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8.閑話
36.永那 中2 春〜夏《野々村風美編》
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私は彼女のカードを奪って、2千円チャージした。
私も、そんなにお金を持ってるわけじゃないけど…。
「え、そんな!悪いですよ!」
「私が誘ったんだよ?お金ないって言われてたんだし…いいの。払わせて?」
「あ…ありがとうございます…」
一緒に電車に乗る。
それだけで、なんだか楽しかった。
遊園地について、永那が驚愕していた。
その驚いた顔が面白くて、私は笑う。
「あ、あの…遊園地って…」
「さっきも言ったでしょ?私が誘ったんだから、私に払わせて」
永那が頷く。
「永那!あれ乗ろうよ!」
永那の手を引いて、ジェットコースターに乗りまくった。
友達と来ても、いつも友達の乗りたい物に合わせていた。
それも楽しかったから良いんだけど、やっぱり、乗りたい物に乗れたほうが楽しいと思った。
永那はなんでも、“いいですよ”って言ってくれて、舞い上がった。
お昼を買うと、永那はペコペコと頭を下げた。
「永那って、そんな感じだったっけ?」
「え?どういうことですか?」
「なんか、ジュースとか奢られたとき“わーい!”って喜んでるタイプじゃなかった?」
「あー…まあ…」
また歯切れの悪い言い方。
「永那…。その、何に悩んでるのかとか、言いたくないんだったら言わなくてもいいけどさ?楽しめるときは楽しまないと損だよ?」
「すみません…」
永那が俯くから、これは重症だ…。
「謝るくらいなら、一緒に楽しんで!ね?」
永那が上目遣いに私を見る。
「ね?」
念押しすると、パッと顔が明るくなった。
…可愛い。
「はい!!」
それからの永那は、私の知ってる永那で。
なんでも私の言うことを聞いてくれるのも嬉しかったけど、永那が楽しそうに“あれも乗ってみたいです!”と笑うのはもっと嬉しかった。
「風美先輩、今日めっちゃくちゃ楽しかったです!ありがとうございました!」
「いいえ、こちらこそ。また遊ぼ?」
「はい!是非!…あ、でも、チケットとか買ってもらうのは申し訳ないので、今度はどっか、お金のかからないところでお願いします」
永那は伏し目がちに、ポリポリと頬を掻いた。
「わかった」
「先輩の家に行ってもいいですよ?」
悪戯を企む子供みたいにニヤリと笑った。
「いいよ?」
「じゃあ、楽しみにしてます」
永那は私を家まで送ってくれた。
「ここが風美先輩の家ですね。覚えたんで、これからいつでも来れますね」
ニシシと笑うから、胸がギュッと締め付けられた。
永那が走って帰っていく。
その背中を見えなくなるまで見つめてから、私は家に入った。
『風美先輩、何してますか?』
平日夜8時に、永那からメッセージが届いた。
『部屋でゴロゴロしてるよー』
『今から会えませんか?先輩に癒やされたいです』
…私に、癒やされたい…とか!キャー!
『いいよ。どこで会う?』
『前の公園はどうですか?』
『わかった!すぐ行くね!』
急いで服を着替えた。
部屋を出ると、お母さんと妹がテレビを見ていた。
「ちょっと、コンビニ行ってくるね」
「えー?今から?お父さん帰ってくるから、お父さんに頼んだら?」
お母さんがチョコレートを口に運びながら言う。
「…大丈夫。自分で選びたいから」
「あ!お姉ちゃん!ついでにアイス買ってきて~」
我が儘で生意気な妹がソファに寝転びながら、私のことを見ずに言った。
「お金、返してよ?」
「んー」
返してもらったことは今までに1回もない。
“お姉ちゃんでしょ”と言われておしまいだ。
姉とか妹とか関係ないよね?
お小遣いの額は同じなんだから…。
なんて思うけど、何も言い返せない自分にイライラする。
ため息をついて玄関に向かうと、ちょうどお父さんが帰ってきた。
「おお、風美」
「おかえりなさい」
「ただいま。どっか行くのか?」
「うん」
「気をつけろよ」
「うん」
お父さんと入れ替わるように、私は靴を履き、お父さんは靴を脱いだ。
小走りにマンションの外廊下を通過して、エレベーターに乗る。
いつもはなんとも思わないのに、心なしかエレベーターが遅く感じた。
公園につくと、もう永那はいた。
「永那」
「風美先輩」
彼女は優しく笑うけど、そこには疲れも垣間見えた。
永那の隣に座る。
「夜なのに、呼び出してごめんなさい」
「全然!…どうしたの?」
「いやあ…なんとなく、先輩に会いたくなって…」
ドキッとする。
「そっか…」
俯いて、下ろしている自分の髪を撫でた。
突然、目の前に永那の顔が来て、その距離があまりに近くて、息をするのも忘れる。
彼女はニシシと笑って、私の膝に頭を乗せていた。
「先輩がおっぱいさわらせてくれたとき」
彼女が話し始めて、ようやく息を吐いた。
少し姿勢を正して、距離を取る。
「めちゃくちゃメンタルやられてて…」
へへへと誤魔化すように笑うけど、永那は本当に苦しそうだった。
「こんな辛いのに、誰も気づいてくれなくて」
そして、作っていた笑顔が消える。
「誰も、そばにいてくれなくて」
こんなに距離は近いのに、彼女はどこか遠くを見つめているみたいだった。
誰のことを、考えているんだろう?
私も、そんなにお金を持ってるわけじゃないけど…。
「え、そんな!悪いですよ!」
「私が誘ったんだよ?お金ないって言われてたんだし…いいの。払わせて?」
「あ…ありがとうございます…」
一緒に電車に乗る。
それだけで、なんだか楽しかった。
遊園地について、永那が驚愕していた。
その驚いた顔が面白くて、私は笑う。
「あ、あの…遊園地って…」
「さっきも言ったでしょ?私が誘ったんだから、私に払わせて」
永那が頷く。
「永那!あれ乗ろうよ!」
永那の手を引いて、ジェットコースターに乗りまくった。
友達と来ても、いつも友達の乗りたい物に合わせていた。
それも楽しかったから良いんだけど、やっぱり、乗りたい物に乗れたほうが楽しいと思った。
永那はなんでも、“いいですよ”って言ってくれて、舞い上がった。
お昼を買うと、永那はペコペコと頭を下げた。
「永那って、そんな感じだったっけ?」
「え?どういうことですか?」
「なんか、ジュースとか奢られたとき“わーい!”って喜んでるタイプじゃなかった?」
「あー…まあ…」
また歯切れの悪い言い方。
「永那…。その、何に悩んでるのかとか、言いたくないんだったら言わなくてもいいけどさ?楽しめるときは楽しまないと損だよ?」
「すみません…」
永那が俯くから、これは重症だ…。
「謝るくらいなら、一緒に楽しんで!ね?」
永那が上目遣いに私を見る。
「ね?」
念押しすると、パッと顔が明るくなった。
…可愛い。
「はい!!」
それからの永那は、私の知ってる永那で。
なんでも私の言うことを聞いてくれるのも嬉しかったけど、永那が楽しそうに“あれも乗ってみたいです!”と笑うのはもっと嬉しかった。
「風美先輩、今日めっちゃくちゃ楽しかったです!ありがとうございました!」
「いいえ、こちらこそ。また遊ぼ?」
「はい!是非!…あ、でも、チケットとか買ってもらうのは申し訳ないので、今度はどっか、お金のかからないところでお願いします」
永那は伏し目がちに、ポリポリと頬を掻いた。
「わかった」
「先輩の家に行ってもいいですよ?」
悪戯を企む子供みたいにニヤリと笑った。
「いいよ?」
「じゃあ、楽しみにしてます」
永那は私を家まで送ってくれた。
「ここが風美先輩の家ですね。覚えたんで、これからいつでも来れますね」
ニシシと笑うから、胸がギュッと締め付けられた。
永那が走って帰っていく。
その背中を見えなくなるまで見つめてから、私は家に入った。
『風美先輩、何してますか?』
平日夜8時に、永那からメッセージが届いた。
『部屋でゴロゴロしてるよー』
『今から会えませんか?先輩に癒やされたいです』
…私に、癒やされたい…とか!キャー!
『いいよ。どこで会う?』
『前の公園はどうですか?』
『わかった!すぐ行くね!』
急いで服を着替えた。
部屋を出ると、お母さんと妹がテレビを見ていた。
「ちょっと、コンビニ行ってくるね」
「えー?今から?お父さん帰ってくるから、お父さんに頼んだら?」
お母さんがチョコレートを口に運びながら言う。
「…大丈夫。自分で選びたいから」
「あ!お姉ちゃん!ついでにアイス買ってきて~」
我が儘で生意気な妹がソファに寝転びながら、私のことを見ずに言った。
「お金、返してよ?」
「んー」
返してもらったことは今までに1回もない。
“お姉ちゃんでしょ”と言われておしまいだ。
姉とか妹とか関係ないよね?
お小遣いの額は同じなんだから…。
なんて思うけど、何も言い返せない自分にイライラする。
ため息をついて玄関に向かうと、ちょうどお父さんが帰ってきた。
「おお、風美」
「おかえりなさい」
「ただいま。どっか行くのか?」
「うん」
「気をつけろよ」
「うん」
お父さんと入れ替わるように、私は靴を履き、お父さんは靴を脱いだ。
小走りにマンションの外廊下を通過して、エレベーターに乗る。
いつもはなんとも思わないのに、心なしかエレベーターが遅く感じた。
公園につくと、もう永那はいた。
「永那」
「風美先輩」
彼女は優しく笑うけど、そこには疲れも垣間見えた。
永那の隣に座る。
「夜なのに、呼び出してごめんなさい」
「全然!…どうしたの?」
「いやあ…なんとなく、先輩に会いたくなって…」
ドキッとする。
「そっか…」
俯いて、下ろしている自分の髪を撫でた。
突然、目の前に永那の顔が来て、その距離があまりに近くて、息をするのも忘れる。
彼女はニシシと笑って、私の膝に頭を乗せていた。
「先輩がおっぱいさわらせてくれたとき」
彼女が話し始めて、ようやく息を吐いた。
少し姿勢を正して、距離を取る。
「めちゃくちゃメンタルやられてて…」
へへへと誤魔化すように笑うけど、永那は本当に苦しそうだった。
「こんな辛いのに、誰も気づいてくれなくて」
そして、作っていた笑顔が消える。
「誰も、そばにいてくれなくて」
こんなに距離は近いのに、彼女はどこか遠くを見つめているみたいだった。
誰のことを、考えているんだろう?
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