いたずらはため息と共に

常森 楽

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9.移ろい

508.パーティ

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コロコロと音が鳴る。
いつか音楽室で木琴をやってみたことがあるけれど、あの音に近い何かを感じる。
それとも、虫の鳴き声かな。
“穂は木、私は群がる虫”
さっき永那ちゃんが言っていたのを思い出す。
今は、逆になったみたい。

私が離れると、永那ちゃんが微笑んでくれる。
夢見心地って、こういうことを言うのかな。
もっとしていたくて、顔を近づける。
「好き」
触れ合うまでの刹那、彼女が零す。
ふっと芽吹くように小さく風が吹いて、子宮が疼く。
さっきまでのやわらかなやり取りとは打って変わって、激しく、求め合うように口づけを交わす。
彼女の手が肌に触れて、鼓動が鳴る。
知らぬ間に服の中に入ってきていた。
それを見る余裕なんて私にはなくて、彼女の手の体温を、ただ肌で感じた。

胸の締め付けがなくなる。
髪が下りてきて邪魔だけど、そんなことに構っている余裕すらない。
彼女が乳房を優しく揉むだけで、ピクピクと体が反応する。
「んっ」
気持ち良いところが弾かれる。
思わず唇を離すと、涎が垂れそうになった。
「可愛い」
啜ると、彼女がそう言って濃艶に笑った。
「気持ちいい?」
「うんっ」
「あぁ、可愛いっ」
ビー玉がぶつかり合うみたいに、弾けるような快感が子宮に伝っていく。
彼女の首に回した腕は、いつしか彼女の肩に体重を乗せるような形になっていて、次第に、彼女に気遣うこともなく、体を預けた。

「穂、寝っ転がろっか」
もうすぐでイけそうだったのに、彼女の手が止まったことに不満を覚える。
体を起こして、彼女を見る。
フフッと笑って「ごめんね」と謝られた。
「ちょっと体勢がつらかった」
「ご、ごめんね…」
「ううん。私の方こそ、イかせてあげられなくてごめん」
そっと彼女から降りて、布団に寝転ぶ。
なんだか夢中になっていた自分に恥ずかしくなって、前髪を指で梳いた。
「イけそうだったのにね?」
永那ちゃんには、そういうの、なんでもお見通しなんだろうけれど…そうもハッキリ言われると、余計に恥ずかしい。
「脱ごっか」
そう言われて、服が脱がされる。
既にホックが外されていたブラも一緒に脱がされ、流れるような仕草で、彼女が私の胸を口に含んだ。
「んぁっ」

「ん、忘れてた」
また、途中で…。
“むぅっ”と唇を突き出す。
彼女は私の気持ちを見透かすように、楽しそうに笑った。
本当に、遊んでいるみたいに楽しそう。
枕元に置かれていたタオルを取って捻り、口元に当てられる。
「噛んで?…頭上げて?」
言われた通りにする。
口の中が狭くなって、舌が上手く動かせない。
ネットカフェでおしぼりを咥えた時と同じ。
「これで良し」
ニシシと笑う。
目が合ったまま、彼女は再び私の胸元に顔を下ろしていく。
それはまるでスローモーションで、彼女の影が、私の体にゆっくりと落ちていった。
目を閉じる。
その瞬間、急に時が動き出したみたいに、快楽が全身を駆け巡った。
体の芯が陽射しの束のようになって、じんわりと体が火照る。
手探りに、彼女の腕を掴む。
「ンッ、んッ」
ギュッと手に力が入る。
すぐに導かれる。彼女の作り出す悦びに。

「穂」
カチャッと耳元で金属音が鳴る。
目を開けると、永那ちゃんが黒い布の輪っかを手に持って、ぶらぶらと揺らしていた。
「これ、つけてみていい?」
首を傾げると、彼女がねだるような目で私を見た。
「怖い…?」
怖いもなにも、それが何なのか理解できていない。
「穂、拘束されるの、結構好きだったよね?」
理解できた瞬間、下腹部がキュッと締まるのがわかって、自分が嫌になる。
「つけてみる?」
鼻から、目一杯息を吹き出す。
私が答えるまで、彼女は動かない。
見つめ合う。

数秒、間を置いて、頷いた。
「怖かったら、言ってね?」
…どうやって言うの?
鼓動が速くなる。
両手首に黒い輪っかが装着された。
…あれ?両手を繋げるんじゃないの?
疑問に思っていると、スルリとズボンを脱がされる。
「足上げて」
私が上げる前に、既にほとんど持ち上げられていた。
まさかとは思ったけれど、手と足を拘束されてしまった。
「どお?」
“どお?”と聞かれても…この、恥ずかしい格好は…何?
しかも、そんなに楽な姿勢ではない…。
永那ちゃんが私を見て笑う。

「ちょっと、蛙みたい」
永那ちゃんを睨む。
「ほら、一緒に水族館行った時、いたよね?蛙」
全然ムードがない。
「あの時、ガラス越しに見た蛙みたい」
もう、その話はしなくていいと思うんだけどな?
「可愛いっ」
ギュッと抱きしめられる。
“可愛い”という話をされていたのには、全く気づかなかった。
永那ちゃん、虫は苦手でも、両生類は平気なの…?
むしろ可愛いって思うの…?
永那ちゃんの好みがよくわからない。

彼女が私の膝に触れる。
「これなら穂の恥ずかしいとこ、全部丸見えだね」
隠したくなって、開いていた膝を閉じる。
「そうやってもね?…こうすれば、丸見えになっちゃうんだよ?」
足首を持ち上げられる。
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