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5.時間
257.修学旅行
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木曜日まで同じような日が続いた。
ただ、日に日に永那の行動は過激になっていって、今日は穂を布団に引きずり込もうとしていた。
永那が穂の胸に触れた瞬間、穂が永那を強く押した。
「永那ちゃんのバカ!」
穂が怒って、部屋にこもる。
「穂ー、ごめんってー、もうしないから。出てきて?」
優里は毎回顔を真っ赤にして、今日は顔を突っ伏していた。
永那が助けを求めるかのようにあたしを見るから「バーカ」と言っておいた。
ここ数日は、あたしが話しかけても永那も普通に話してくれるようになったから、また2人で話すようになっていた。
…永那は、3人ですることについて、どう考えているんだろう?
さすがにそれは聞けていない。
でも“とりあえず忘れよう”とか考えていそう。
永那はいつもそうやって、処理できないことを横に置く。
「ただいまー」
誉が帰ってきた。
「おかえりー」
優里が言う。
リビングに来た誉が「姉ちゃんは?」と聞くから、視線を部屋に遣ると、首を傾げながらも頷いていた。
「あたし、今日、泊まろうかな」
「え!?」
「わー!なら、私も泊まりたーい!」
永那がしゃがみ込む。
「みんなばっかずるい…」
「明日デートするんでしょ?」
「デート…するけど…私もお泊まりしたい…」
穂の部屋のドアがわずかに開く。
…ホント、穂は甘いんだから。
しゃがんでいる永那の服をちょこちょこ引っ張って、永那を部屋に招き入れた。
「ひゃ~」
優里が顔を覆う。
30分くらい経って、2人が部屋から出てくる。
永那が帰るから、みんなで玄関までお見送りする。
穂はマンションの下まで行くと言って、永那についていった。
「そういえば誉、告白された相手とはどうなったの?」
「え!?誉告白されたの!?」
「ち、千陽ー、バラすなよ」
「べつにいいでしょ」
誉は大きくため息をつきながら頭をポリポリ掻いた。
「付き合うことになった」
「へえ、良かったね」
「うわー…ついに誉にも恋人が…」
優里が床に転がる。
「私もほしいー!みんな恋してて羨ましいー!私だけじゃーん!」
「千陽も恋人いるの?」
「さあ?」
「なんだよ、“さあ?”って」
「千陽にも相手いるって!言ってたじゃん!私に内緒にして!“誰?”って聞いても“知らない人”としか答えてくれないし!」
「友達以上恋人未満だから。説明が面倒だったから、学校ではああ言っただけ」
「な、なにそれ!?めっちゃ気になる!!」
優里が起き上がって、あたしに抱きつく。
「詳しく!」
「俺も聞きたい!」
「やだ」
2人から文句を言われているうちに、穂が戻ってきた。
「穂ちゃんは知ってる!?」
詰め寄られて、顔を真っ赤にして、あたしに助けを求めてくる。
あたしは口角を上げた後に、椅子に座ってノートを見た。
「わ、私は…」
すぐに“知らない”って言えばいいのに、馬鹿真面目って大変そう。
「知ってるんだー!教えて教えて!」
優里に肩をぶんぶん揺さぶられて、穂の髪が乱れる。
「し、シラナイ」
今更言っても、信じてもらえるわけないのに。
「穂ちゃんまで私に秘密にするんだー!ひどいー!あー!悲しー!」
「あ…ゆ、優里ちゃん…」
誉は楽しそうに笑ってる。
「ほら…千陽が話したくないって言ってるなら、私からは言えないでしょ?」
しゃがみこむ優里の頭を、穂が撫でる。
それだけであたしの胸がトクンと鳴るから嫌になる。
優里が「そうだよね…」と床に転がったまま呟く。
「千陽~教えろ~」
トカゲみたいに床を這いながら、優里があたしの足を掴む。
「言ってもわからないでしょ?」
「その人との出会いとか!」
「友達の友達」
「ほぅ?…どんな人?」
「優しすぎてバカ」
「え!?」
あたしの隣に座った穂が反応する。
優里と誉が穂を見て、穂が慌てて「なんでもない」と俯いて前髪を指で梳く。
「バカって…好きな人なんでしょ?千陽は好きな人にも辛辣だなあ…」
優里が立ち上がって、椅子に座る。
「本当のことだもん」
「ふーん…それくらい好きなんだ」
頬杖をつかれて、ニヤニヤされるのに腹が立って、肘にチョップする。
姿勢が崩れて、優里が顎をテーブルにぶつける。
「痛い!」
「変な顔してたから直してあげたの。感謝して?」
「意味わかんない!ひどい!」
「なんで千陽は、その人のこと好きになったの?」
誉がテーブルに寄りかかりながら聞く。
「優しいから?」
「…綺麗だったから」
「顔!?」
「顔…も、そうかもしれないけど、雰囲気が」
チラリと穂を見ると、顔を赤くしながら、ずっと俯いたままだった。
「へえ…よくわかんねえ」
「ガキ」
誉がしゃがみこむ。
「どうせ俺はガキだよ…」
「あとは…あたしのこと、絶対に大事にしてくれる」
「そんなに良い人なんだあ」
優里が顎をテーブルにつけながらニヤニヤする。
「告白しないの?」
「したよ」
「うぇ!?ホントに!?…だ、だめだったの?」
「うん、家族みたいに思ってるんだって」
優里の顔がくしゃくしゃになって、手を伸ばしてくる。
誉は立ち上がって、またテーブルに寄りかかった。
「ち、千陽~頑張ったんだね、頑張ったんだね…」
おばあちゃんがするみたいに、優里があたしの手を擦る。
永那と穂が付き合ってると知ったときにも、優里は同じようにしてきた。
ただ、日に日に永那の行動は過激になっていって、今日は穂を布団に引きずり込もうとしていた。
永那が穂の胸に触れた瞬間、穂が永那を強く押した。
「永那ちゃんのバカ!」
穂が怒って、部屋にこもる。
「穂ー、ごめんってー、もうしないから。出てきて?」
優里は毎回顔を真っ赤にして、今日は顔を突っ伏していた。
永那が助けを求めるかのようにあたしを見るから「バーカ」と言っておいた。
ここ数日は、あたしが話しかけても永那も普通に話してくれるようになったから、また2人で話すようになっていた。
…永那は、3人ですることについて、どう考えているんだろう?
さすがにそれは聞けていない。
でも“とりあえず忘れよう”とか考えていそう。
永那はいつもそうやって、処理できないことを横に置く。
「ただいまー」
誉が帰ってきた。
「おかえりー」
優里が言う。
リビングに来た誉が「姉ちゃんは?」と聞くから、視線を部屋に遣ると、首を傾げながらも頷いていた。
「あたし、今日、泊まろうかな」
「え!?」
「わー!なら、私も泊まりたーい!」
永那がしゃがみ込む。
「みんなばっかずるい…」
「明日デートするんでしょ?」
「デート…するけど…私もお泊まりしたい…」
穂の部屋のドアがわずかに開く。
…ホント、穂は甘いんだから。
しゃがんでいる永那の服をちょこちょこ引っ張って、永那を部屋に招き入れた。
「ひゃ~」
優里が顔を覆う。
30分くらい経って、2人が部屋から出てくる。
永那が帰るから、みんなで玄関までお見送りする。
穂はマンションの下まで行くと言って、永那についていった。
「そういえば誉、告白された相手とはどうなったの?」
「え!?誉告白されたの!?」
「ち、千陽ー、バラすなよ」
「べつにいいでしょ」
誉は大きくため息をつきながら頭をポリポリ掻いた。
「付き合うことになった」
「へえ、良かったね」
「うわー…ついに誉にも恋人が…」
優里が床に転がる。
「私もほしいー!みんな恋してて羨ましいー!私だけじゃーん!」
「千陽も恋人いるの?」
「さあ?」
「なんだよ、“さあ?”って」
「千陽にも相手いるって!言ってたじゃん!私に内緒にして!“誰?”って聞いても“知らない人”としか答えてくれないし!」
「友達以上恋人未満だから。説明が面倒だったから、学校ではああ言っただけ」
「な、なにそれ!?めっちゃ気になる!!」
優里が起き上がって、あたしに抱きつく。
「詳しく!」
「俺も聞きたい!」
「やだ」
2人から文句を言われているうちに、穂が戻ってきた。
「穂ちゃんは知ってる!?」
詰め寄られて、顔を真っ赤にして、あたしに助けを求めてくる。
あたしは口角を上げた後に、椅子に座ってノートを見た。
「わ、私は…」
すぐに“知らない”って言えばいいのに、馬鹿真面目って大変そう。
「知ってるんだー!教えて教えて!」
優里に肩をぶんぶん揺さぶられて、穂の髪が乱れる。
「し、シラナイ」
今更言っても、信じてもらえるわけないのに。
「穂ちゃんまで私に秘密にするんだー!ひどいー!あー!悲しー!」
「あ…ゆ、優里ちゃん…」
誉は楽しそうに笑ってる。
「ほら…千陽が話したくないって言ってるなら、私からは言えないでしょ?」
しゃがみこむ優里の頭を、穂が撫でる。
それだけであたしの胸がトクンと鳴るから嫌になる。
優里が「そうだよね…」と床に転がったまま呟く。
「千陽~教えろ~」
トカゲみたいに床を這いながら、優里があたしの足を掴む。
「言ってもわからないでしょ?」
「その人との出会いとか!」
「友達の友達」
「ほぅ?…どんな人?」
「優しすぎてバカ」
「え!?」
あたしの隣に座った穂が反応する。
優里と誉が穂を見て、穂が慌てて「なんでもない」と俯いて前髪を指で梳く。
「バカって…好きな人なんでしょ?千陽は好きな人にも辛辣だなあ…」
優里が立ち上がって、椅子に座る。
「本当のことだもん」
「ふーん…それくらい好きなんだ」
頬杖をつかれて、ニヤニヤされるのに腹が立って、肘にチョップする。
姿勢が崩れて、優里が顎をテーブルにぶつける。
「痛い!」
「変な顔してたから直してあげたの。感謝して?」
「意味わかんない!ひどい!」
「なんで千陽は、その人のこと好きになったの?」
誉がテーブルに寄りかかりながら聞く。
「優しいから?」
「…綺麗だったから」
「顔!?」
「顔…も、そうかもしれないけど、雰囲気が」
チラリと穂を見ると、顔を赤くしながら、ずっと俯いたままだった。
「へえ…よくわかんねえ」
「ガキ」
誉がしゃがみこむ。
「どうせ俺はガキだよ…」
「あとは…あたしのこと、絶対に大事にしてくれる」
「そんなに良い人なんだあ」
優里が顎をテーブルにつけながらニヤニヤする。
「告白しないの?」
「したよ」
「うぇ!?ホントに!?…だ、だめだったの?」
「うん、家族みたいに思ってるんだって」
優里の顔がくしゃくしゃになって、手を伸ばしてくる。
誉は立ち上がって、またテーブルに寄りかかった。
「ち、千陽~頑張ったんだね、頑張ったんだね…」
おばあちゃんがするみたいに、優里があたしの手を擦る。
永那と穂が付き合ってると知ったときにも、優里は同じようにしてきた。
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