いたずらはため息と共に

常森 楽

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6.さんにん

374.まだ?

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「どんな味?」
「ちょっと、しょっぱい。でも…あんまり…味、しないと思う」
「へえ…私は、甘く感じるんだよね」
千陽が顔を赤くしながら頷いた。
「なに、言ってるの…」
穂が胸を上下に動かして、必死に呼吸してるのがわかる。
私達を見ながら、眉間にシワを寄せていた。
「手、洗って…きて…ハァッ」
「はーい」
私は立ち上がって、手についた愛液を眺めながらキッチンに行く。
ちょっともったいないけど、仕方なく石鹸で手を洗った。

千陽が頭を穂の胸に乗せて寝転んでいた。
私はローテーブルに寄りかかるように座って、スマホを出す。
検索してみると、どうやら潮は透明だけじゃないらしい…。
乳白色もあると!!
じゃあ、やっぱりこれは潮吹きかな~。
ぐふふ。うへへ。
涎が垂れて、服の袖で拭う。
「穂~!」
穂のお腹にダイブする。
千陽が鬱陶しそうな顔をして、穂が「うっ」と呻くけど、気にしない。
「穂~!大好き!好き!めっちゃ好き!世界一好き!」
穂は咳払いをして「私も」と答えてくれる。
真面目だなあ、大好きだなあ。
「永那ちゃん…飲み物…ちょうだい…」
「りょーかい!」

キッチンに走って、お茶を取ってくる。
コップに注いで、まずは私が…。
もう一杯入れて、口に含む。
穂に流し込むと、彼女がゴクゴク音を立てて飲んだ。
穂が起き上がって、ブラをつける。
服を下ろすから、その間に私はショーツを拾って、彼女に穿かせた。

窓の外を見ると、雪が降り始めていた。
「寒そうだなー」
「そうだね」
穂が隣で言う。
「今日、泊まっていい?」
千陽が窓を眺めた。
「うん」
静かな時間が、流れる。

夜、誉とテレビを見ていたら、穂の部屋から楽しそうな話し声が聞こえた。
部屋を覗くと、千陽と2人で並んでベッドに寝転んでいた。
「何話してんの?」
ベッドに座って、千陽の持つスマホを覗き見た。
うわ…。
「この人、永那ちゃんと同じ中学の人なんでしょ?すごいね」
「あたし、よくこの人の動画見てるの」
千陽が意味ありげな顔でニヤける。
「メジャーデビュー決定だって」
私は頭を掻いて部屋から出ていく。
千陽め…一体何考えてんだ。
べつに、嫌な思い出じゃない。
でも、中学のときの自分を思い出したいわけでもなくて…。
彼女・・が有名になるたびに、私はSNSも動画も、見なくなっていった。
スマホを見てるとお母さんが不貞腐れるから、見たくても見れないし…まあ、ちょうど良い。

1番長く、セックスした相手。
心音の次の人。
思い入れがないわけじゃない。
連絡しようと思えば連絡できる。
きっと、返事もくれる。
でも…まだ…できない。
いつかは笑って話したい。
でも、今じゃない。

彼女が私から離れて、最初は荒れた。
だから、実は私は彼女に恋をしていたんじゃないかと思った時期もあった。
本当は、私は彼女のことがずっと好きで、気づかないフリをしてきたんじゃないかと。
でも…結局、他の女の子とたくさんセックスしているうちに、彼女への思いが恋ではなかったのだと、はっきりした。
だって、本当に彼女のことが好きだったなら、彼女だけで良かったはずだ。
他の人なんか必要なくて、彼女だけを求めていれば良かった。
今、穂にしているみたいに。

満たされていなかった。
彼女では、満たされなかった。
なぜだろう?
彼女は…何も言ってくれなかったんだ。
怒られたことも、泣かれたこともあったけど…彼女は基本的に、いつも笑顔だった。
私が何も言わせてあげられなかったのかもしれない。
でも…それでも…言ってほしかった。
いろんな気持ちを…言葉に、してほしかった。
後になって叫ぶ・・んじゃなくて…その場で、私にだけ・・・・、言ってほしかった。

「永那、どうした?」
「誉、お前はいい奴だな」
誉の頭をわしゃわしゃ撫でる。
「な、なんだよ。急に」
「私はクズだなあって思ってさ」
「ええっ!?ホントにどうしたの?」
「誉はちゃんと、誠実な人間であれよ?」
「ね、姉ちゃんと、なんかあった?」
「お前の姉ちゃんは最高だよ。本当に」
「意味わかんねえ…」
「自分で言ったことも、やったことも、ちゃんと責任の取れる人間になるんだぞ?」
「せ、責任?」
「そう。ただ優しいだけじゃ、ダメなんだ…。その優しさを与えるとき、同時に傷つけるかもしれないという覚悟を持って与えなければならない」
「漫画か何かの台詞?」
「私の台詞」
「永那がまた変なこと言い始めた…」
真面目に言ってるんだけどなあ…。

思い出したくないことを強制的に思い出させられて、項垂れる。
穂に抱きつきたいけど、その穂が彼女の動画を見ているんだから、近づくこともできない。
穂には話したくないしな。
もう、心音で十分だよ。
これ以上、不安にさせたくない。
今日、穂が泣いたことを思い出す。
…ああ、泣かせたくない。
大事にしたい。
こんなに穂のことを想っているのに、過去の自分が重くのしかかってくる。
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