が聞こえてきそうなほどだ。
倉橋さんがわずかに口を開ける。
同時に、彼女の指がパソコンのキーボードを打ち始めた。
まるでスローモーションだ。
「さあ!なんて来る!?」と、心のなかで呟く。
前のめり気味になり、彼女の口元に注目した。
「べつに、とくにないけど」
ズゴーッと、脳内で 椅子から滑り落ちる自分を想像した。
「……そうですか」
これ以上なにかを聞く気力は残っていなかった。
どんな回答でも受け止めると決めたけれど「とくにない」というのは想定外だった。
「じゃあなんで無視するんですか!?」と聞くこともできるのだろうけど、今までほとんど自己主張してこなかった私にとっては、難易度が高いように思えた。
また元気になったら聞いてみることとする。
「とりあえず今日は、それを聞けただけでも素晴らしい進展ですね。よく頑張りました」
三葉はそう言って、優しく頭を撫でてくれた。
日の暮れた薄暗い公園のベンチに並んで座る。
落ち込む私の顔を強引に自分の方に向け、そっと額にキスをする。
私は驚いて周りをキョロキョロした。
「そ、外だよ!?」
思わず小声になる。
「誰も見てないですよ」
たしかに、周りに人はいなかった。
三葉はそれを知っていて、あえてこの場所にしたのかもしれない。
相変わらず、三葉は私よりも周りをよく見ている。
「ねえ、三葉」
「はい」
「三葉は、なんで倉橋さん、私を無視すると思う?」
「んー」
三葉は腕を組み、空を見上げた。
しばらく考えて、目が合う。
「通さんのことが好き、とか?」
「はあ!?」
すっとんきょうな声が出る。
「ほら、小学生男児が、つい好きな子にいじわるしちゃう的な」
「そんなわけ……!」
三葉はニコッと笑って「ないですよね」と言った。
目が笑っていなかった気もしたけれど、きっと外灯に上から照らされて、目元に影が出来たせいで、そう見えたんだろう……と思うことにした。
缶コーヒーを飲む。
その動作がシンクロして、2人でケラケラ笑った。
そっと手をつなぐ。
三葉がぎゅっと強く握り、私も 握り返した。
風が吹き、葉が落ちる。
秋の夜は、少し肌寒い。
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