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4.踏み込む
231.先輩
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「ねえ、あなた、瑠那先輩の妹だよね?」
学校で、先輩に話しかけられた。
「はい…」
その人はニコリと笑って「ちょっと話したいこと、あるんだけど」と言った。
空き教室に2人で入る。
「私のことは、心音って呼んでね、永那」
馴れ馴れしい言い方に、少しイラッとした。
「先輩から聞いた」
「何を、ですか?」
「お母さん、大変なんだってね。…仕事もしないで、寝てばかりで…お金がないって、先輩、困ってた」
…そんなこと、他人に軽々しく言うなよ。
「ねえ…バイトしない?」
眉間にシワが寄る。
「私の言うこと聞いてくれたら、1万円、あげる」
「何、すればいいんですか?」
「キスして」
「…は?」
「キスしてくれたら、1万円、あげる」
言っている意味が、わからなかった。
「できない?」
ポケットから1万円を出して、人差し指と中指で挟んだ。
心臓がドクドクとうるさく鳴る。
「私、瑠那先輩が好きなの。でも、先輩にはこんなこと言えないし…普通には受け取ってくれないし…これなら、先輩の助けになるかなって。どう?」
1万円なんて、私は手にしたこともなかった。
ゴクリと唾を飲んで「どうすれば、いいんですか?」と聞いた。
自分の声が、震えていた。
先輩は自分の唇を指差して「つけるだけ」と微笑む。
私は彼女に近づいて、唇と唇を重ねた。
離れて、俯くと「可愛い」と言われた。
「じゃあ、これ…」
1万円を差し出されて、受け取った。
「瑠那先輩によろしくね」
しばらく1万円を眺めて、チャイムが鳴ったから、ポケットに突っ込んで、走って教室に戻った。
それから、先輩の要求はエスカレートしていった。
私は何も考えず、要求に応えた。
いつもの教室に入って、先輩を壁に押し付ける。
彼女のシャツのボタンを片手で外していく。
太ももを撫でて、ショーツに触れる。
先輩に教え込まれたこと…半年も経てば、いろんなことが自分でできるようになった。
唇を重ねて、舌を絡ませる。
「永那、上手」
頭を撫でられても、特に感情は動かなかった。
「ねえ、今度、家でシない?」
そう言われれば、頷いた。
「今、塾終わったんだけど、来てよ」
そう連絡があれば、駆けつけた。
先輩に初めて私のをさわられたり舐められたりしたときは、さすがに鳥肌が立ったけど、すぐに慣れた。
「あんた、何してんの?」
お姉ちゃんが言った。
「何って?」
「夜、どっか行ったり…お母さんに、プレゼント買ってあげたり…どこからそんな金…」
「お姉ちゃんには、関係ないじゃん」
「ふざけんなっ」
胸ぐらを掴まれた。
「私がどんだけ苦労してると思ってんの。そんな金あるなら生活費出せよ」
「お母さん放置してるのは誰だよ…自分で離婚届書かせたくせに」
頬を引っ叩かれる。
「…携帯代くらいは、自分で出すから」
「あっそ」
お姉ちゃんは部屋の襖を勢いよく閉めた。
いつも通り、先輩から呼び出されたある日。
いつものように彼女に偽りの愛をあげた。
「永那…ごめん…今日、お金、持ってくるの忘れた」
眉間にシワを寄せた。
「は?…じゃあ、なんで今日ヤらせたんだよ」
「ごめんて。次、持ってくるから」
「絶対だからな?」
先輩が俯く。
次に呼び出されたとき、彼女がお金をわたしてくれて、ホッとした。
「永那」
「なに?」
「私の名前、呼んで」
「心音」
「ちゃんと、私の名前呼びながら、セックスして」
意味がわからなかったけど、言う通りにした。
彼女がいつもより感じていて、不思議と私も興奮した。
その後、彼女がお金を忘れる日が増えた。
千陽は学校中で良くも悪くも有名だった。
“便器に顔を突っ込まれていたのを見た”とクラスメイトから聞いたときは、引いた。
先輩から呼び出されて、事を終えた後、吐いている千陽を見つけた。
だからなんとなく、声をかけた。
ストーカーが怖いと言うから、朝と帰りの送り迎えをした。
学年が上がって、先輩は卒業したし、学校での自由度は増した。
早朝、先輩に呼び出されて朝からセックスした。
千陽にキスマークを指摘されて、お金のこともあって、私の我慢は限界に達した。
お姉ちゃんの高校に走って向かいながら、スマホで先輩に連絡する。
校門で先輩が立って待っていたから、見た瞬間に怒鳴った。
「お前、ふざけんなよ!」
胸ぐらを掴むと、彼女が怯えた瞳を私に向けた。
「お、おい…どうした…」
教師が声をかけてきた。
先輩に手を掴まれて、人の少ないところに連れて行かれる。
「なに?」
「“なに?”じゃねえよ。これ、何?どういうこと?こういうのは嫌だって言っただろ?」
彼女が俯く。
「金だって、最近何度も忘れてるよね?わざと?なんなの?」
「…好きなの」
「は?」
「永那が、好きなの」
怒りが沸騰しそうになる。
「意味わかんねえよ」
「本当の彼女に、なりたい」
「…あり得ない。金、払えよ」
彼女の瞳から涙が零れ落ちる。
学校で、先輩に話しかけられた。
「はい…」
その人はニコリと笑って「ちょっと話したいこと、あるんだけど」と言った。
空き教室に2人で入る。
「私のことは、心音って呼んでね、永那」
馴れ馴れしい言い方に、少しイラッとした。
「先輩から聞いた」
「何を、ですか?」
「お母さん、大変なんだってね。…仕事もしないで、寝てばかりで…お金がないって、先輩、困ってた」
…そんなこと、他人に軽々しく言うなよ。
「ねえ…バイトしない?」
眉間にシワが寄る。
「私の言うこと聞いてくれたら、1万円、あげる」
「何、すればいいんですか?」
「キスして」
「…は?」
「キスしてくれたら、1万円、あげる」
言っている意味が、わからなかった。
「できない?」
ポケットから1万円を出して、人差し指と中指で挟んだ。
心臓がドクドクとうるさく鳴る。
「私、瑠那先輩が好きなの。でも、先輩にはこんなこと言えないし…普通には受け取ってくれないし…これなら、先輩の助けになるかなって。どう?」
1万円なんて、私は手にしたこともなかった。
ゴクリと唾を飲んで「どうすれば、いいんですか?」と聞いた。
自分の声が、震えていた。
先輩は自分の唇を指差して「つけるだけ」と微笑む。
私は彼女に近づいて、唇と唇を重ねた。
離れて、俯くと「可愛い」と言われた。
「じゃあ、これ…」
1万円を差し出されて、受け取った。
「瑠那先輩によろしくね」
しばらく1万円を眺めて、チャイムが鳴ったから、ポケットに突っ込んで、走って教室に戻った。
それから、先輩の要求はエスカレートしていった。
私は何も考えず、要求に応えた。
いつもの教室に入って、先輩を壁に押し付ける。
彼女のシャツのボタンを片手で外していく。
太ももを撫でて、ショーツに触れる。
先輩に教え込まれたこと…半年も経てば、いろんなことが自分でできるようになった。
唇を重ねて、舌を絡ませる。
「永那、上手」
頭を撫でられても、特に感情は動かなかった。
「ねえ、今度、家でシない?」
そう言われれば、頷いた。
「今、塾終わったんだけど、来てよ」
そう連絡があれば、駆けつけた。
先輩に初めて私のをさわられたり舐められたりしたときは、さすがに鳥肌が立ったけど、すぐに慣れた。
「あんた、何してんの?」
お姉ちゃんが言った。
「何って?」
「夜、どっか行ったり…お母さんに、プレゼント買ってあげたり…どこからそんな金…」
「お姉ちゃんには、関係ないじゃん」
「ふざけんなっ」
胸ぐらを掴まれた。
「私がどんだけ苦労してると思ってんの。そんな金あるなら生活費出せよ」
「お母さん放置してるのは誰だよ…自分で離婚届書かせたくせに」
頬を引っ叩かれる。
「…携帯代くらいは、自分で出すから」
「あっそ」
お姉ちゃんは部屋の襖を勢いよく閉めた。
いつも通り、先輩から呼び出されたある日。
いつものように彼女に偽りの愛をあげた。
「永那…ごめん…今日、お金、持ってくるの忘れた」
眉間にシワを寄せた。
「は?…じゃあ、なんで今日ヤらせたんだよ」
「ごめんて。次、持ってくるから」
「絶対だからな?」
先輩が俯く。
次に呼び出されたとき、彼女がお金をわたしてくれて、ホッとした。
「永那」
「なに?」
「私の名前、呼んで」
「心音」
「ちゃんと、私の名前呼びながら、セックスして」
意味がわからなかったけど、言う通りにした。
彼女がいつもより感じていて、不思議と私も興奮した。
その後、彼女がお金を忘れる日が増えた。
千陽は学校中で良くも悪くも有名だった。
“便器に顔を突っ込まれていたのを見た”とクラスメイトから聞いたときは、引いた。
先輩から呼び出されて、事を終えた後、吐いている千陽を見つけた。
だからなんとなく、声をかけた。
ストーカーが怖いと言うから、朝と帰りの送り迎えをした。
学年が上がって、先輩は卒業したし、学校での自由度は増した。
早朝、先輩に呼び出されて朝からセックスした。
千陽にキスマークを指摘されて、お金のこともあって、私の我慢は限界に達した。
お姉ちゃんの高校に走って向かいながら、スマホで先輩に連絡する。
校門で先輩が立って待っていたから、見た瞬間に怒鳴った。
「お前、ふざけんなよ!」
胸ぐらを掴むと、彼女が怯えた瞳を私に向けた。
「お、おい…どうした…」
教師が声をかけてきた。
先輩に手を掴まれて、人の少ないところに連れて行かれる。
「なに?」
「“なに?”じゃねえよ。これ、何?どういうこと?こういうのは嫌だって言っただろ?」
彼女が俯く。
「金だって、最近何度も忘れてるよね?わざと?なんなの?」
「…好きなの」
「は?」
「永那が、好きなの」
怒りが沸騰しそうになる。
「意味わかんねえよ」
「本当の彼女に、なりたい」
「…あり得ない。金、払えよ」
彼女の瞳から涙が零れ落ちる。
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