いたずらはため息と共に

常森 楽

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5.時間

297.好きのその先

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「冗談言うな」
「言ってないけど」
千陽は私の腰の辺りに乗る。
永那ちゃんは起き上がって、胡座をかく。
チラリと私を流し目で見て、千陽に視線を向けた。
永那ちゃんがニヤリと笑った。
背筋がゾワッとする。
永那ちゃんは膝立ちになって、私にお尻を向けるように、胸の辺りで跨る。
「そんなにさわってほしいなら、私が代わりにさわってやるよ」
2人の様子が見えなくて、永那ちゃんのお尻をペシペシ叩いた。
「や、やめ…っ」
「やめたほうがいい?」
「…やめ、なくて…いい」
「ん」
私に乗る千陽の体重が重くなる。
「これが穂が好きなおっぱい、ね。…でかいし、やわらかいし、良いね。なんで今までさわんなかったんだろ?」
「んっ…」
千陽の声が漏れる。
「え、永那ちゃん…!」
永那ちゃんが振り向いて、私を見下ろす。
「穂、今までこんなんさわってたんだね」
胸がザワザワと騒ぎ出す。

「永那ちゃん…」
奥歯を強く噛んだ。
「永那ちゃん…!」
「ハァ」と彼女がため息をつく。
永那ちゃんが私の上からどくと、千陽が顔を真っ赤に染めていた。
ブラがズレて乳房の下半分が見えている。
「穂、妬いた?」
永那ちゃんがニヤリと笑う。
彼女から、目が、離せない。
「さわってほしい?」
ドクドクと心臓がうるさい。
私が小さく頷くと「後でね」と口元に弧を描いた。

「ハーレムも大変だ」
永那ちゃんが肩を回して、千陽の後ろにしゃがむ。
「穂、見ててね?」
永那ちゃんの細い指先が、千陽のブラを上げる。
満月のように白くて綺麗な、丸くて大きい乳房が露わになった。
ピンク色の突起を、彼女の人差し指が優しく撫でる。
他の4本の指が乳房に窪みを作って、千陽が喘ぐ。
永那ちゃんがゆっくり立ち上がって、私を見た。
「千陽、こっち見て」
永那ちゃんが言う。
千陽の潤んだ瞳が、上を見る。
永那ちゃんの顔が下りていって、彼女達の唇が重なった。
千陽の喉が上下して、永那ちゃんの唾液が流し込まれたのだとすぐ理解できた。
なぜか私も唾を飲む。
千陽が私のお腹に手を置くから、子宮が押されるようで、トロリと蜜が溢れた。

彼女達の唇が離れると、糸が引いた。
千陽は耳まで真っ赤に染めて、顔が蕩けていた。
永那ちゃんが濃艶に笑った。

永那ちゃんはペロリと唇を舐めて、千陽のブラを戻した。
シャツのボタンを留めて、彼女の頭をわしゃわしゃ撫でる。
千陽が下唇を噛みながら、俯く。
また、胸がザワつく。
…これが、嫉妬?ヤキモチ?…どっちに?
ていうか、この感情…私、前にも…。
“先輩でも、恋をすると嫉妬したりするんですね”
なぜか、日住ひずみ君の言葉を思い出した。
…あのときは、深く考えていなかったけれど。

永那ちゃんが自分の首を擦りながら、私の顔のそばに座る。
「手錠までつけられちゃって…穂ってば、放っておくと好きにされちゃうんだから」
優しい笑みを浮かべて、指先で髪を梳かれる。
口付けされて、彼女の唾液が流れ込んでくる。
まるでそれをずっと求めていたかのように、私はゴクリと飲んだ。
彼女が離れようとするから、追いかける。
永那ちゃんはフッと笑って、無情にも離れてしまう。
でもすぐに戻ってきてくれて、2度目の彼女の体液を飲み込む。
「これで2人とも、私のもの?」
両眉を上げて、無邪気に笑った。

「千陽は、私達から離れていかない?」
永那ちゃんが千陽を見る。
千陽はまだ顔を赤く染めたまま、瞳を潤ませたまま、永那ちゃんを睨んだ。
「は?なんで…あたしが、離れるの?」
「…え?」
永那ちゃんが私を見る。
私は首を傾げる。
永那ちゃんも首を傾げる。
「千陽が離れるのが嫌で、3人でシたいって話じゃなかった?」
「離れてほしくない」
…3人でシたいかどうかは置いといて。
千陽がシたいと言うなら叶えたいと思いながら、いざ目の前にすると、怖気づく。
「だから、なんであたしが離れることになってんの?」
「あれ?千陽、そう言わなかった?」
私が言うと、千陽の眉間にシワが寄る。

「“いつか、2人以外の人を見つけるつもり”とは言ったけど、離れるなんて、言ってなくない?」
私はパチパチと瞬きを繰り返す。
「で、でも…“限定品”って」
「それは…あたし達の体の関係の話であって、友達やめるとは言ってないでしょ?」
カーッと顔が熱くなっていく。
「穂…」
永那ちゃんから冷たい視線を浴びせられる。
「ハァ」と2人が同時にため息をついた。
「は、離れないの…?千陽、ずっと一緒にいてくれるの…?」
「…告白?」
千陽がそっぽを向いて、髪をいじる。
「あたしが“寂しいって思わなくなっても、友達でいる”って言ってくれたのは、穂でしょ?…なんで忘れてんの?」
「わ、忘れてないよ…忘れてないから…だから…寂しくて…離れてほしくなくて…そばにいてほしくて…」
視界が一気にボヤけて、涙がボロボロと溢れる。
子供みたいに声を出して泣いた。

永那ちゃんに髪を撫でられる。
千陽が私の上にうつ伏せになって寝転ぶ。
「バカ穂」
ツンツンと千陽に頬を突かれた。

「永那ちゃん…いつから起きてたの?」
「穂が手錠をつけられた辺り。ガチャガチャ音がすんだもん」
「それくらいじゃ、普段の永那ちゃんなら起きないのに」
「まあ、夜も寝てるし、授業中も寝てたから…たくさん寝て、目覚めが良くなったんじゃない?」
「そっか」
「これからは…寝てる私の前でイチャイチャなんかできないからな!」
永那ちゃんが千陽を指差す。
千陽はぷいとそっぽを向いて、私の胸に頬をつけた。
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