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2.変化
119.夏休み
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昼食後、永那ちゃんは寝るかと思っていたけど、誉に誘われてゲームで遊んでいた。
永那ちゃんはゲームをほとんどやったことがないという。
誉の友人が「違うよ、もっと右!ほら!」と必死に説明する。
失敗して「あー」と言われると「“あー”って言うな!ちゃんともっと丁寧に教えろ!」と怒っていた。
私は何度か「寝なくていいの?」と聞いたけど、土日にたくさん寝たから大丈夫なのだそう。
駅まで送ろうとしたけど「雨だから」と断られた。
永那ちゃんに私の傘を貸す。
誉の友達も永那ちゃんと帰っていく。
帰る頃には、一応服も乾いていた。
分厚いところは濡れていたかもしれないけれど。
さすがに3人に貸す傘はなくて、それぞれ走って帰るから大丈夫と言われた。
次の日、誉が熱を出した。
…やっぱり。
誉はすぐに熱を出す。そのくせ気をつけないから、いつも口酸っぱく言うことになる。
彼はそれで不機嫌になるけど、世話をするこっちの身にもなってほしい。
額に冷却シートを貼って、風邪薬を飲ませる。
「寒いよー。でも暑いぃ」と、布団の中で唸っていた。
…明日から生徒会の旅行があるのに。
お金を払ってしまっているから、今更キャンセルもできない。
インターホンが鳴って、ドアを開ける。
「ごめんね」
「いや、全然。昨日びしょ濡れだったもんね」
永那ちゃんが苦笑する。
「ほい」
袋をわたしてくれる。
中を見ると、プリンやらアイスやらゼリーやらが入っていた。
「こんなに?…お金払うよ」
「いいって。…たぶん私のせいだし、ね?」
肩をトントンと叩かれて、永那ちゃんが家の中に入ってくる。
昨日貸した傘を返される。
“私のせい”?
なんで永那ちゃんのせい?
「誉ー、大丈夫かー?」
「俺、死ぬかも」
永那ちゃんが笑う。
私は永那ちゃんが買ってきてくれた物を誉に見せて、ゼリーが食べたいと言うから、開けてあげる。
「永那ちゃん、寝るよね?」
「んー…どうしよう」
彼女の目の下の濃いクマを見て「寝なさい」と言う。
昨日の昼に寝なかったっていうことは、1日以上起きていたということ。
やっぱり、無理にでも寝かせたほうがいいなと思う。
…なんて、私が言えた義理じゃないのかもしれないけど。
「今日はご飯も私が作るから、永那ちゃんは寝てて。ね?」
「でも、穂といたい」
誉の目の前で言われて、顔がボッと熱くなる。
誉を見ると、一生懸命ゼリーを食べていて、こちらのことは気にしていないみたいだった。
「じゃあ…リビングで寝る?私、リビングにいる予定だし」
永那ちゃんの顔に花が咲く。
昨日誉の友達が座っていたから、念のためラグに掃除機をかける。
ローテーブルをずらして、私の部屋から枕と布団を持ってくる。
予備の布団とかは、家にはない。
本当なら敷布団があれば、お客さんが来たときに泊められるのかもしれないけど…そんな想定、家ではされたことがなかった。
永那ちゃんは気持ちよさそうに寝転がる。
「穂の枕、良い匂い」
正直、昨日たくさん汗をかいたから洗濯したかった。
でも昨日は体が疲れきっていたし(ちなみに今日も絶賛筋肉痛)、雨が降っていて、除湿機をつけていても湿度がすごかったから、洗濯できなかった。
明日から生徒会の旅行もあるから、家を出る前に洗濯機に放り込んでおけば、お母さんが洗濯してくれるだろうと思っている。
彼女に布団をかけてあげる。
「ここ、エアコンの風当たっちゃわない?」
手で確かめる。
「大丈夫」
「そう?」
「うん。それより、穂」
永那ちゃんが両手を広げる。
斜め後ろを振り向く。
この位置からは、誉のベッドが少し見える。
でも誉のベッドは私のベッドの向きとは逆に置かれているから、足先しか見えない。
…一応、大丈夫なのかな?
彼女の胸に飛び込む。
ギュッと抱きしめられて、幸せな気持ちで満ち溢れる。
私も彼女の肩を掴んで、ギュッと力を込める。
上半身を起こして、触れるだけのキスを何度もする。
彼女の頭を撫でて、立ち上がる。
今日は小雨が降っていた。
部屋の中が少し暗いけど、電気を消す。
ダイニングテーブルに置いてある、お母さんの仕事用のデスクライトをつけて、本を読む。
たまに誉が辛そうにするから、様子を見に行く。
お昼前になって、食事の準備をする。
誉には卵粥。
永那ちゃんと私には、煮物と甘い卵焼き、ご飯、味噌汁を作る。
まずは永那ちゃんを起こす。
「永那ちゃん」
彼女の唇に唇を重ねる。
何度かキスをすると、そのうち彼女は起きる。
「おはよ、穂」
幸せそうな笑みを浮かべるから、私も幸せな気持ちになる。
「おはよう、永那ちゃん」
髪を撫でると、気持ちよさそうに目を瞑って、伸びをする。
「私、誉も起こしてくるね」
永那ちゃんが頷くのを確認してから、誉の部屋に行く。
「誉、起きられる?」
「んー…」
眉間にシワを寄せて薄く目を開く。
「お粥作ったから、起き上がれるなら起きて。起きれなさそう?」
「…大丈夫」
頬がピンク色に染まって、汗をかいている。
「服も着替えちゃおっか」
永那ちゃんはゲームをほとんどやったことがないという。
誉の友人が「違うよ、もっと右!ほら!」と必死に説明する。
失敗して「あー」と言われると「“あー”って言うな!ちゃんともっと丁寧に教えろ!」と怒っていた。
私は何度か「寝なくていいの?」と聞いたけど、土日にたくさん寝たから大丈夫なのだそう。
駅まで送ろうとしたけど「雨だから」と断られた。
永那ちゃんに私の傘を貸す。
誉の友達も永那ちゃんと帰っていく。
帰る頃には、一応服も乾いていた。
分厚いところは濡れていたかもしれないけれど。
さすがに3人に貸す傘はなくて、それぞれ走って帰るから大丈夫と言われた。
次の日、誉が熱を出した。
…やっぱり。
誉はすぐに熱を出す。そのくせ気をつけないから、いつも口酸っぱく言うことになる。
彼はそれで不機嫌になるけど、世話をするこっちの身にもなってほしい。
額に冷却シートを貼って、風邪薬を飲ませる。
「寒いよー。でも暑いぃ」と、布団の中で唸っていた。
…明日から生徒会の旅行があるのに。
お金を払ってしまっているから、今更キャンセルもできない。
インターホンが鳴って、ドアを開ける。
「ごめんね」
「いや、全然。昨日びしょ濡れだったもんね」
永那ちゃんが苦笑する。
「ほい」
袋をわたしてくれる。
中を見ると、プリンやらアイスやらゼリーやらが入っていた。
「こんなに?…お金払うよ」
「いいって。…たぶん私のせいだし、ね?」
肩をトントンと叩かれて、永那ちゃんが家の中に入ってくる。
昨日貸した傘を返される。
“私のせい”?
なんで永那ちゃんのせい?
「誉ー、大丈夫かー?」
「俺、死ぬかも」
永那ちゃんが笑う。
私は永那ちゃんが買ってきてくれた物を誉に見せて、ゼリーが食べたいと言うから、開けてあげる。
「永那ちゃん、寝るよね?」
「んー…どうしよう」
彼女の目の下の濃いクマを見て「寝なさい」と言う。
昨日の昼に寝なかったっていうことは、1日以上起きていたということ。
やっぱり、無理にでも寝かせたほうがいいなと思う。
…なんて、私が言えた義理じゃないのかもしれないけど。
「今日はご飯も私が作るから、永那ちゃんは寝てて。ね?」
「でも、穂といたい」
誉の目の前で言われて、顔がボッと熱くなる。
誉を見ると、一生懸命ゼリーを食べていて、こちらのことは気にしていないみたいだった。
「じゃあ…リビングで寝る?私、リビングにいる予定だし」
永那ちゃんの顔に花が咲く。
昨日誉の友達が座っていたから、念のためラグに掃除機をかける。
ローテーブルをずらして、私の部屋から枕と布団を持ってくる。
予備の布団とかは、家にはない。
本当なら敷布団があれば、お客さんが来たときに泊められるのかもしれないけど…そんな想定、家ではされたことがなかった。
永那ちゃんは気持ちよさそうに寝転がる。
「穂の枕、良い匂い」
正直、昨日たくさん汗をかいたから洗濯したかった。
でも昨日は体が疲れきっていたし(ちなみに今日も絶賛筋肉痛)、雨が降っていて、除湿機をつけていても湿度がすごかったから、洗濯できなかった。
明日から生徒会の旅行もあるから、家を出る前に洗濯機に放り込んでおけば、お母さんが洗濯してくれるだろうと思っている。
彼女に布団をかけてあげる。
「ここ、エアコンの風当たっちゃわない?」
手で確かめる。
「大丈夫」
「そう?」
「うん。それより、穂」
永那ちゃんが両手を広げる。
斜め後ろを振り向く。
この位置からは、誉のベッドが少し見える。
でも誉のベッドは私のベッドの向きとは逆に置かれているから、足先しか見えない。
…一応、大丈夫なのかな?
彼女の胸に飛び込む。
ギュッと抱きしめられて、幸せな気持ちで満ち溢れる。
私も彼女の肩を掴んで、ギュッと力を込める。
上半身を起こして、触れるだけのキスを何度もする。
彼女の頭を撫でて、立ち上がる。
今日は小雨が降っていた。
部屋の中が少し暗いけど、電気を消す。
ダイニングテーブルに置いてある、お母さんの仕事用のデスクライトをつけて、本を読む。
たまに誉が辛そうにするから、様子を見に行く。
お昼前になって、食事の準備をする。
誉には卵粥。
永那ちゃんと私には、煮物と甘い卵焼き、ご飯、味噌汁を作る。
まずは永那ちゃんを起こす。
「永那ちゃん」
彼女の唇に唇を重ねる。
何度かキスをすると、そのうち彼女は起きる。
「おはよ、穂」
幸せそうな笑みを浮かべるから、私も幸せな気持ちになる。
「おはよう、永那ちゃん」
髪を撫でると、気持ちよさそうに目を瞑って、伸びをする。
「私、誉も起こしてくるね」
永那ちゃんが頷くのを確認してから、誉の部屋に行く。
「誉、起きられる?」
「んー…」
眉間にシワを寄せて薄く目を開く。
「お粥作ったから、起き上がれるなら起きて。起きれなさそう?」
「…大丈夫」
頬がピンク色に染まって、汗をかいている。
「服も着替えちゃおっか」
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