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5.時間
303.好きのその先
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あれから3週間経った。
穂と永那は毎日楽しそうだった。
この前、5ヶ月記念日があって、その日は穂が生理でセックスできなかったとか…永那は酷く残念がっていたけど、穂が生理じゃない日は毎日セックスしているらしい。
…生理でも、胸を揉んだり、穂が永那のをさわったりしているみたいだけど。
穂の家でのセックスは、穂に声を出させないようにするのが大変だったとか…穂は顔を真っ赤にして「そんなこと言わなくていいよ」と慌てていた。
デートも、穂が好きな美術館に行ったり、動物園に行ったり、2人でカラオケにも行ったと言っていた。
2人でちゃんと勉強する時間も設けているらしく、あたしが家に行った日以降、穂に助けを求められることはなかった。
誉とオンラインゲームをしながら通話していたら、永那や穂の声が聞こえてきたこともある。
…もちろん、普通に会話している声。
穂と通話できなくなっていたから、寂しさを感じた。
穂に“好き”って送っても、返ってくるのは数時間後か朝。
虚しいから、送らなくなった。
あたしは暇だから、学校帰り、桜の家に遊びに行くようになった。
最初はBLの漫画を読ませてもらっていたけど、奥の方に百合の漫画があるのを発見して、そっちを読むようになった。
「桜」
「な、なに?」
敬語がうざいから、やめさせた。
「3人でって話ないの?」
「と、取り合う話はあっても…3人仲良くなんて、あんまり見たことないよ…。BLならあるけど」
「ふーん」
つまんない。
あたし達のほうが、百合漫画よりよっぽど青春してるんじゃない?
…なんて。
今は、幸せそうな漫画の主人公がなんだか恨めしい。
「ねえ、桜にメイクしてあげる」
「え!?」
彼女の眼鏡を外すと、顔を真っ赤に染めた。
鞄からポーチを出して、ジッと彼女を見た。
桜は全然目を合わせてくれない。
あたしは全然気にしないけど。
目はけっこうパッチリしてるし、肌も白くて綺麗だし、地は良いものを持っているのだから、なんだかいろいろもったいないと思う。
眉毛を整えて、メイクを施す。
「可愛いじゃん」
鏡を見せると、彼女はジッと自分の顔を見つめた。
「まあ…今日はアイロンもないし、髪はやってあげられないけど…」
「す、すごい…」
「明日の朝やってあげるから…それで学校行ってみたら?」
「え!?そ、そんな…恥ずかしすぎる…」
「可愛いのに、もったいないよ」
あたしが彼女を見つめると、彼女は指で前髪を梳いた。
…ああ、穂みたい。
胸がズキリと痛んだ。
「コンタクトはないんだろうから、眼鏡かもだけど」
「…実は、持ってます…る」
まする、って…。
「そうなの?じゃあ、コンタクトつけなよ」
彼女が頷く。
「桜」
「なに?」
「あたしって、穂と永那に放置されてるよね?」
桜の顔が引きつる。
ポリポリ頬を掻いて、目線を上に遣る。
「ま、まあ…今までお2人は制限のあるなかでお付き合いされていたから…溜まっていた鬱憤が爆発してる、みたいな状態…なのでは」
「それはわかってる。わかってるけどさ、放置されすぎて、あたしの鬱憤が溜まってるんだけど」
「そ、そうだね…」
「ハァ」とため息をついて、あたしはポーチを鞄にしまった。
桜に八つ当たりしても仕方ないよね。
翌日。
今週は2人とも穂の家だから、お迎えはない。
それも、寂しくてたまらない。
桜の家に行くと、お母さんが出迎えてくれた。
「佐藤さん、本当にいつもありがとうね」
「いえ」
ペコリと会釈して、桜の部屋に行く。
「お、おはようございます」
桜の妹の菫に挨拶されて「おはよ」と返す。
桜は既にコンタクトをつけていて、緊張気味に座っていた。
彼女にメイクを施して、一緒に登校した。
「も、森山…おはよう」
塩見が話しかけてきて、桜が「おはようございます」と小さく言った。
塩見…絶対桜に惚れてるよね。
穂と永那が登校してきて、穂が目を大きくした。
「森山さん、眼鏡外したんだね」
「は、はい…佐藤さんにメイクもしてもらいました…」
「すごく似合ってる。可愛いね」
…穂、ホント人間タラシだよね。
サラリとそういうことを言うんだから。
今まで友達がいなかったっていうのが嘘みたいに思える。
永那も大概だけど…2人揃ってタラシってやばすぎでしょ。
桜の顔が真っ赤になる。
汗をかいて、手でパタパタと顔を扇いだ。
「千陽、すごいね」
穂が笑うから、あたしは彼女を睨む。
「べつに」
ぷいと前を向いて、授業の準備をした。
「…千陽、私何かした?最近、連絡もないし」
「べつに、何も」
「何かしたなら教えて?お願い」
奥歯を強く噛んで、手を握りしめた。
…何も、してない。
何もしてくれないことが、寂しいの。
なんでわからないの。
「千陽」
穂の手が、あたしの肩に乗る。
あたしは外を睨む。
必死に、溢れそうになる涙を堪えた。
…今の2人に“寂しい”なんて言って、気を使わせたくない。
「千陽…」
明日は、穂の誕生日だし…2人で楽しむんだろうから、それの邪魔もしたくない。
2人の邪魔には、なりたくない。
…でも、やっぱり、愛されたい。
寂しい。
ポタポタと、涙が零れた。
穂と永那は毎日楽しそうだった。
この前、5ヶ月記念日があって、その日は穂が生理でセックスできなかったとか…永那は酷く残念がっていたけど、穂が生理じゃない日は毎日セックスしているらしい。
…生理でも、胸を揉んだり、穂が永那のをさわったりしているみたいだけど。
穂の家でのセックスは、穂に声を出させないようにするのが大変だったとか…穂は顔を真っ赤にして「そんなこと言わなくていいよ」と慌てていた。
デートも、穂が好きな美術館に行ったり、動物園に行ったり、2人でカラオケにも行ったと言っていた。
2人でちゃんと勉強する時間も設けているらしく、あたしが家に行った日以降、穂に助けを求められることはなかった。
誉とオンラインゲームをしながら通話していたら、永那や穂の声が聞こえてきたこともある。
…もちろん、普通に会話している声。
穂と通話できなくなっていたから、寂しさを感じた。
穂に“好き”って送っても、返ってくるのは数時間後か朝。
虚しいから、送らなくなった。
あたしは暇だから、学校帰り、桜の家に遊びに行くようになった。
最初はBLの漫画を読ませてもらっていたけど、奥の方に百合の漫画があるのを発見して、そっちを読むようになった。
「桜」
「な、なに?」
敬語がうざいから、やめさせた。
「3人でって話ないの?」
「と、取り合う話はあっても…3人仲良くなんて、あんまり見たことないよ…。BLならあるけど」
「ふーん」
つまんない。
あたし達のほうが、百合漫画よりよっぽど青春してるんじゃない?
…なんて。
今は、幸せそうな漫画の主人公がなんだか恨めしい。
「ねえ、桜にメイクしてあげる」
「え!?」
彼女の眼鏡を外すと、顔を真っ赤に染めた。
鞄からポーチを出して、ジッと彼女を見た。
桜は全然目を合わせてくれない。
あたしは全然気にしないけど。
目はけっこうパッチリしてるし、肌も白くて綺麗だし、地は良いものを持っているのだから、なんだかいろいろもったいないと思う。
眉毛を整えて、メイクを施す。
「可愛いじゃん」
鏡を見せると、彼女はジッと自分の顔を見つめた。
「まあ…今日はアイロンもないし、髪はやってあげられないけど…」
「す、すごい…」
「明日の朝やってあげるから…それで学校行ってみたら?」
「え!?そ、そんな…恥ずかしすぎる…」
「可愛いのに、もったいないよ」
あたしが彼女を見つめると、彼女は指で前髪を梳いた。
…ああ、穂みたい。
胸がズキリと痛んだ。
「コンタクトはないんだろうから、眼鏡かもだけど」
「…実は、持ってます…る」
まする、って…。
「そうなの?じゃあ、コンタクトつけなよ」
彼女が頷く。
「桜」
「なに?」
「あたしって、穂と永那に放置されてるよね?」
桜の顔が引きつる。
ポリポリ頬を掻いて、目線を上に遣る。
「ま、まあ…今までお2人は制限のあるなかでお付き合いされていたから…溜まっていた鬱憤が爆発してる、みたいな状態…なのでは」
「それはわかってる。わかってるけどさ、放置されすぎて、あたしの鬱憤が溜まってるんだけど」
「そ、そうだね…」
「ハァ」とため息をついて、あたしはポーチを鞄にしまった。
桜に八つ当たりしても仕方ないよね。
翌日。
今週は2人とも穂の家だから、お迎えはない。
それも、寂しくてたまらない。
桜の家に行くと、お母さんが出迎えてくれた。
「佐藤さん、本当にいつもありがとうね」
「いえ」
ペコリと会釈して、桜の部屋に行く。
「お、おはようございます」
桜の妹の菫に挨拶されて「おはよ」と返す。
桜は既にコンタクトをつけていて、緊張気味に座っていた。
彼女にメイクを施して、一緒に登校した。
「も、森山…おはよう」
塩見が話しかけてきて、桜が「おはようございます」と小さく言った。
塩見…絶対桜に惚れてるよね。
穂と永那が登校してきて、穂が目を大きくした。
「森山さん、眼鏡外したんだね」
「は、はい…佐藤さんにメイクもしてもらいました…」
「すごく似合ってる。可愛いね」
…穂、ホント人間タラシだよね。
サラリとそういうことを言うんだから。
今まで友達がいなかったっていうのが嘘みたいに思える。
永那も大概だけど…2人揃ってタラシってやばすぎでしょ。
桜の顔が真っ赤になる。
汗をかいて、手でパタパタと顔を扇いだ。
「千陽、すごいね」
穂が笑うから、あたしは彼女を睨む。
「べつに」
ぷいと前を向いて、授業の準備をした。
「…千陽、私何かした?最近、連絡もないし」
「べつに、何も」
「何かしたなら教えて?お願い」
奥歯を強く噛んで、手を握りしめた。
…何も、してない。
何もしてくれないことが、寂しいの。
なんでわからないの。
「千陽」
穂の手が、あたしの肩に乗る。
あたしは外を睨む。
必死に、溢れそうになる涙を堪えた。
…今の2人に“寂しい”なんて言って、気を使わせたくない。
「千陽…」
明日は、穂の誕生日だし…2人で楽しむんだろうから、それの邪魔もしたくない。
2人の邪魔には、なりたくない。
…でも、やっぱり、愛されたい。
寂しい。
ポタポタと、涙が零れた。
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