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3.成長
151.海とか祭りとか
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紺色に白の縦ストライプが入った甚平を着た弟が部屋から出てくる。
バンッと勢いよくドアを開けて、いかにも“登場”といった格好をする。
「おー!かっこいー!」
優里が言う。
永那は変わらず両手で顔を覆っている。
…泣いてる?
「だろー?」
しばらくして、空井さんが部屋から出てくる。
白地の浴衣に、真紅の縦ストライプが入っている。
そこに大きめのシンプルな椿がいくつか散りばめられている。
椿も白と真紅で描かれていて、帯も色が揃ってるから、大人っぽくて落ち着きがあるのに、華やかな印象もある。
少し、紫色も混ざっているのかな。
だから大人っぽさがあるのかも。
そして髪を簡単にお団子にしていた。
「わー!穂ちゃん綺麗」
永那が指の間にすき間を作っている。
「そ、そうかな。…永那ちゃん、どうかな?」
空井さんは手を広げて、永那に見えるようにする。
永那の体がどんどん丸まっていく。
「うぅ…」
スンスンと鼻を啜る音が聞こえる。
「永那ちゃん?」
空井さんがしゃがんで、永那の手をどかす。
やっぱり永那は泣いていて、鼻水まで垂らしている。
…なにその顔。
空井さんは何枚かティッシュを取って、永那の顔を拭く。
「えー!?なんで永那、泣いてんの!?」
「え!?永那泣いてるの!?」
弟と優里が驚愕して体を乗り出している。
あたしは最後のクッキーを食べながら、頬杖をついて様子を眺めてる。
空井さんが永那の頭を撫でる。
「穂は…穂は…誉が言わなかったら、私に見せてくれなかったんだ~」
子供みたいに泣き始める。
泣く姿も、初めて見る。
「そんなわけないでしょ。永那ちゃんに見せたくて買ったのに」
「じゃあなんで黙ってるんだよ~」
「喜ばせたかったから」
…ああ、もう。なんでそんな綺麗な笑みを浮かべるの。
そんな笑みを向けられたら、そりゃあ永那も惚れるよね。
「永那、泣きすぎだろー」
弟がおかしそうに笑ってる。
優里はアワアワしてて、手を宙に彷徨わせている。
「ほら、起きて?ちゃんと見て?」
思わずため息が出る。
空井さんが泣いている永那の手を引いて、永那が起き上がる。
「どう?」
「綺麗」
まだ永那の目からはポタポタと涙が零れ落ちている。
フフッと空井さんが笑って、かがんで、永那の目元を指で拭う。
そのまま永那が両手を伸ばして、彼女の頬を包む。
唇と唇が触れ合う。
あたしは目を閉じた。
深呼吸してから、瞼を上げる。
2人は見つめ合って笑っていた。
…綺麗。
優里と弟を見ると、2人とも顔を真っ赤にして固まっていた。
汚れると嫌だからと、空井さんはすぐに着替えていた。
弟にも着替えるように言っていたけど、弟は「やだー」と言って、ゲームの準備をしていた。
空井さんと優里がご飯を作ってくれて、あたし達はその間、ゲームで遊んだ。
チラリと永那を見ると、涙は止まっていたし楽しそうにしていたけど、やっぱりどこか悲しげだった。
ご飯を食べた後は、空井さんが永那を寝かせる。
さすがにあたしに見られて恥ずかしい思いをしたからか、優里には見られないように、ドアを閉めていた。
優里があたしのそばに寄ってくる。
「ね、ねえ…またかな?」
優里の鼻の穴が少し大きくなって、頬がピンク色になっている。
あたしは首を横に振る。
「生理だからできないんだって」
彼女に耳打ちすると、耳まで真っ赤に染めて「ひゃ~!」と手で顔を隠した。
「でも永那、空井さんのこと抱き枕みたいにして寝てるんだよ?ヤバくない?」
小声で言うと「も、もういいよ~!」なんて、あたしから逃げていった。
あたしは空井さんの部屋のドアのそばに寄る。
もうこうなったら野次馬根性だ。
優里と弟がゲームを始める。
「穂、いつ見せてくれる予定だったの?」
「本当は、月曜日か昨日にでも見せようと思ってたんだけど…」
普通の声量で話してるから、普通に聞こえる。
枕がドア側にあるし、ベッドに寝転がって普通に話したら、そりゃあ聞こえるよね。
テレビのそばの優里達には聞こえていないだろうけど。
「生理になっちゃったし…」
…生理だと、なぜ見せられないのか。
すぐに理由がわかって、あたしは頭を抱える。
永那が暴走してるのを空井さんは引かないのか疑問だったけど、案外空井さんも好んでるのか…。
ちょっと、複雑な気持ち。
あたしは…そういうことをしたことがないし、実際にはよくわからない。
永那に話を合わせるためにネットでいろいろ調べたけど、むしろ嫌悪感が増した感じがした。
「千陽達もいるしね」
永那が言う。
「じゃあさ、月曜くらいには…また見せてくれる?」
「わ、わかんないよ!」
「金曜に、またあの後輩と会うんでしょ?…約束してくれないと、私、本当に頭おかしくなりそうなんだけど?」
金曜…空井さんは生徒会のボランティアがあるから家にはいないと言っていた。
生徒会の後輩に告白されたと言っていたから、会うのだろう。
だから永那も来ないし、あたしも自分の家にいようかと思ったけど、弟に誘われたから来ることにした。
「でも佐藤さん、家に来るんじゃない?」
「そしたら2人でどっか行く?」
来ないから!…来ないから。もう、2人の会話がヤバすぎて、ついてけない。
盗み聞きしてるのはあたしだけど。
顔が熱くなる。
バンッと勢いよくドアを開けて、いかにも“登場”といった格好をする。
「おー!かっこいー!」
優里が言う。
永那は変わらず両手で顔を覆っている。
…泣いてる?
「だろー?」
しばらくして、空井さんが部屋から出てくる。
白地の浴衣に、真紅の縦ストライプが入っている。
そこに大きめのシンプルな椿がいくつか散りばめられている。
椿も白と真紅で描かれていて、帯も色が揃ってるから、大人っぽくて落ち着きがあるのに、華やかな印象もある。
少し、紫色も混ざっているのかな。
だから大人っぽさがあるのかも。
そして髪を簡単にお団子にしていた。
「わー!穂ちゃん綺麗」
永那が指の間にすき間を作っている。
「そ、そうかな。…永那ちゃん、どうかな?」
空井さんは手を広げて、永那に見えるようにする。
永那の体がどんどん丸まっていく。
「うぅ…」
スンスンと鼻を啜る音が聞こえる。
「永那ちゃん?」
空井さんがしゃがんで、永那の手をどかす。
やっぱり永那は泣いていて、鼻水まで垂らしている。
…なにその顔。
空井さんは何枚かティッシュを取って、永那の顔を拭く。
「えー!?なんで永那、泣いてんの!?」
「え!?永那泣いてるの!?」
弟と優里が驚愕して体を乗り出している。
あたしは最後のクッキーを食べながら、頬杖をついて様子を眺めてる。
空井さんが永那の頭を撫でる。
「穂は…穂は…誉が言わなかったら、私に見せてくれなかったんだ~」
子供みたいに泣き始める。
泣く姿も、初めて見る。
「そんなわけないでしょ。永那ちゃんに見せたくて買ったのに」
「じゃあなんで黙ってるんだよ~」
「喜ばせたかったから」
…ああ、もう。なんでそんな綺麗な笑みを浮かべるの。
そんな笑みを向けられたら、そりゃあ永那も惚れるよね。
「永那、泣きすぎだろー」
弟がおかしそうに笑ってる。
優里はアワアワしてて、手を宙に彷徨わせている。
「ほら、起きて?ちゃんと見て?」
思わずため息が出る。
空井さんが泣いている永那の手を引いて、永那が起き上がる。
「どう?」
「綺麗」
まだ永那の目からはポタポタと涙が零れ落ちている。
フフッと空井さんが笑って、かがんで、永那の目元を指で拭う。
そのまま永那が両手を伸ばして、彼女の頬を包む。
唇と唇が触れ合う。
あたしは目を閉じた。
深呼吸してから、瞼を上げる。
2人は見つめ合って笑っていた。
…綺麗。
優里と弟を見ると、2人とも顔を真っ赤にして固まっていた。
汚れると嫌だからと、空井さんはすぐに着替えていた。
弟にも着替えるように言っていたけど、弟は「やだー」と言って、ゲームの準備をしていた。
空井さんと優里がご飯を作ってくれて、あたし達はその間、ゲームで遊んだ。
チラリと永那を見ると、涙は止まっていたし楽しそうにしていたけど、やっぱりどこか悲しげだった。
ご飯を食べた後は、空井さんが永那を寝かせる。
さすがにあたしに見られて恥ずかしい思いをしたからか、優里には見られないように、ドアを閉めていた。
優里があたしのそばに寄ってくる。
「ね、ねえ…またかな?」
優里の鼻の穴が少し大きくなって、頬がピンク色になっている。
あたしは首を横に振る。
「生理だからできないんだって」
彼女に耳打ちすると、耳まで真っ赤に染めて「ひゃ~!」と手で顔を隠した。
「でも永那、空井さんのこと抱き枕みたいにして寝てるんだよ?ヤバくない?」
小声で言うと「も、もういいよ~!」なんて、あたしから逃げていった。
あたしは空井さんの部屋のドアのそばに寄る。
もうこうなったら野次馬根性だ。
優里と弟がゲームを始める。
「穂、いつ見せてくれる予定だったの?」
「本当は、月曜日か昨日にでも見せようと思ってたんだけど…」
普通の声量で話してるから、普通に聞こえる。
枕がドア側にあるし、ベッドに寝転がって普通に話したら、そりゃあ聞こえるよね。
テレビのそばの優里達には聞こえていないだろうけど。
「生理になっちゃったし…」
…生理だと、なぜ見せられないのか。
すぐに理由がわかって、あたしは頭を抱える。
永那が暴走してるのを空井さんは引かないのか疑問だったけど、案外空井さんも好んでるのか…。
ちょっと、複雑な気持ち。
あたしは…そういうことをしたことがないし、実際にはよくわからない。
永那に話を合わせるためにネットでいろいろ調べたけど、むしろ嫌悪感が増した感じがした。
「千陽達もいるしね」
永那が言う。
「じゃあさ、月曜くらいには…また見せてくれる?」
「わ、わかんないよ!」
「金曜に、またあの後輩と会うんでしょ?…約束してくれないと、私、本当に頭おかしくなりそうなんだけど?」
金曜…空井さんは生徒会のボランティアがあるから家にはいないと言っていた。
生徒会の後輩に告白されたと言っていたから、会うのだろう。
だから永那も来ないし、あたしも自分の家にいようかと思ったけど、弟に誘われたから来ることにした。
「でも佐藤さん、家に来るんじゃない?」
「そしたら2人でどっか行く?」
来ないから!…来ないから。もう、2人の会話がヤバすぎて、ついてけない。
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顔が熱くなる。
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