いたずらはため息と共に

常森 楽

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8.閑話

33.永那 中2 夏《相澤芽衣編》

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…気持ちいい。

服を脱がされ、優しく胸を揉まれて、乳首を舐められる。
指で弄くられて、気持ち良くて、声が出た。
お母さんがいるからと、口を手で押さえられると、なぜかもっと興奮した。
永那の底光りする瞳が、私を捕えて離さない。
恥部に触れられて、舐められて、クリトリスで何度もイかされて…彼女の指がなかに入ってきて、またイかされる。

お母さんの「お昼できたよー!」と階段下から呼ぶ声が聞こえて、急に冷静になった。
永那を見るとニヤニヤ笑ってて、彼女の膝をペシッと叩く。
私は急いで服を着た。
「そいつがね、しつこく、からかってきたんだ」
パンツを穿いている最中、突然永那が言った。
なんの話かわからず、手が止まる。
「最初は無視してたんだけど、“顔が良いだけでモテて、人生勝ち組で羨ましい”って言われて、めっちゃ腹立った」
永那の顔が歪む。
「私が勝ち組!?どこが!どこがだよ…。こんな惨めな思いしてんのに…」
彼女がボリボリと痛そうな音を立てながら頭を掻く。
「だからね…セックスさせてやったの」
永那は、壊れた人形みたいに笑った。

「“女”っぽくさ、猫撫で声っていうの?出してみたりして。…“私ってよく、かっこいいとか言われるけど、男子からもモテてるのかな?…ねえ、君は、私のこと、可愛いって思う?思ってくれる?”って」
似合わない高い声。
似合わない笑顔。
似合わない、手つき。
私の顎を、人差し指の腹で撫で上げて、“女”っぽく言う姿は、全部、永那には全く似合わなかった。
彼女が私の顎を上げるときはいつも、人差し指と親指で挟むようにしている。
その仕草はいつもかっこよくて、安心感があった。
「そしたらさ、あいつ、ビビってんの!いっつも“顔だけ良い奴”とか“ハーレム御殿”とか“射的上手そうだよな、いろんな人落としてるだけに!”とか、わけわかんないこと言ってきてたくせに!ビビって、なんも言えないのな?」
そっと永那を抱きしめる。
「“私のこと、好きなの?だからいつも、絡んでくるの?”って聞いたらさ、鼻息荒くさせながら、ちんこ勃たせてんの」
…聞きたくない。
「キスしたら、体震わせてんの。ガキじゃん、ただのガキじゃん!…そいつ、普段からコンドームみんなに見せびらかしたりしてたから、それ使わせて、セックスした」

「おーい。永那ちゃん、芽衣、お昼できたよー」
ドアの向こうから、お母さんが言う。
「うん、後で食べる」
「はーい」
私が答えると、お母さんが階段を下りていった。
永那は泣いていなかったけど、無表情のまま、どこか一点を見つめていた。
「“顔だけだった?”って聞いたら、首横に振って…“だったらもう、絡んでくんな”って言ったら、頷いてた。それから、そいつに告白されたけど…“誰とも付き合う気ないから”って言って振った。まだ、たまに話しかけられるけど…なんか、めっちゃ照れながら話されるから、笑っちゃうよね」
永那が小さく息を吐く。
「私って、なんなんだろう…。なに、やってんだろう…馬鹿みたいだ。他に、方法があったのかな?」
永那にしかわからない世界。
私には、せいぜい彼女を慰めてあげることしかできない。
「永那が…それが・・・正しいと思ってやったことなら、それで、いいんじゃない?」
フッと彼女が笑う。
「正しいかどうかなんて、全然わからないよ。全部…全部、間違ってる気がする。誰か…教えてよ…」
ギリリと彼女の奥歯が鳴った。
「永那…とりあえず、お昼食べよ?ね?」
彼女が頷くから、私はまた手を引いて、リビングに向かった。

お昼を食べ終えて、2人でベッドに寝転ぶと、永那にキスされた。
…そうだ。小倉心音のときにも私は思った。
永那の汚れを綺麗にしてあげたいって。
だから私は、彼女の体を舐めた。
春休みに“手を大事にして”と言われてから、私が彼女を気持ち良くするときは、舐めるようにしている。
全身、くまなく。
私が下半身を舐め始めると、永那は必ずシャツを着て、起き上がる。
彼女が膝立ちになるから、私が寝転ぶ。
「ハァ…やっぱり、芽衣にされるのは、気持ちいい…」
彼女が腰を揺らす。
自分でクリトリスに手を伸ばして、「んっ」と彼女が果てた。

また2人でベッドに寝転んだ。
「永那?」
「ん?」
「風美ともセックスするの?」
「えー、わかんない」
そこは普通“しない”って答えるでしょ…。
もう、いいけど。
「風美のおっぱい、さわったんでしょ?」
「芽衣は情報通だなあ。怖い怖い」
私が鼻で笑うと、永那は私の胸元に顔を擦りつける。
「どうだった?風美のおっぱいは」
「んー…思ってたより、やわらかくなかった」
「それ、風美に言っちゃダメだよ?風美、いろんな人に言われて傷ついてんだから」
「うい」
彼女の髪を撫でる。

それから永那は、いろんな女の子とセックスするようになった。
まるでわざと自分の汚れを増やすかのように。
汚れを汚れで隠そうとするみたいに。
“わからない”と言った直後に、永那は風美とヤった。

しばらくして、風美が荒れた。
おっとりした性格の風美が荒れるのは、初めて見た。
風美がもう一度告白して永那が振ったとき、彼女は大声で泣いた。
それがちょっとだけ、羨ましかった。
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