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2.変化
105.夏休み
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ご飯を食べ終えると、穂に強引にベッドに連れて行かれた。
学習したのか、今度は穂はベッドに乗らない。
私は大人しく眠ることにして、穂の匂いに包まれながら、すぐに意識がなくなった。
唇に何かが触れて、意識が引き戻される。
「永那ちゃん、起きて」
何度か唇にぬくもりを感じて、目を開く。
目の前に穂がいた。
穂の口が弧を描く。
「おはよう、永那ちゃん」
「おはよう、穂」
ああ、穂と一緒に暮らしたい。
毎日こんなふうに起こしてもらえるなんて、幸せすぎない?
私の目覚めと言えば、定番はお母さんの泣き声だ。
自然に起きるときも、何か嫌な夢を見ていたような感覚で起きることが多い。内容は覚えていないけど。
深呼吸して、目をギュッと瞑る。
今は…今だけは、そういうことを考えずに過ごそう。
せっかく穂と一緒にいるんだし、楽しみたい。
「永那ちゃん、大丈夫?」
ほら、穂が心配そうにする。
こんな顔を見たいわけじゃない。
「大丈夫だよ」
彼女の頰を手で包み込んで、そっと口付けする。
彼女は嬉しそうに笑って、私から離れた。
大きく伸びをしたら、あくびもでた。
私は起き上がって、時計を見る。
4時過ぎ。
彼女はいつもこの時間に起こしてくれる。
「もう帰る時間か。あっという間だな」
「そうだね」
彼女が私の横に座る。
「明日は、プールだね」
「うん」
「タンポン、平気そう?」
「…うん。昨日買って、試してみた」
「どうだった?」
「最初はよくわからなかったけど…一応できたのかな?あれで本当に大丈夫なのか、ちょっと心配」
彼女が苦笑する。
私はヘッドボードに置いてあった眼鏡をかけて、前髪を指で梳く。
「大丈夫だよ。…ちゃんと定期的に替えればさ」
彼女が頷く。
水着を買うときに見せてもらった穂の水着姿。
あのときは一瞬でカーテンを閉められてしまったから、明日はじっくり見られるんだなあと思うと、楽しみで仕方ない。
「ただいまー」
誉の声が聞こえる。
「おかえり」
2人で同時に言って、私達は笑い合う。
立ち上がってリビングに行くと、服が土まみれになっている誉が立っていた。
「ちょっと、誉!なにその格好!」
「サッカーでスライディングしたらこうなった」
「なっ…!もう、部屋あがってこないでよ。玄関戻って」
誉はへへへと笑いながら、穂に背中を押される。
私も2人の後を追う。
玄関でパンツ一丁にさせられて、誉は鳥肌を立たせていた。
「姉ちゃん、服!」
「自分で取ってきて」
穂は誉の服を玄関でバサバサと叩いた後、バケツに服を突っ込んでいる。
お風呂場に向かうから、私もついていく。
誉は走って部屋に戻ったようだった。
「ごめんね…なんか、バタバタしちゃって」
穂は洗剤をバケツにいれて、立ち上がった。
「いや、全然。こういうのも、楽しい」
「そうなの?」
首を傾げて、不思議そうに私を見る。
そうだよ。…こんな平和な日常を体験させてもらえて、楽しい。
私が頷くと、穂は頬を掻いて笑った。
「誉、私帰るね」
「えー?もう?」
着替え終えた誉が走って玄関にやって来る。
「早くない?」
「いつもと同じ時間だよ」
誉が肩を落としてガックリする。
「まあ、明日も来るんだもんね?」
「え?明日はプール行くから来ないよ?」
誉の体が小さくなって、床に四つん這いになる。
大袈裟だなあ。…でも、ちょっと嬉しい。
「そうだった…忘れてた…。あ!」
顔を勢いよく上げる。
「ん?」
「そういえば、海!いつ行くの?」
「ああ、まだ千陽と優里に言ってなかった」
「えー!ちゃんと言ってよー!」
「ごめんごめん。明日聞いとくから」
「わかった」
誉が立ち上がったのを見て、私は穂に顔を向ける。
穂が気づいて、目が合う。
優しく微笑む姿は…もう、天使だ。マイ、エンジェル。
玄関で別れて、私は帰途につく。
毎日こんなに幸せにあれたら…と、心の底から願う。
彼女がくれたカーゴパンツに触れる。
私がお店で見たときは8千円くらいしてたはず。
私が持ってる服はどれも3千円以下で、たぶん、これが1番高い服なんじゃないかな。
お母さんの服は、良い物もあるんだと思うけど、彼女が働いていたときに買った物ばかりだから、少し古い。
もう…4年くらい前になるのか。
数字で見ると短いようにも感じる。
でも、長かったな。
いろんなことが変わった。
身長もかなり伸びたし、髪は短くなったし…初めて誰かとセックスして、その楽しさに目覚めて、千陽と出会って、お母さんが死のうとして、お姉ちゃんが出て行って、そして…穂に出会った。
穂に出会えて、久しぶりに、生きてることがこんなにも楽しいと思えた。
大事にしたい。大切にしたい。
学習したのか、今度は穂はベッドに乗らない。
私は大人しく眠ることにして、穂の匂いに包まれながら、すぐに意識がなくなった。
唇に何かが触れて、意識が引き戻される。
「永那ちゃん、起きて」
何度か唇にぬくもりを感じて、目を開く。
目の前に穂がいた。
穂の口が弧を描く。
「おはよう、永那ちゃん」
「おはよう、穂」
ああ、穂と一緒に暮らしたい。
毎日こんなふうに起こしてもらえるなんて、幸せすぎない?
私の目覚めと言えば、定番はお母さんの泣き声だ。
自然に起きるときも、何か嫌な夢を見ていたような感覚で起きることが多い。内容は覚えていないけど。
深呼吸して、目をギュッと瞑る。
今は…今だけは、そういうことを考えずに過ごそう。
せっかく穂と一緒にいるんだし、楽しみたい。
「永那ちゃん、大丈夫?」
ほら、穂が心配そうにする。
こんな顔を見たいわけじゃない。
「大丈夫だよ」
彼女の頰を手で包み込んで、そっと口付けする。
彼女は嬉しそうに笑って、私から離れた。
大きく伸びをしたら、あくびもでた。
私は起き上がって、時計を見る。
4時過ぎ。
彼女はいつもこの時間に起こしてくれる。
「もう帰る時間か。あっという間だな」
「そうだね」
彼女が私の横に座る。
「明日は、プールだね」
「うん」
「タンポン、平気そう?」
「…うん。昨日買って、試してみた」
「どうだった?」
「最初はよくわからなかったけど…一応できたのかな?あれで本当に大丈夫なのか、ちょっと心配」
彼女が苦笑する。
私はヘッドボードに置いてあった眼鏡をかけて、前髪を指で梳く。
「大丈夫だよ。…ちゃんと定期的に替えればさ」
彼女が頷く。
水着を買うときに見せてもらった穂の水着姿。
あのときは一瞬でカーテンを閉められてしまったから、明日はじっくり見られるんだなあと思うと、楽しみで仕方ない。
「ただいまー」
誉の声が聞こえる。
「おかえり」
2人で同時に言って、私達は笑い合う。
立ち上がってリビングに行くと、服が土まみれになっている誉が立っていた。
「ちょっと、誉!なにその格好!」
「サッカーでスライディングしたらこうなった」
「なっ…!もう、部屋あがってこないでよ。玄関戻って」
誉はへへへと笑いながら、穂に背中を押される。
私も2人の後を追う。
玄関でパンツ一丁にさせられて、誉は鳥肌を立たせていた。
「姉ちゃん、服!」
「自分で取ってきて」
穂は誉の服を玄関でバサバサと叩いた後、バケツに服を突っ込んでいる。
お風呂場に向かうから、私もついていく。
誉は走って部屋に戻ったようだった。
「ごめんね…なんか、バタバタしちゃって」
穂は洗剤をバケツにいれて、立ち上がった。
「いや、全然。こういうのも、楽しい」
「そうなの?」
首を傾げて、不思議そうに私を見る。
そうだよ。…こんな平和な日常を体験させてもらえて、楽しい。
私が頷くと、穂は頬を掻いて笑った。
「誉、私帰るね」
「えー?もう?」
着替え終えた誉が走って玄関にやって来る。
「早くない?」
「いつもと同じ時間だよ」
誉が肩を落としてガックリする。
「まあ、明日も来るんだもんね?」
「え?明日はプール行くから来ないよ?」
誉の体が小さくなって、床に四つん這いになる。
大袈裟だなあ。…でも、ちょっと嬉しい。
「そうだった…忘れてた…。あ!」
顔を勢いよく上げる。
「ん?」
「そういえば、海!いつ行くの?」
「ああ、まだ千陽と優里に言ってなかった」
「えー!ちゃんと言ってよー!」
「ごめんごめん。明日聞いとくから」
「わかった」
誉が立ち上がったのを見て、私は穂に顔を向ける。
穂が気づいて、目が合う。
優しく微笑む姿は…もう、天使だ。マイ、エンジェル。
玄関で別れて、私は帰途につく。
毎日こんなに幸せにあれたら…と、心の底から願う。
彼女がくれたカーゴパンツに触れる。
私がお店で見たときは8千円くらいしてたはず。
私が持ってる服はどれも3千円以下で、たぶん、これが1番高い服なんじゃないかな。
お母さんの服は、良い物もあるんだと思うけど、彼女が働いていたときに買った物ばかりだから、少し古い。
もう…4年くらい前になるのか。
数字で見ると短いようにも感じる。
でも、長かったな。
いろんなことが変わった。
身長もかなり伸びたし、髪は短くなったし…初めて誰かとセックスして、その楽しさに目覚めて、千陽と出会って、お母さんが死のうとして、お姉ちゃんが出て行って、そして…穂に出会った。
穂に出会えて、久しぶりに、生きてることがこんなにも楽しいと思えた。
大事にしたい。大切にしたい。
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