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5.時間
300.好きのその先
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「詳しいことわかったら、言うから」と永那が素っ気なく言う。
「うん」
「ホント、ありがとう。感謝してる」
目をそらしながら、ポリポリと頬を掻く。
「べつに、あたしは何もしてないし」
永那は少し首を傾げて、冷めたような目線をあたしに向ける。
でも不思議と冷たくは感じなくて。
ジッと彼女の目を見ていたら、わしゃわしゃと頭を撫でられた。
心臓がドクンッと鳴って、鳥肌が立つ。
「お前、変わったよな」
彼女が左眉を上げて、ニヤリと笑う。
「永那だって」
「だな」
永那が笑うから、あたしも笑う。
「じゃあ、また月曜」
「うん」
永那は走って帰っていった。
あたしはしばらくその場に立ったまま、動けなかった。
嬉しくて、涙が溢れたから。
月曜日の朝、永那の顔がニヤけていた。
「なに?」
睨むと、鼻の下を伸ばす。
「穂と同棲することになったわ」
「は?」
「お母さん、3ヶ月くらい入院することになって、私ひとり暮らしするんだ。そんで、穂に1週間くらい泊まってくれないかな?ってお願いしたら、3ヶ月まるっと一緒にいてくれることになって」
永那が涎を啜る。
「穂のお母さんが、そう言ってくれたらしくて。1週間置きに私の家と穂の家を2人で行き来することになった」
…ずる。
でも…まあ…今までずっと永那は頑張ってきたんだし、ご褒美…なのかな。
羨ましいけど…あたしも2人と一緒にいたいけど…それは、欲張りだよね。
しばらく寂しい思いをするのかなって思ってたら、席替えで、穂の前になった。
穂の隣が桜で、(桜の妄想が捗るのかなあ?)なんてひとりで笑った。
穂と永那が2人で穂の家に行った。
今週は永那の家だから、穂の荷物を取ってから永那の家に行くのだと言っていた。
家に一晩中2人きりって…やばくない?
あたしの家で2人がヤってるとこ聞いてたけど、あれが一晩中と思うと、ゾクッとした。
“夜寝るから、明日は朝遅めね”と永那に言われたけど…ホントにちゃんと寝るのかな。
甚だ疑問だ。
朝、穂が永那と一緒に家に来てくれて、想像以上に嬉しかった。
大好きな2人が迎えに来てくれるんだよ?
2人からめっちゃ特別扱いされてるみたいで、つい浮かれる。
永那に変なことをツッコまれて、イラッとした。
あたしの武器を使えば、永那に勝つなんて余裕だけど。
…と、思っていたら、永那が穂の手作り弁当を持ってきていて、またイライラした。
奪った卵焼き、めっちゃおいしかった。
穂が生徒会で、永那と2人で帰った。
「マジ幸せだよ?」
永那が自慢してくるから無視するのに、永那は、ご飯は何を食べたとか一緒にシャワーを浴びて楽しかったとか、夜中にプリンを食べたとか、勝手に話し続ける。
羨ましくて、モヤモヤする。
でも翌朝、穂が明らかにゲッソリしていてびっくりした。
永那は楽しそうにしてるけど。
2人が相合傘をしていることよりも、穂のゲッソリ具合のほうが気になって仕方なかった。
更衣室で穂の体を見て驚愕した。
少しの間ジッと見つめてしまう。
彼女は何も気づいていないみたいで、重そうな瞼を必死に上げつつも、船を漕ぎながら、服を着ていた。
あたしは周りを見て、誰も彼女を見ていないことを確認する。
「穂」
思わず、強めに彼女の腕を掴んでしまった。
指摘すると、彼女の顔が真っ赤に染まる。
「無理しないで」と言うと、彼女が顔を紅潮させながら上目遣いに私を見る。
それが妙にエロくて、「もう…千陽、来てよ…」と言われた瞬間、“3人でする”映像が思い浮かんだ。
「それは、ちょっと…いきなりすぎて、まだ、心の準備が…」と目をそらすと「ち、違うよ…!普通に!普通に!」と必死に言われた。
…必死に言われても、そんなエロい表情で言われたら、その気になっちゃう。
穂が土下座するみたいに、あたしにノートを見せてとお願いしてきた。
穂のノートが、落書きまみれになっていて、ちょっと笑う。
しばらくモヤモヤする日が続くと思っていたのに、図らずも永那の家に行けることになった。
電車の中で、永那が穂をデートに誘う。
…そうだよ。普通のカップルって、デートのほうが多いはずじゃない?
この2人、異常すぎる。
まあ、永那の事情的に仕方なかったんだろうけど…それを許容できる穂が凄い。
穂って、恋愛に興味なかったみたいだし、理想とか全くなかったんだろうな。
理想が少しでもあったら、永那のやり方に、多少なりとも不満を抱くはず。
本当、穂っておかしい。
家について、2人が洗濯やら掃除やらを始めたから、あたしは畳に座った。
鞄を横に置いたら、ガチャと音が鳴って、鞄をどかす。
…なに、これ。
手錠。
それはわかる。
絶対昨日使ったんじゃん…!
ハロウィンだったし…コスプレとかしたのかな?
穂、口とか手を縛るプレイしたって言ってたし…その一環か。
それであのキスマークの数…。
ああ…やばい…。
下腹部がキュゥッと締まる。
手錠を鞄にしまう。
ブレザーを脱いで、鞄の上に置いた。
気を紛らわすためにスマホを見るけど、内容が何も頭に入ってこない。
「うん」
「ホント、ありがとう。感謝してる」
目をそらしながら、ポリポリと頬を掻く。
「べつに、あたしは何もしてないし」
永那は少し首を傾げて、冷めたような目線をあたしに向ける。
でも不思議と冷たくは感じなくて。
ジッと彼女の目を見ていたら、わしゃわしゃと頭を撫でられた。
心臓がドクンッと鳴って、鳥肌が立つ。
「お前、変わったよな」
彼女が左眉を上げて、ニヤリと笑う。
「永那だって」
「だな」
永那が笑うから、あたしも笑う。
「じゃあ、また月曜」
「うん」
永那は走って帰っていった。
あたしはしばらくその場に立ったまま、動けなかった。
嬉しくて、涙が溢れたから。
月曜日の朝、永那の顔がニヤけていた。
「なに?」
睨むと、鼻の下を伸ばす。
「穂と同棲することになったわ」
「は?」
「お母さん、3ヶ月くらい入院することになって、私ひとり暮らしするんだ。そんで、穂に1週間くらい泊まってくれないかな?ってお願いしたら、3ヶ月まるっと一緒にいてくれることになって」
永那が涎を啜る。
「穂のお母さんが、そう言ってくれたらしくて。1週間置きに私の家と穂の家を2人で行き来することになった」
…ずる。
でも…まあ…今までずっと永那は頑張ってきたんだし、ご褒美…なのかな。
羨ましいけど…あたしも2人と一緒にいたいけど…それは、欲張りだよね。
しばらく寂しい思いをするのかなって思ってたら、席替えで、穂の前になった。
穂の隣が桜で、(桜の妄想が捗るのかなあ?)なんてひとりで笑った。
穂と永那が2人で穂の家に行った。
今週は永那の家だから、穂の荷物を取ってから永那の家に行くのだと言っていた。
家に一晩中2人きりって…やばくない?
あたしの家で2人がヤってるとこ聞いてたけど、あれが一晩中と思うと、ゾクッとした。
“夜寝るから、明日は朝遅めね”と永那に言われたけど…ホントにちゃんと寝るのかな。
甚だ疑問だ。
朝、穂が永那と一緒に家に来てくれて、想像以上に嬉しかった。
大好きな2人が迎えに来てくれるんだよ?
2人からめっちゃ特別扱いされてるみたいで、つい浮かれる。
永那に変なことをツッコまれて、イラッとした。
あたしの武器を使えば、永那に勝つなんて余裕だけど。
…と、思っていたら、永那が穂の手作り弁当を持ってきていて、またイライラした。
奪った卵焼き、めっちゃおいしかった。
穂が生徒会で、永那と2人で帰った。
「マジ幸せだよ?」
永那が自慢してくるから無視するのに、永那は、ご飯は何を食べたとか一緒にシャワーを浴びて楽しかったとか、夜中にプリンを食べたとか、勝手に話し続ける。
羨ましくて、モヤモヤする。
でも翌朝、穂が明らかにゲッソリしていてびっくりした。
永那は楽しそうにしてるけど。
2人が相合傘をしていることよりも、穂のゲッソリ具合のほうが気になって仕方なかった。
更衣室で穂の体を見て驚愕した。
少しの間ジッと見つめてしまう。
彼女は何も気づいていないみたいで、重そうな瞼を必死に上げつつも、船を漕ぎながら、服を着ていた。
あたしは周りを見て、誰も彼女を見ていないことを確認する。
「穂」
思わず、強めに彼女の腕を掴んでしまった。
指摘すると、彼女の顔が真っ赤に染まる。
「無理しないで」と言うと、彼女が顔を紅潮させながら上目遣いに私を見る。
それが妙にエロくて、「もう…千陽、来てよ…」と言われた瞬間、“3人でする”映像が思い浮かんだ。
「それは、ちょっと…いきなりすぎて、まだ、心の準備が…」と目をそらすと「ち、違うよ…!普通に!普通に!」と必死に言われた。
…必死に言われても、そんなエロい表情で言われたら、その気になっちゃう。
穂が土下座するみたいに、あたしにノートを見せてとお願いしてきた。
穂のノートが、落書きまみれになっていて、ちょっと笑う。
しばらくモヤモヤする日が続くと思っていたのに、図らずも永那の家に行けることになった。
電車の中で、永那が穂をデートに誘う。
…そうだよ。普通のカップルって、デートのほうが多いはずじゃない?
この2人、異常すぎる。
まあ、永那の事情的に仕方なかったんだろうけど…それを許容できる穂が凄い。
穂って、恋愛に興味なかったみたいだし、理想とか全くなかったんだろうな。
理想が少しでもあったら、永那のやり方に、多少なりとも不満を抱くはず。
本当、穂っておかしい。
家について、2人が洗濯やら掃除やらを始めたから、あたしは畳に座った。
鞄を横に置いたら、ガチャと音が鳴って、鞄をどかす。
…なに、これ。
手錠。
それはわかる。
絶対昨日使ったんじゃん…!
ハロウィンだったし…コスプレとかしたのかな?
穂、口とか手を縛るプレイしたって言ってたし…その一環か。
それであのキスマークの数…。
ああ…やばい…。
下腹部がキュゥッと締まる。
手錠を鞄にしまう。
ブレザーを脱いで、鞄の上に置いた。
気を紛らわすためにスマホを見るけど、内容が何も頭に入ってこない。
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