479 / 595
7.向
478.序開
しおりを挟む
「お父さん!あんな大声で呼ばないでよ!!」
「悪い悪い。でも、ひそかがこんなに大きく立派に育ったんだなって思うとお父さん嬉しくてさ!“学校行きたくない”って言ってたから、ずーっと心配してたんだよ?」
「“学校行きたくない”って思っちゃいけないってこと?お父さんは、ひそかがいじめられててもそう言うの!?」
「い、言わないよ。言わないけど…な…?」
お父さんがお母さんを見る。
「そうそう。ひそかが頑張って勉強して入学したんだから…ね?お母さんもお父さんも嬉しいの」
イライラして、2人を置いてけぼりにして、早足に家に向かった。
電車の中でも離れて座った。
途中2人が近づいてきたけど、無視した。
月曜日、永那先輩を探しながらの登校。
人が多くて見つからなかった。
でも大丈夫。
今日は対面式がある。
全校生徒が集まるから、絶対に先輩はいる。
ドキドキしながら教室に向かった。
「ひそかちゃん!おはよ!」
「杏奈ちゃん…おはよう」
「ひそかちゃんと学籍番号近かったら、恋人になる予定の相手、誰か教えてもらえたのに~!」
「結構、目立ってると思うよ。かっこいいから」
「マジ!?探してみよ~っ」
友達…って、思ってもいいのかな…?
朝に雑談をするなんて、中学の時までのひそかには考えられなかった。
たまにはあったけど、こんな風に積極的に話しかけてもらえるなんて…。
ホームルームが始まると、今後の授業や行事についての説明を受けた。
今は2、3年生が始業式をしている最中らしく、それが終わると対面式。
その後、部活紹介が始まり、1週間の体験入部期間を経て、どこかに入部したければ入部する。
…やっぱり、生徒会に入らなきゃいけないのかなあ?
入部届が配られて、ため息が出る。
ひと通りの説明が終わると、対面式の時間まで自由時間になった。
各々交流をし始めて、教室内が賑やかになる。
杏奈ちゃんを見ると、いろんな子に囲まれていた。
ああ…やっぱり…って感じ。
見るからに陽キャな杏奈ちゃんとひそかが合うわけがないんだ。
机に突っ伏していたら、対面式の時間になった。
一気に鼓動が速まる。
最後に先輩に会ったのは、高校の合格発表の2日後。
受験勉強中も愛を確認するために何度か会いに行ったけど、合格を確認した直後のあの日ほど、先輩に話しかけたい衝動を必死に抑えたことはなかった。
いつも遠くから先輩と会っていたし、近距離で会うのは最後に話した日以来…2年ぶり!
先輩、驚くかな?喜ぶかな?
もしかしたら、嬉しすぎて対面式の最中にひそかを抱きしめに来ちゃったりして!!
…いや、式の最中に抱きしめに来るのは、さすがにないか。
でもきっと目が合って、合った瞬間にあの眩しい笑顔を向けてくれるんだ。
体育館に入って、1番に永那先輩を見つけた。
鳥肌がゾワリと立つ。
永那先輩はまだひそかに気づかない。
少し面倒そうに拍手している。
そんな姿も好き…。
綺麗に列を作った後も、永那先輩と目が合わなくてソワソワした。
学籍番号が真ん中なのが憎い。
ひそかは身長もそんなに高くないし、これじゃあ人で隠れて先輩に見つけてもらえない…!
生徒会長が挨拶をして、新入生代表の挨拶も終わる。
全員で校歌を歌い終えると、新入生は床に座った。
「では、これから部活動紹介に移りたいと思います。部活動紹介に参加しない2、3年生は教室に戻ってください」
教師が言うと、ぞろぞろと先輩達が帰っていく。
その中に、永那先輩もいた。
…嘘!?
これじゃあ永那先輩が何部かわかんないじゃん!!
そもそも部活をしているのかどうかもわからない。
結局1度も目が合わなかったし…。
なんだか賑やかな部活紹介だったけど、ひそかはそれどころじゃなかった。
一応、少し興味のあった漫画研究会と、“興味がある”と言ってしまった生徒会の説明だけは聞いておいた。
ダンス部なんかはものすごく華やかで、もしかしたら永那先輩と繋がりの多い人がいるかもしれない!と思ったけど、絶対ひそかには無理だと思って、すぐ見るのをやめた。
部活紹介が終わると、1年生がクラス順で教室に戻っていく。
ひそかのクラスは最後だったから、その時間がもどかしかった。
教室に戻って、担任が挨拶をして、解散。
急いで教室を出ようとすると、杏奈ちゃんに声をかけられた。
「ごめん…!先輩に会いに行きたいから」って言ったら、杏奈ちゃんもついてくると言うから、2人で小走りに3年生の教室に向かった。
向かってる最中「左から2列目の人?」とか色々聞かれたけど、全部違った。
っていうか、杏奈ちゃん勘違いしてる…。
「先輩、女だよ?」
「え!?…えぇぇっ!?先言ってよ!それ!!」
息を切らしながら階段を上った。
「お、危な」
上った先に、先輩がいた。
「先輩…!」
永那先輩が首を傾げる。
「永那先輩!」
「う…ん?」
先輩がひそかの隣に立つ杏奈ちゃんを見て、もう一度ひそかを見た。
先輩の左眉が上がる。
ゆっくりと左の口角が上がって…その表情は、ひそかが期待していたようなものじゃなかった。
“先輩はひそかのこと、覚えてないと思うよ”
こんな時にわざわざ思い出さなくても…。
「ごめん…えっと、中学の時の後輩?」
絶望の淵に立たされたような気分。
…だけど、めげない!
だって先輩はひそかの運命の人なんだから!
ここから始まるの!ここから!
一歩踏み出して、決意を表すようにドンと音を立てて床を踏む。
「ひそかです!先輩!!ひそかです!!」
ひそかは運命を諦めない。
これから始まるんだ。ひそかと先輩の物語が。
「悪い悪い。でも、ひそかがこんなに大きく立派に育ったんだなって思うとお父さん嬉しくてさ!“学校行きたくない”って言ってたから、ずーっと心配してたんだよ?」
「“学校行きたくない”って思っちゃいけないってこと?お父さんは、ひそかがいじめられててもそう言うの!?」
「い、言わないよ。言わないけど…な…?」
お父さんがお母さんを見る。
「そうそう。ひそかが頑張って勉強して入学したんだから…ね?お母さんもお父さんも嬉しいの」
イライラして、2人を置いてけぼりにして、早足に家に向かった。
電車の中でも離れて座った。
途中2人が近づいてきたけど、無視した。
月曜日、永那先輩を探しながらの登校。
人が多くて見つからなかった。
でも大丈夫。
今日は対面式がある。
全校生徒が集まるから、絶対に先輩はいる。
ドキドキしながら教室に向かった。
「ひそかちゃん!おはよ!」
「杏奈ちゃん…おはよう」
「ひそかちゃんと学籍番号近かったら、恋人になる予定の相手、誰か教えてもらえたのに~!」
「結構、目立ってると思うよ。かっこいいから」
「マジ!?探してみよ~っ」
友達…って、思ってもいいのかな…?
朝に雑談をするなんて、中学の時までのひそかには考えられなかった。
たまにはあったけど、こんな風に積極的に話しかけてもらえるなんて…。
ホームルームが始まると、今後の授業や行事についての説明を受けた。
今は2、3年生が始業式をしている最中らしく、それが終わると対面式。
その後、部活紹介が始まり、1週間の体験入部期間を経て、どこかに入部したければ入部する。
…やっぱり、生徒会に入らなきゃいけないのかなあ?
入部届が配られて、ため息が出る。
ひと通りの説明が終わると、対面式の時間まで自由時間になった。
各々交流をし始めて、教室内が賑やかになる。
杏奈ちゃんを見ると、いろんな子に囲まれていた。
ああ…やっぱり…って感じ。
見るからに陽キャな杏奈ちゃんとひそかが合うわけがないんだ。
机に突っ伏していたら、対面式の時間になった。
一気に鼓動が速まる。
最後に先輩に会ったのは、高校の合格発表の2日後。
受験勉強中も愛を確認するために何度か会いに行ったけど、合格を確認した直後のあの日ほど、先輩に話しかけたい衝動を必死に抑えたことはなかった。
いつも遠くから先輩と会っていたし、近距離で会うのは最後に話した日以来…2年ぶり!
先輩、驚くかな?喜ぶかな?
もしかしたら、嬉しすぎて対面式の最中にひそかを抱きしめに来ちゃったりして!!
…いや、式の最中に抱きしめに来るのは、さすがにないか。
でもきっと目が合って、合った瞬間にあの眩しい笑顔を向けてくれるんだ。
体育館に入って、1番に永那先輩を見つけた。
鳥肌がゾワリと立つ。
永那先輩はまだひそかに気づかない。
少し面倒そうに拍手している。
そんな姿も好き…。
綺麗に列を作った後も、永那先輩と目が合わなくてソワソワした。
学籍番号が真ん中なのが憎い。
ひそかは身長もそんなに高くないし、これじゃあ人で隠れて先輩に見つけてもらえない…!
生徒会長が挨拶をして、新入生代表の挨拶も終わる。
全員で校歌を歌い終えると、新入生は床に座った。
「では、これから部活動紹介に移りたいと思います。部活動紹介に参加しない2、3年生は教室に戻ってください」
教師が言うと、ぞろぞろと先輩達が帰っていく。
その中に、永那先輩もいた。
…嘘!?
これじゃあ永那先輩が何部かわかんないじゃん!!
そもそも部活をしているのかどうかもわからない。
結局1度も目が合わなかったし…。
なんだか賑やかな部活紹介だったけど、ひそかはそれどころじゃなかった。
一応、少し興味のあった漫画研究会と、“興味がある”と言ってしまった生徒会の説明だけは聞いておいた。
ダンス部なんかはものすごく華やかで、もしかしたら永那先輩と繋がりの多い人がいるかもしれない!と思ったけど、絶対ひそかには無理だと思って、すぐ見るのをやめた。
部活紹介が終わると、1年生がクラス順で教室に戻っていく。
ひそかのクラスは最後だったから、その時間がもどかしかった。
教室に戻って、担任が挨拶をして、解散。
急いで教室を出ようとすると、杏奈ちゃんに声をかけられた。
「ごめん…!先輩に会いに行きたいから」って言ったら、杏奈ちゃんもついてくると言うから、2人で小走りに3年生の教室に向かった。
向かってる最中「左から2列目の人?」とか色々聞かれたけど、全部違った。
っていうか、杏奈ちゃん勘違いしてる…。
「先輩、女だよ?」
「え!?…えぇぇっ!?先言ってよ!それ!!」
息を切らしながら階段を上った。
「お、危な」
上った先に、先輩がいた。
「先輩…!」
永那先輩が首を傾げる。
「永那先輩!」
「う…ん?」
先輩がひそかの隣に立つ杏奈ちゃんを見て、もう一度ひそかを見た。
先輩の左眉が上がる。
ゆっくりと左の口角が上がって…その表情は、ひそかが期待していたようなものじゃなかった。
“先輩はひそかのこと、覚えてないと思うよ”
こんな時にわざわざ思い出さなくても…。
「ごめん…えっと、中学の時の後輩?」
絶望の淵に立たされたような気分。
…だけど、めげない!
だって先輩はひそかの運命の人なんだから!
ここから始まるの!ここから!
一歩踏み出して、決意を表すようにドンと音を立てて床を踏む。
「ひそかです!先輩!!ひそかです!!」
ひそかは運命を諦めない。
これから始まるんだ。ひそかと先輩の物語が。
10
お気に入りに追加
195
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる