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2.変化
110.夏休み
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しっかり日焼け止めを塗っていたはずなのに、キャミソールの紐の部分とショートパンツで隠れていた部分が、白くなっている。
家に帰って、温かいシャワーを浴びると、肌が少しピリついた。
初めてのウォータースライダー、怖すぎて、永那ちゃんに甘えてしまった。
…でも優しく受け止めてもらえて、嬉しさもあった。
いつかは、ああいうのにも乗れるようになりたい。
将来的に、もし遊園地とかでデートするってなったら、ジェットコースターにも乗るんだよね?
だから、乗れるようになりたい。
私はそういう、みんなが簡単に乗れてしまうような物に乗った経験がほとんどない。
まだお父さんがいた頃、一度だけ遊園地に連れて行ってもらったと思うけれど、まだ小さかったから、危険な乗り物には乗らなかった。
「永那ちゃん、かっこよかったな」
“楽しい雰囲気は壊れないし、壊れさせない”
私は友達ができたことが嬉しくて、最近は、何か思うところがあってもグッと堪えて言わないように心掛けていた。
私が何か言うことで、クラスの楽しい雰囲気を壊したくなかったから。
一度味わってしまった楽しさを、失いたくないと強く願って。
テスト返却期間中ほとんどの人が、寝ているか、お喋りをしているかだった。
復習は大事だし、せっかく先生が授業をしてくれているのだから、ちゃんと授業を受けるべきだと思っている。
寝ているのは人の邪魔になるわけでもないから良いとしても、喋っているのは正直迷惑だった。
前の私なら「先生の話が聞こえないから静かにしてくれない?」と言っていたと思う。
掃除だって、夏休み前ということもあってか、みんなまた適当にしていた。
本当はそれも、言いたかった。
夏休み前だからこそ、しっかりやるべきなのでは?と。
永那ちゃんには、私が言わずに我慢していたことを見抜かれていたのかな。
次の日、駅前で待ち合わせ。
やっぱり永那ちゃんはもう、ついていた。
いつものように時計台に寄りかかっている。
「永那ちゃん」
「穂、おはよ」
「おはよう」
永那ちゃんが頭を撫でてくれる。
普段は行かないけど、少し離れたところに朝8時から開いているスーパーがある。
近所のスーパーは10時からだから、散歩がてら2人で歩く。
「誉がね、海をすごい楽しみにしているみたいで、カレンダーに“海!”って赤字で大きく書いてたの。笑っちゃったよ」
「誉、可愛いなあ。でも気持ちはわかるよ。…また穂の水着姿が見られるの、すっごい楽しみだし」
「もう、また永那ちゃんはそういうこと言って」
頬を膨らませると、指でつつかれた。
スーパーに到着して、何を作ろうか考える。
永那ちゃんが、チャプチェみたいに珍しい物が食べたいと言うから、事前にいろいろ調べてみたけど、“珍しい物”がよくわからない。
私はスマホを出して、永那ちゃんに見せる。
永那ちゃんがスマホを覗き込むから、顔の距離が近くて少しドキドキした。
「普段、よくこのサイトのレシピを使ってて」
「へえ」
お気に入りに登録してあるレシピをスライドして見せていく。
「何か、気になるものある?」
「ビビンバ食べたい」
フフッと笑う。
ビビンバって珍しいものなのかな?
「じゃあ、今日はビビンバにしよう」
食材をカゴに入れていく。
お財布を出そうとしたら、サッと永那ちゃんが払ってくれる。
「後で払うね」と言うと「私に買わせて?」と頭を撫でられる。
「でも」
「ほら、前に優里が言ってたでしょ?家にお邪魔させてもらってるし、火も調味料とかも使わせてもらってるんだからって。それに、これからもお昼をご馳走してもらい続けるのは、申し訳ないからさ」
「…わかった。ありがとう」
買い物袋も持ってくれて、なんだか、同棲してるカップルみたいな気分になる。
「誉は?」
家について、買った物を冷蔵庫にしまっていく。
「友達に誘われたって、遊びに行ったよ」
「そっか。じゃあまた2人でいられるんだ」
背中にぬくもりを感じた後、腰から手が伸びてきて、抱きしめられる。
首筋に彼女の顔が触れて、少しくすぐったい。
チュッと音がする。
1回、2回、3回と、唇が触れるたびに私の顔に、永那ちゃんの顔が近づいてくる。
4回目、頬にキスされて、私は彼女の腕の中で振り向く。
冷蔵庫を片手で閉めると、見計らったように彼女の唇が私のに重なる。
やわらかい感触。
触れ合うだけで、気持ちいい。
何度も彼女を求めるように、彼女も私を求めるように、離れてはくっつき、くっつきは離れるのを繰り返す。
少しずつ、彼女の息が荒くなる。
同時に私は押されていって、冷蔵庫に寄りかかった。
両手で頬を包まれる。
少し見つめてから、また重なった。
しっかり日焼け止めを塗っていたはずなのに、キャミソールの紐の部分とショートパンツで隠れていた部分が、白くなっている。
家に帰って、温かいシャワーを浴びると、肌が少しピリついた。
初めてのウォータースライダー、怖すぎて、永那ちゃんに甘えてしまった。
…でも優しく受け止めてもらえて、嬉しさもあった。
いつかは、ああいうのにも乗れるようになりたい。
将来的に、もし遊園地とかでデートするってなったら、ジェットコースターにも乗るんだよね?
だから、乗れるようになりたい。
私はそういう、みんなが簡単に乗れてしまうような物に乗った経験がほとんどない。
まだお父さんがいた頃、一度だけ遊園地に連れて行ってもらったと思うけれど、まだ小さかったから、危険な乗り物には乗らなかった。
「永那ちゃん、かっこよかったな」
“楽しい雰囲気は壊れないし、壊れさせない”
私は友達ができたことが嬉しくて、最近は、何か思うところがあってもグッと堪えて言わないように心掛けていた。
私が何か言うことで、クラスの楽しい雰囲気を壊したくなかったから。
一度味わってしまった楽しさを、失いたくないと強く願って。
テスト返却期間中ほとんどの人が、寝ているか、お喋りをしているかだった。
復習は大事だし、せっかく先生が授業をしてくれているのだから、ちゃんと授業を受けるべきだと思っている。
寝ているのは人の邪魔になるわけでもないから良いとしても、喋っているのは正直迷惑だった。
前の私なら「先生の話が聞こえないから静かにしてくれない?」と言っていたと思う。
掃除だって、夏休み前ということもあってか、みんなまた適当にしていた。
本当はそれも、言いたかった。
夏休み前だからこそ、しっかりやるべきなのでは?と。
永那ちゃんには、私が言わずに我慢していたことを見抜かれていたのかな。
次の日、駅前で待ち合わせ。
やっぱり永那ちゃんはもう、ついていた。
いつものように時計台に寄りかかっている。
「永那ちゃん」
「穂、おはよ」
「おはよう」
永那ちゃんが頭を撫でてくれる。
普段は行かないけど、少し離れたところに朝8時から開いているスーパーがある。
近所のスーパーは10時からだから、散歩がてら2人で歩く。
「誉がね、海をすごい楽しみにしているみたいで、カレンダーに“海!”って赤字で大きく書いてたの。笑っちゃったよ」
「誉、可愛いなあ。でも気持ちはわかるよ。…また穂の水着姿が見られるの、すっごい楽しみだし」
「もう、また永那ちゃんはそういうこと言って」
頬を膨らませると、指でつつかれた。
スーパーに到着して、何を作ろうか考える。
永那ちゃんが、チャプチェみたいに珍しい物が食べたいと言うから、事前にいろいろ調べてみたけど、“珍しい物”がよくわからない。
私はスマホを出して、永那ちゃんに見せる。
永那ちゃんがスマホを覗き込むから、顔の距離が近くて少しドキドキした。
「普段、よくこのサイトのレシピを使ってて」
「へえ」
お気に入りに登録してあるレシピをスライドして見せていく。
「何か、気になるものある?」
「ビビンバ食べたい」
フフッと笑う。
ビビンバって珍しいものなのかな?
「じゃあ、今日はビビンバにしよう」
食材をカゴに入れていく。
お財布を出そうとしたら、サッと永那ちゃんが払ってくれる。
「後で払うね」と言うと「私に買わせて?」と頭を撫でられる。
「でも」
「ほら、前に優里が言ってたでしょ?家にお邪魔させてもらってるし、火も調味料とかも使わせてもらってるんだからって。それに、これからもお昼をご馳走してもらい続けるのは、申し訳ないからさ」
「…わかった。ありがとう」
買い物袋も持ってくれて、なんだか、同棲してるカップルみたいな気分になる。
「誉は?」
家について、買った物を冷蔵庫にしまっていく。
「友達に誘われたって、遊びに行ったよ」
「そっか。じゃあまた2人でいられるんだ」
背中にぬくもりを感じた後、腰から手が伸びてきて、抱きしめられる。
首筋に彼女の顔が触れて、少しくすぐったい。
チュッと音がする。
1回、2回、3回と、唇が触れるたびに私の顔に、永那ちゃんの顔が近づいてくる。
4回目、頬にキスされて、私は彼女の腕の中で振り向く。
冷蔵庫を片手で閉めると、見計らったように彼女の唇が私のに重なる。
やわらかい感触。
触れ合うだけで、気持ちいい。
何度も彼女を求めるように、彼女も私を求めるように、離れてはくっつき、くっつきは離れるのを繰り返す。
少しずつ、彼女の息が荒くなる。
同時に私は押されていって、冷蔵庫に寄りかかった。
両手で頬を包まれる。
少し見つめてから、また重なった。
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