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2.変化
87.友達
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「穂ちゃん、おかえり~」
優里ちゃんが困ったような笑顔を浮かべる。
「…ただいま」
小さく、モゴモゴと返事をするのが精一杯だった。
永那ちゃんはご機嫌そうに誉の席に座る。
「おつかれさま」
優里ちゃんが言う。
…なにが!?
顔の熱がどんどん増していく。
本当に、どんな顔をすればいいの…。
顔をそらすように時計を見ると、2時半だった。
「明日は生物と英語だけだから、少し気が楽だね。やっと最終日~」
英語のテストは2回ある。授業科目が分けられているからだ。
優里ちゃんは伸びをして、生物の教科書とノートを取り出す。
生物は理系だけれど、暗記することが多いから、優里ちゃんにとってもそこまで苦手意識はないらしい。
「ねえ、明日どうするの?」
珍しく佐藤さんが話題を振る。
「あたしは、永那と空井さんがまたあんなことをするなら、遠慮するけど。見たくもないし…聞きたくも、ない」
優里ちゃんのおかげで少し落ち着いてきた私の体が、ボッと火照って、汗が滲む。
“聞きたくもない”という言葉に、どんどん頭が重くなっていく。
体がズルズルと落ちていって、机の下でうずくまる。
「千陽が、今日来たいって言ったんでしょ?」
永那ちゃんが、謎の対抗をする。
…もういいよ、やめて。
泣きたくなる。
「私は“我慢しない”って言ったよね?」
佐藤さんがため息をつく。
「ソーデスネ」
「まあまあ、2人とも、落ち着いて」
優里ちゃんが椅子を引く。
「おーい、穂ちゃーん。戻っておいでー」
ガンッと何かがぶつかる音がして顔を上げると、優里ちゃんが机に頭をぶつけていた。
「いったー」
へへへと笑いながら、四つん這いになって、私のそばに来てくれる。
「よしよし」
頭を撫でてくれる手つきが優しくて、本当に涙が出てきそうだ。
「自分が、恥ずかしい」
呟くと、優里ちゃんが「アハハ」と笑いながら、優しく頭を撫で続けてくれる。
「明日はどーせ、みんなに誘われるんじゃない?」
永那ちゃんがため息をつきながら言う。
「空井さんはいつもそういうのには参加しないけど、今回は参加するの?」
「わかんないって」
「ふーん」
「穂ちゃん、参加したらいいのに」
そばにいた優里ちゃんが微笑んでくれる。
「私がいたら、みんなの楽しい雰囲気を壊してしまうから」
優里ちゃんの顔がクシャクシャになっていく。
「え!?」
「そんなこと…そんなことないよぉ」
涙をポロポロ零す。
ギュッと抱きしめられる。
…私、机の下で何してるんだっけ?
「私が穂ちゃんのそばにちゃんといるから!大丈夫だから!」
「え?…あ、うん。ありがとう」
私は苦笑しつつも、心がふわふわする。
「あ゙?優里、穂の隣は私なんだけど?」
「隣は1つじゃないでしょー」
永那ちゃんが机の下を覗き込む。
優里ちゃんがくしくしと目元を拭う。
佐藤さんまでもがひょっこりと顔を見せてくれる。
「なんで優里、泣いてるの?」
「穂ちゃんの健気さが千陽にはわかんないの?」
優里ちゃんが頰を膨らませる。
七面鳥のようにコロコロと表情を変える優里ちゃんに思わず笑う。
永那ちゃんがモソモソと机の下に入ってくる。
「おりゃ」
優里ちゃんに抱かれる私を、優里ちゃんごと抱きしめる永那ちゃん。
「わー!」
優里ちゃんが楽しそうに笑って尻もちをつく。
私達の様子を、冷めた目で眺める佐藤さん。
ため息をつくけど、椅子からおりてしゃがみこんだ。
「千陽は来ないのー?」
優里ちゃんが笑いながら言う。
永那ちゃんが左手を伸ばして、佐藤さんを誘う。
彼女は唇を尖らせながら、ちょこちょことやって来て、永那ちゃんの腕におさまった。
「雨宿り~」
永那ちゃんがみんなを抱きしめながら、そんなことを言う。
「なにバカなこと言ってるの?」
優里ちゃんが言う。
「はー?」
永那ちゃんが目を細めて優里ちゃんを睨む。
なんだかんだあるけど、みんな仲がいいんだなと思わされる。
…そこに私がいるのが不思議で、自然と笑みが溢れた。
優里ちゃんが困ったような笑顔を浮かべる。
「…ただいま」
小さく、モゴモゴと返事をするのが精一杯だった。
永那ちゃんはご機嫌そうに誉の席に座る。
「おつかれさま」
優里ちゃんが言う。
…なにが!?
顔の熱がどんどん増していく。
本当に、どんな顔をすればいいの…。
顔をそらすように時計を見ると、2時半だった。
「明日は生物と英語だけだから、少し気が楽だね。やっと最終日~」
英語のテストは2回ある。授業科目が分けられているからだ。
優里ちゃんは伸びをして、生物の教科書とノートを取り出す。
生物は理系だけれど、暗記することが多いから、優里ちゃんにとってもそこまで苦手意識はないらしい。
「ねえ、明日どうするの?」
珍しく佐藤さんが話題を振る。
「あたしは、永那と空井さんがまたあんなことをするなら、遠慮するけど。見たくもないし…聞きたくも、ない」
優里ちゃんのおかげで少し落ち着いてきた私の体が、ボッと火照って、汗が滲む。
“聞きたくもない”という言葉に、どんどん頭が重くなっていく。
体がズルズルと落ちていって、机の下でうずくまる。
「千陽が、今日来たいって言ったんでしょ?」
永那ちゃんが、謎の対抗をする。
…もういいよ、やめて。
泣きたくなる。
「私は“我慢しない”って言ったよね?」
佐藤さんがため息をつく。
「ソーデスネ」
「まあまあ、2人とも、落ち着いて」
優里ちゃんが椅子を引く。
「おーい、穂ちゃーん。戻っておいでー」
ガンッと何かがぶつかる音がして顔を上げると、優里ちゃんが机に頭をぶつけていた。
「いったー」
へへへと笑いながら、四つん這いになって、私のそばに来てくれる。
「よしよし」
頭を撫でてくれる手つきが優しくて、本当に涙が出てきそうだ。
「自分が、恥ずかしい」
呟くと、優里ちゃんが「アハハ」と笑いながら、優しく頭を撫で続けてくれる。
「明日はどーせ、みんなに誘われるんじゃない?」
永那ちゃんがため息をつきながら言う。
「空井さんはいつもそういうのには参加しないけど、今回は参加するの?」
「わかんないって」
「ふーん」
「穂ちゃん、参加したらいいのに」
そばにいた優里ちゃんが微笑んでくれる。
「私がいたら、みんなの楽しい雰囲気を壊してしまうから」
優里ちゃんの顔がクシャクシャになっていく。
「え!?」
「そんなこと…そんなことないよぉ」
涙をポロポロ零す。
ギュッと抱きしめられる。
…私、机の下で何してるんだっけ?
「私が穂ちゃんのそばにちゃんといるから!大丈夫だから!」
「え?…あ、うん。ありがとう」
私は苦笑しつつも、心がふわふわする。
「あ゙?優里、穂の隣は私なんだけど?」
「隣は1つじゃないでしょー」
永那ちゃんが机の下を覗き込む。
優里ちゃんがくしくしと目元を拭う。
佐藤さんまでもがひょっこりと顔を見せてくれる。
「なんで優里、泣いてるの?」
「穂ちゃんの健気さが千陽にはわかんないの?」
優里ちゃんが頰を膨らませる。
七面鳥のようにコロコロと表情を変える優里ちゃんに思わず笑う。
永那ちゃんがモソモソと机の下に入ってくる。
「おりゃ」
優里ちゃんに抱かれる私を、優里ちゃんごと抱きしめる永那ちゃん。
「わー!」
優里ちゃんが楽しそうに笑って尻もちをつく。
私達の様子を、冷めた目で眺める佐藤さん。
ため息をつくけど、椅子からおりてしゃがみこんだ。
「千陽は来ないのー?」
優里ちゃんが笑いながら言う。
永那ちゃんが左手を伸ばして、佐藤さんを誘う。
彼女は唇を尖らせながら、ちょこちょことやって来て、永那ちゃんの腕におさまった。
「雨宿り~」
永那ちゃんがみんなを抱きしめながら、そんなことを言う。
「なにバカなこと言ってるの?」
優里ちゃんが言う。
「はー?」
永那ちゃんが目を細めて優里ちゃんを睨む。
なんだかんだあるけど、みんな仲がいいんだなと思わされる。
…そこに私がいるのが不思議で、自然と笑みが溢れた。
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