いたずらはため息と共に

常森 楽

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3.成長

167.夏が終わる

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「キスと、胸は、もういい。諦めた」
私は唾をゴクリと飲んだ。
「ど、どういうこと?」
「だから、それは仕方ないってこと。私はあいつの寂しさを一生埋めてあげられないし、あいつが私への気持ちを少しでもなくせるなら、もう、許すしかないよ」
私は未だによく理解できなくて、眉間にシワを寄せる。
「あいつは…ひとりぼっちだから。みんなから顔でしか見てもらえなくて…親からも、顔でしか見られなくて、道具みたいに扱われて…。心を許せる人が、いないんだよ、たぶん」
永那ちゃんが視線を手元に落とす。
「私は…あいつから本気で迫られたら、私も…あいつを道具みたいに扱っちゃうかもしれない。それが、怖い」
大切にしたいという、永那ちゃんの気持ちが、痛いほど伝わってくる。
「穂は、絶対に千陽を傷つけないでしょ?」
彼女は悲しそうに、笑った。
「千陽には、泣いてほしくないんだ」
「でも…」
私は彼女の頬を包む。
額を合わせて、目を閉じると、涙が零れた。
「それじゃあ、永那ちゃんが、傷ついちゃう」
そっと口付けする。

「大丈夫だよ」
永那ちゃんが抱きしめてくれる。
頬に伝った涙を指で拭ってくれた。
「永那ちゃんの大丈夫は」
「嫌いなんでしょ?…でも本当だよ?」
「そうなの?」
息遣いがわかるほどの距離で、見つめ合う。
「うん、大丈夫にするためにプレゼント・・・・・を買ったんだから」
私は少し離れて、瞬きを繰り返す。
永那ちゃんがニヤリと笑って、箱からそれを出す。
私は透明の袋に入ったそれを見ても、何なのかわからず、首を傾げる。
「穂?」
「なに?」
「キスと、胸以外は、ダメだからね?」
確認するように、念を押すように、永那ちゃんは上目遣いに私を見た。
だから私は頷く。
「“気をつけて”って、“もう嫌だよ?”って言ったけど、なんとなく、無理なのは、わかってた」
「そ、そうなの?」
「だって、二度あることは三度あるって言うでしょ?1回キスされて、2回目もあった。しかも2回目はお泊まりときた…」
永那ちゃんは袋を開ける。

「穂が、千陽の胸をさわるのはいい。…でも千陽が、穂のをさわったり見たりしたら、ダメ」
永那ちゃんはそれ・・を床に置いて、私に向き合うように座る。
自然と背筋が伸びて、私はまっすぐ彼女を見た。
彼女の手が伸びて、私のTシャツの裾を持つ。
「服の上からさわられるのは…嫌だけど、それでも、されちゃったら仕方ないと思う」
裾を捲りあげられるから、脱がされるのだとわかって、私は手をあげた。
キャミソールごと脱がされて、上半身が下着姿になる。
エアコンの風に当たって、鳥肌が立った。
パンツのボタンを外され、チャックを下ろされ、ウエスト部分に指をかけられる。
目が合って、少し睨むように見られたから、彼女の意図する通りに動くしかなくなる。
お尻を浮かせると、パンツを下ろされる。
私は正座の姿勢から、足を伸ばすように座った。
スルスルとパンツを脱がされ、上下ともに下着姿になった。

永那ちゃんが私の体を舐め回すように見て、唇をペロリと舐めた。
恥ずかしくて、俯く。
彼女の手が、私の背後に回る。
ブラのホックを外されて、そのまま取られる。
露わになった胸を見ないように、目を閉じる。
あたたかい手に優しく包み込まれ、揉まれた。
「だ、だめだよ…」
「わかってるよ」
すぐに離れて、ショーツのゴムに指をかけられる。
私が動かないからか、腰の骨をポンポンと叩かれた。
私はため息をついて、腰を浮かした。
スルッとショーツを脱がされる。
体を隠すように体育座りになって、小さく丸まる。
「立って?」
項垂れて、腕のなかに顔を隠す。
…散々見られてきたけど、こんなにも気分が乗っていないなか見られるのは、全然違う。
「穂?…お仕置きって言ったよね?…穂は悪いことをしたんだから、私の言うこと、聞くよね?」
腕に額を擦りつけて、抵抗する。
「言うこと、聞くよね?…早く立って」
低い声で言われて、私は渋々立ち上がる。

永那ちゃんがそれ・・を広げる。
広げられて、なんとなく察しはついた。
…でも、どうやって着けるの?
「足上げて?」
永那ちゃんがしゃがむから、彼女の肩を掴んで、片足ずつ上げる。
恥ずかしくて、全身が火照る。
足に紐を通される。
永那ちゃんはそれを持ったまま立ち上がって、腰の辺りで一度紐を捻った。
紐が交差するように肩にかけられて、胸の位置を調整される。
「なに、これ」
「マイクロビキニ」
やたら面積の小さい、ただ、大事なところだけを隠す布。
永那ちゃんが、私の体を、上から下までじっくり見る。
ブラのように、乳房を支える物は何もない。
ショーツのように、お尻やVラインを隠す物は、ほとんどない。
ただ大事なところを隠すだけの布。
下着姿よりも、なんなら裸よりも…布で隠されているほうが、恥ずかしく思えてくる。

「千陽と会うときは、必ずこれを身に着けるんだよ?」
永那ちゃんは、怖いほど爽やかな笑顔を作る。
スッと真顔になって、顔が近づく。
耳元に口が近づいて、彼女の息がかかった。
「こんな恥ずかしい姿なら、千陽には見せられないよね?」
心臓が駆けるように速くなる。
「絶対、ここなんか、さわらせちゃ、ダメだからね」
彼女はそう言って、勝手に期待していた私の蕾に触れた。
肩がピクッと上がる。
「さわらせたら…もう、千陽とは関わらせない。千陽が泣いても、そのときはもう、知らない」
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