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2.変化
81.友達
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永那ちゃんは「ハァ」と大きくため息をついて「あっそ」と俯く。
「…でも」
永那ちゃんが上目遣いに睨みながら言う。
「明日は我慢しないからね?」
…なにを?
「そんなに明日が大事?」
佐藤さんの目がどんどん冷え切っていく。
「うん、私にとってはね」
「ふーん」
優里ちゃんは気まずそうにあわあわと手を彷徨わせている。
私もただ2人を眺めることしかできない。
しばらく2人は黙って睨み合った後、佐藤さんがノートに視線を戻して、永那ちゃんも机に突っ伏した。
優里ちゃんが困ったような笑みを私に向ける。
だから私も苦笑する。
私が優里ちゃんに化学を教えている間、永那ちゃんは貧乏ゆすりをしていた。
しばらく放っておいたけど止まらないから、私はそっと彼女の足に手を置いた。
永那ちゃんが目を大きく開いて、私を見る。
貧乏ゆすりが止まって、耳を赤く染める。
左腕に頭を乗せて、右手が私の左手に重なる。
指が絡まって、ニコニコする。
私は笑みを返して、そのまま教材に視線を戻す。
優里ちゃんは困ったような顔をしていた。
その後、永那ちゃんはいつも通り眠った。
でも私が手を離そうとするたびに起きて、ギュッと握られる。
3回繰り返して、私は諦めた。
今日も4時前に誉が帰ってくる。
走って帰ってきたのか、息を切らしている。
眠りが浅かったからか、永那ちゃんは誉の声で目を覚ました。
誉が帰ってきても、永那ちゃんは私の手を握ったまま離そうとしなかった。
誉は明らかに気づいていて、ジッと私達の手を眺めていた。
私の顔は一気に熱をおびて、誉の顔をまともに見れなかった。
3人が帰った後、誉が「なんで手繋いでたの?」と無垢に聞くから、私はため息をつく。
少し考えて「永那ちゃんが、そのほうが落ち着くみたいだったから」と言った。
「今日はちょっと機嫌が悪くてね」
そう言うと、誉は「ふーん」と言って漫画を読み始めた。
翌日。
優里ちゃんがいろいろ話題を振ってくれるけど、空気は重たいままだった。
そのうち優里ちゃんも顔を俯かせて、私達はコンビニに寄って、無言で家に向かう。
優里ちゃんが私に耳打ちする。
「ごめんね」
「なにが?」
「私達、邪魔だったんだよね?」
困ったように笑う。
私は首を横に振って「元々、普通に勉強する予定だったから」と答えた。
「そーなの?」
「永那ちゃんが、ね。なんか張り切ってくれているみたいで」
優里ちゃんが頷く。
「嬉しいけど、2人を除け者にしたいとまでは、私は思わないかな」
「そっか」
私だって、正直に言えば2人がよかった。
でも、こんなにも険悪な雰囲気になってまで2人になりたいとは思っていない。
それなら楽しくみんなで過ごせたほうがいいと思った。
「あの、さ?」
私と優里ちゃんはほとんど同じ身長で、それでも、優里ちゃんは伺うように上目遣いに私を見た。
「穂ちゃんと永那って、付き合ってるの?」
心臓がピョンと跳ねて、すぐにドクドクと音を立て始める。
“バレた場合は仕方ない”
それが2人で決めたことだった。
…逆にこれでバレないわけないよね。
私は心の中で苦笑する。
私が頷くと「そっか~」と優里ちゃんは困ったように笑う。
「今日が記念日なんだよね」
「え!?…そ、そっか!ちなみに、どのくらい?」
「1ヶ月」
「うわ~、それは大事だよね」
そんなに大事なものだなんて、私にはよくわからなかった。
1年とかのほうが、大事じゃない?
「なんか、ホントごめんね」
「全然。大丈夫だよ」
「…永那は、全然大丈夫じゃなさそう」
チラリと2人で、後ろを歩く永那ちゃんを見た。
永那ちゃんも佐藤さんも隣に並んで歩いているのに、一言も会話を交わしていない。
2人で苦笑する。
優里ちゃんと話をしているうちに、家につく。
「…でも」
永那ちゃんが上目遣いに睨みながら言う。
「明日は我慢しないからね?」
…なにを?
「そんなに明日が大事?」
佐藤さんの目がどんどん冷え切っていく。
「うん、私にとってはね」
「ふーん」
優里ちゃんは気まずそうにあわあわと手を彷徨わせている。
私もただ2人を眺めることしかできない。
しばらく2人は黙って睨み合った後、佐藤さんがノートに視線を戻して、永那ちゃんも机に突っ伏した。
優里ちゃんが困ったような笑みを私に向ける。
だから私も苦笑する。
私が優里ちゃんに化学を教えている間、永那ちゃんは貧乏ゆすりをしていた。
しばらく放っておいたけど止まらないから、私はそっと彼女の足に手を置いた。
永那ちゃんが目を大きく開いて、私を見る。
貧乏ゆすりが止まって、耳を赤く染める。
左腕に頭を乗せて、右手が私の左手に重なる。
指が絡まって、ニコニコする。
私は笑みを返して、そのまま教材に視線を戻す。
優里ちゃんは困ったような顔をしていた。
その後、永那ちゃんはいつも通り眠った。
でも私が手を離そうとするたびに起きて、ギュッと握られる。
3回繰り返して、私は諦めた。
今日も4時前に誉が帰ってくる。
走って帰ってきたのか、息を切らしている。
眠りが浅かったからか、永那ちゃんは誉の声で目を覚ました。
誉が帰ってきても、永那ちゃんは私の手を握ったまま離そうとしなかった。
誉は明らかに気づいていて、ジッと私達の手を眺めていた。
私の顔は一気に熱をおびて、誉の顔をまともに見れなかった。
3人が帰った後、誉が「なんで手繋いでたの?」と無垢に聞くから、私はため息をつく。
少し考えて「永那ちゃんが、そのほうが落ち着くみたいだったから」と言った。
「今日はちょっと機嫌が悪くてね」
そう言うと、誉は「ふーん」と言って漫画を読み始めた。
翌日。
優里ちゃんがいろいろ話題を振ってくれるけど、空気は重たいままだった。
そのうち優里ちゃんも顔を俯かせて、私達はコンビニに寄って、無言で家に向かう。
優里ちゃんが私に耳打ちする。
「ごめんね」
「なにが?」
「私達、邪魔だったんだよね?」
困ったように笑う。
私は首を横に振って「元々、普通に勉強する予定だったから」と答えた。
「そーなの?」
「永那ちゃんが、ね。なんか張り切ってくれているみたいで」
優里ちゃんが頷く。
「嬉しいけど、2人を除け者にしたいとまでは、私は思わないかな」
「そっか」
私だって、正直に言えば2人がよかった。
でも、こんなにも険悪な雰囲気になってまで2人になりたいとは思っていない。
それなら楽しくみんなで過ごせたほうがいいと思った。
「あの、さ?」
私と優里ちゃんはほとんど同じ身長で、それでも、優里ちゃんは伺うように上目遣いに私を見た。
「穂ちゃんと永那って、付き合ってるの?」
心臓がピョンと跳ねて、すぐにドクドクと音を立て始める。
“バレた場合は仕方ない”
それが2人で決めたことだった。
…逆にこれでバレないわけないよね。
私は心の中で苦笑する。
私が頷くと「そっか~」と優里ちゃんは困ったように笑う。
「今日が記念日なんだよね」
「え!?…そ、そっか!ちなみに、どのくらい?」
「1ヶ月」
「うわ~、それは大事だよね」
そんなに大事なものだなんて、私にはよくわからなかった。
1年とかのほうが、大事じゃない?
「なんか、ホントごめんね」
「全然。大丈夫だよ」
「…永那は、全然大丈夫じゃなさそう」
チラリと2人で、後ろを歩く永那ちゃんを見た。
永那ちゃんも佐藤さんも隣に並んで歩いているのに、一言も会話を交わしていない。
2人で苦笑する。
優里ちゃんと話をしているうちに、家につく。
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