いたずらはため息と共に

常森 楽

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4.踏み込む

219.疲労

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永那がキッチンで手を洗う。
「穂に飲み物持っていきたいんだけど」と言われて「水しかない」と答える。
コーヒーもあるけど、絶対コーヒーじゃないことはわかる。
「いいよ、水で」
あたしは立ち上がって、コップを取って、ウォーターサーバーの水を入れる。
永那がコップを受け取って、ゴクゴクと飲み干す。
「もう一杯!」
「自分でやって?」
あたしは2階に行く。
「あ!おい!待て!」

ドアを開けると、穂の顔が真っ赤に染まった。
「可愛い」
あたしはベッドに座って、彼女の汗ばんだ髪を撫でる。
「ち、千陽…ごめん、ね…汗、たくさん…」
「いいよ。…ねえ、しよ?」
穂の目が大きくなる。
あたしが顔を近づけると、布団に隠れていた唇を出してくれる。
そっと触れるだけのキスをする。
あったかい。
少し離れて、もう一度押し付ける。
舌を出すと、彼女が受け入れてくれる。
絡めると、永那の味がする気がした。
永那の味なんて、知らないけど。

視線を感じて、彼女から離れる。
2人の間に橋がかかって、プツリと切れる。
永那がドアの枠に寄りかかりながらあたし達を見ていた。
「なに?」
永那を睨む。
「いーえ、仲が良さそうでなによりです」
永那もベッドに座って、コップの水を口に含んだ。
四つん這いになって穂に近づいて、それを彼女の口に流し込む。
…エロい。
もう一度水を口に含んで、また穂の中に流し込む。
穂の喉が上下に動く。

「あ、千陽」
「なに?」
「玩具、あるんだって?」
永那がニヤニヤしながら言ってくる。
「だからなに?」
「見、せ、て♡」
…うざい。
「やだ」
「は?なんで?」
「あたし、穂のだから」
布団に包まってる穂の上にダイブする。
「うっ…」と、うめき声が聞こえたけど、気にしない。
「穂、しよ?」
「おいおい、もうしたでしょ?」
「永那、うるさい。散々ヤったんだからいいでしょ。心狭い」
永那が「うわー、傷つく」とベッドに倒れる。
…本当に狭かったら、こんなこと、許してくれるはずないけど。

あたしは穂に口付けする。
「千陽」
「なに?」
何も身に着けていないことがわかる、袖もなにもない腕が、伸びてくる。
目元を撫でられる。
「泣いた?」
ドキッとする。
すぐにあたしはフッと笑う。
「映画見てたの」
穂がパチパチと瞬きする。
「そっか。千陽、映画で泣くんだ。意外。なに見てたの?」
質問に答えたくないから、キスした。
彼女の手を掴んで、恋人繋ぎする。
舌を出すと「んっ」と彼女の声が漏れる。
クチュクチュと、音が鳴る。
唾液を交換する。

離れて、口を開く。
「本当は、シてもらいたいけど…できないよね?」
穂は頬をピンク色にして「ご、ごめんね」と目をそらす。
「ちょっと…疲れてて、体が、動かなくて」
「いいよ」
もう一度、彼女と触れ合う。
「穂、好き」
彼女が微笑んでくれる。
「私も、千陽が好きだよ」
嬉しくて、布団越しに彼女をギュッと抱きしめる。
彼女の汗の匂いがふわりと香る。
今日は、このベッドで、あたし、寝るんだ。
顔を上げて、チラリと永那を見た。
まだ寝転がってる。
眠いのか、目を閉じてウトウトしているみたいだった。
つい、口元が緩む。

「わっ!…千陽!?」
勢いよく布団に潜る。
そして、裸の穂を抱きしめた。
ちょっと肌がベタついてる。
「千陽!?…千陽」
どうすればいいかわからないらしく、穂は抵抗しない。
裸の穂を抱きしめちゃだめとは言われてないもんね。
「千陽ー、なにしてんだよー」
永那がのそのそ、四つん這いになってこっちに来る。
初めて見た、初めて触れた、生まれたままの姿の、穂。
あったかい。
…胸は、さわったこと、あったかな。
「いつか一緒にお風呂に入ったら見れるんだし、いいでしょ」
「はー?入るなよ」
「修学旅行、あるでしょ」
沈黙がおりる。

「…修学旅行…行けるかなあ」
永那があたし達の上に倒れ込む。
「行けないの?」
中学のときの修学旅行は、来ていたけど。
穂は、何も言わない。
永那に、どんな事情があるのか、あたしはまだ知らない。
「わかんない。…けど、行きたい」
永那はあたしと穂をまとめて抱きしめる。
…ああ、幸せ。
裸の穂と、こんなに密着していいの…?
一応、少しは遠慮してたのに。
穂の足の間に、足をねじ込む。
彼女の頬がピンク色に染まる。
…ワンピースにしといて良かった。
彼女のあたたかい股が、直に太ももに当たる。
アンダーヘア…剃ってるのかな。
「…行けるように、しよう?」
穂が言う。
「どうやって?」
「先生とか、お母さんに、ちゃんと話そう?…お姉さんにも」
永那が深くため息をつく。
「私も、できることは、手伝うから」
「…わかった」
きっと、永那のことは穂に任せておけばいい。
あたしにできることがあるなら、2人から言ってくれると、信じてる。
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