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3.成長
148.海とか祭りとか
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「そんなに気にすること?2人ともたくさんしてるんだから、1回くらいいいじゃん?」
「1回くらいって…」
「永那が広い心で許せばいいだけの話でしょ?」
「お前が言うなよ」
「それに、永那にはダメって言われたけど、空井さんにダメとは言われてない」
「なんだその屁理屈」
「永那がダメなら、空井さんにすればいいじゃない?ってね」
「パンがなければケーキを…じゃないんだから」
…なんで項垂れながらツッコミを入れ続けるのか謎だけど、あたしは面白くて笑う。
「もー!」
頭をボリボリ掻いて、髪が乱れる。
「もう、穂に接近禁止!」
「どうして?」
「お前…!自分がしたこと、反省してないのか!」
「反省反省」
「…絶対してないじゃん」
空井さんと弟が苦笑している。
永那がギロリとあたしを睨む。
永那は立ち上がって、空井さんの頬を両手で包む。
彼女の唇に唇を押し付けてから、チロチロと舐める。
空井さんが顔を真っ赤にして、目をギュッと瞑った。
よくもまあ…こんな、人前でできるもんだわ…と、自分のことを棚に上げて、思う。
2人の顔が離れたのを見てから「あたし、明日も遊びに来るから」と告げた。
「…いいけどさ。もう、穂にもしちゃだめだからね?」
永那の言い方が優しくて…もっと怒るかと思ってたのに、拍子抜けする。
あたしは目をそらして、唇を尖らせる。
「永那ちゃん…そろそろ、帰らないと」
「…うん」
永那と空井さんが至近距離で見つめ合って、永那はため息をつく。
永那と2人で駅に向かう。
「あたしが明日も来るって、イライラしないの?」
「しないよ」
「なんで?前はあんなにイライラしてたのに」
永那が立ち止まって、ニヤリと笑う。
あたしの耳元に口を近づけて言う。
「穂が生理だから、できないんだよ」
永那の息が耳にかかって、くすぐったい。
…あー、もう。こういうところが嫌い。
「永那、そんなんで空井さんに引かれないの?」
「引かれないよ」
見下ろされるように流し目で見られて、胸の痛みを感じる。
これが、どういう痛みなのか、自分でもわからない。
羨ましいような、寂しいような、ときめいているような、ごちゃ混ぜの感情。
「あたしのファーストキス、空井さんになっちゃった」
「自分でやったんだろ?」
「永那との間接キスだもん」
永那が左眉を上げる。
「お前、頭おかしいんじゃないの?」
「かもね」
次の日、永那は空井さんを抱きしめたまま眠った。
最初、空井さんは恥ずかしげにしていたけど、そのうち当たり前みたいに抱かれながら本を読み始めた。
トイレに行くときにチラッと見たら、抱きしめられていることを何も気にしてないみたいな顔をしていたから、永那の前では、いつもそうなんだなってわかって、少し胸が痛む。
自分で自分の傷口に塩を塗っている気分になる。
明日は優里の部活が休みだから、優里も来ることになった。
あたしは弟とゲームをして過ごす。
家で1人で悶々としているよりはマシかな。
お昼もおいしいし。
「友達と遊ばないの?」
「え?…ああ、べつに。いつも約束してるわけじゃないから」
「そうなんだ」
「千陽達と一緒にいたほうが、俺、楽しいし」
なんでそんなに目がキラキラしているのか。
眩しくて見てられない。
「そんなんじゃ、いつか友達いなくなるんじゃないの?」
「えー?そうかな?」
弟は特に不安になる様子もなく、画面を見続ける。
「あんたは、恋人とか好きな人とかいるの?」
「んー…いないかな」
「そうなんだ。優里が好きなのかと思ったけど」
「好きだよ。でも、俺は千陽も永那も好きだよ」
…なにこの真っ直ぐな人間。
小6男児って、あたしのイメージではもっと生意気で、憎たらしい感じだけど。
「俺、まだ好きってよくわかんない。永那と姉ちゃんが…その…キスとか、してるの見ると、ちょっと、気まずいくらいで…」
「へえ」
その“気まずい”って感情、具体的には、どんな気持ちなんだろう?
まあ…そういうお年頃だもんね。
目の前であんなふうにされたら、落ち着かないのも無理はない。
「てか、千陽、なんで昨日姉ちゃんに…」
「なんとなく。理由なんてないよ」
「えー…そんなもんなの?女同士だから?」
「女同士とか関係ないし。女同士でも口にキスなんてしないでしょ」
「わけわかんねー」
弟が笑う。
「1回くらいって…」
「永那が広い心で許せばいいだけの話でしょ?」
「お前が言うなよ」
「それに、永那にはダメって言われたけど、空井さんにダメとは言われてない」
「なんだその屁理屈」
「永那がダメなら、空井さんにすればいいじゃない?ってね」
「パンがなければケーキを…じゃないんだから」
…なんで項垂れながらツッコミを入れ続けるのか謎だけど、あたしは面白くて笑う。
「もー!」
頭をボリボリ掻いて、髪が乱れる。
「もう、穂に接近禁止!」
「どうして?」
「お前…!自分がしたこと、反省してないのか!」
「反省反省」
「…絶対してないじゃん」
空井さんと弟が苦笑している。
永那がギロリとあたしを睨む。
永那は立ち上がって、空井さんの頬を両手で包む。
彼女の唇に唇を押し付けてから、チロチロと舐める。
空井さんが顔を真っ赤にして、目をギュッと瞑った。
よくもまあ…こんな、人前でできるもんだわ…と、自分のことを棚に上げて、思う。
2人の顔が離れたのを見てから「あたし、明日も遊びに来るから」と告げた。
「…いいけどさ。もう、穂にもしちゃだめだからね?」
永那の言い方が優しくて…もっと怒るかと思ってたのに、拍子抜けする。
あたしは目をそらして、唇を尖らせる。
「永那ちゃん…そろそろ、帰らないと」
「…うん」
永那と空井さんが至近距離で見つめ合って、永那はため息をつく。
永那と2人で駅に向かう。
「あたしが明日も来るって、イライラしないの?」
「しないよ」
「なんで?前はあんなにイライラしてたのに」
永那が立ち止まって、ニヤリと笑う。
あたしの耳元に口を近づけて言う。
「穂が生理だから、できないんだよ」
永那の息が耳にかかって、くすぐったい。
…あー、もう。こういうところが嫌い。
「永那、そんなんで空井さんに引かれないの?」
「引かれないよ」
見下ろされるように流し目で見られて、胸の痛みを感じる。
これが、どういう痛みなのか、自分でもわからない。
羨ましいような、寂しいような、ときめいているような、ごちゃ混ぜの感情。
「あたしのファーストキス、空井さんになっちゃった」
「自分でやったんだろ?」
「永那との間接キスだもん」
永那が左眉を上げる。
「お前、頭おかしいんじゃないの?」
「かもね」
次の日、永那は空井さんを抱きしめたまま眠った。
最初、空井さんは恥ずかしげにしていたけど、そのうち当たり前みたいに抱かれながら本を読み始めた。
トイレに行くときにチラッと見たら、抱きしめられていることを何も気にしてないみたいな顔をしていたから、永那の前では、いつもそうなんだなってわかって、少し胸が痛む。
自分で自分の傷口に塩を塗っている気分になる。
明日は優里の部活が休みだから、優里も来ることになった。
あたしは弟とゲームをして過ごす。
家で1人で悶々としているよりはマシかな。
お昼もおいしいし。
「友達と遊ばないの?」
「え?…ああ、べつに。いつも約束してるわけじゃないから」
「そうなんだ」
「千陽達と一緒にいたほうが、俺、楽しいし」
なんでそんなに目がキラキラしているのか。
眩しくて見てられない。
「そんなんじゃ、いつか友達いなくなるんじゃないの?」
「えー?そうかな?」
弟は特に不安になる様子もなく、画面を見続ける。
「あんたは、恋人とか好きな人とかいるの?」
「んー…いないかな」
「そうなんだ。優里が好きなのかと思ったけど」
「好きだよ。でも、俺は千陽も永那も好きだよ」
…なにこの真っ直ぐな人間。
小6男児って、あたしのイメージではもっと生意気で、憎たらしい感じだけど。
「俺、まだ好きってよくわかんない。永那と姉ちゃんが…その…キスとか、してるの見ると、ちょっと、気まずいくらいで…」
「へえ」
その“気まずい”って感情、具体的には、どんな気持ちなんだろう?
まあ…そういうお年頃だもんね。
目の前であんなふうにされたら、落ち着かないのも無理はない。
「てか、千陽、なんで昨日姉ちゃんに…」
「なんとなく。理由なんてないよ」
「えー…そんなもんなの?女同士だから?」
「女同士とか関係ないし。女同士でも口にキスなんてしないでしょ」
「わけわかんねー」
弟が笑う。
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