78 / 595
2.変化
78.友達
しおりを挟む
永那ちゃんは当たり前のように、30分後には寝息を立てていた。
佐藤さんは1人でノートを眺めている。
私は優里ちゃんに数学を重点的に教えた。
「そこは穂ちゃんのノート見てわかったよ」
たまにそう褒めてくれるから、嬉しくなる。
最後は日本史の問題を出し合って、確認する。
私が教科書の隅に載っているような問題を出すと落ち込まれた。
4時前に誉が帰ってきて「また永那ちゃん寝てる!」と言って笑っていた。
永那ちゃんの顔を覗き込んで、恐る恐る頬を突いている姿に笑ってしまう。
この人懐っこさは誰に似たんだろう?
「誉君可愛いー」
優里ちゃんに頭をわしゃわしゃ撫でられて、満更でもない顔をしている。
「佐藤さん、綺麗」
頬杖をついて、まっすぐ佐藤さんを褒める。
佐藤さんは何も言わないけれど、ニコッと微笑んでいた。
「誉君、将来はプレイボーイだなー?」
優里ちゃんが言う。
「プレイボーイ?」
誉が首を傾げる。
「モテモテってこと!」
「えー!俺が?」
「そうだよー」
また頭を撫でられている。
「俺、姉ちゃんみたいな人と結婚したいな~」
急に話題を振られた上に、とんでもない告白をされてギョッとする。
それって小さい娘が父親に言うことじゃない?
「わあ!お姉ちゃんっ子だ!」
「いってー!」
急に永那ちゃんが起き上がる。
「永那ちゃん!?」
「大丈夫?」
誉が永那ちゃんの顔を覗き込む。
永那ちゃんは涙目になりながら、足元を見た。
右足を椅子の上に乗せて、小指を擦っている。
「おい、千陽だろ。っざけんな、マジで痛いんだけど」
「いつまでも寝てるからでしょ」
佐藤さんは足をブラブラさせて、謝る気は全くなさそうだ。
「なんか冷やす物持ってこようか?」
誉が永那ちゃんに話しかける。
「うぇ!?…あ、た、誉君」
永那ちゃんの声が裏返る。
「だ、大丈夫。ありがとう」
永那ちゃんはしばらく小指を擦っていた。
どんな力で踏んだんだ…。
佐藤さんが片付け始めて、優里ちゃんも慌てて片付ける。
「またこんな時間?」
永那ちゃんが項垂れる。
「永那ちゃん、ずっと寝てるからだよ」
誉が笑いかけると、永那ちゃんの耳が赤くなる。
「なんで知ってるの?」
「姉ちゃんが言ってた」
永那ちゃんは目を細めて、私をジッと見た。
「でも永那ちゃんって頭良いんだよね?」
「っえ?…ああ、どうかな?」
頭をポリポリ掻きながら、優里ちゃんへの対応と全然違って面白い。
「この人は頭がおかしいから、参考にしちゃだめだよ、誉君」
優里ちゃんが人差し指を立てながら言ってる。
「おい、優里、やめろ」
誉が永那ちゃんと優里ちゃんを交互に眺めて笑ってる。
佐藤さんがもう廊下に続くドアの前に立って暇そうにしている。
「ねえ、みんな明日も来る?」
誉が3人を見て聞く。
「明日も来ていいの?」
優里ちゃんが誉に目線を合わせて言ってくれる。
「うん、毎日来てもいいよ!」
「嬉しい!…じゃあ、明日もお邪魔しちゃおうかな?」
優里ちゃんが私をチラリと見るから、私は頷く。
今日は玄関でお見送りして、誉とリビングに戻った。
「佐藤さんは無口なんだね」
誉が楽しそうに笑う。
「永那ちゃんと優里ちゃんは面白い」
私は誉の頭を撫でる。
「俺、姉ちゃんの友達好き」
「よかった」
私達はローテーブルに移って、床に座る。
「そういえば誉、さっきのなに?」
「さっきの?」
「お姉ちゃんみたいな人と結婚したい、とか」
少し恥ずかしくなって、顔が熱くなる。
「え?…だって姉ちゃんのご飯おいしいし」
そこ?…そこなんだ。単純だなあ。
しかもそれだと、相手に作ってもらう前提だな…。
もうちょっと教育しないと、将来結婚したとき、マズいかもしれないと危機感を抱く。
「あとはー、まあ、ちょっとウザいけど、いつも勉強見てくれるとことかは、ありがたいなーって思ってるよ?」
“ちょっとウザい”は余計じゃない?
なんでお姉ちゃんには素直に褒めてくれないかな?
佐藤さんは1人でノートを眺めている。
私は優里ちゃんに数学を重点的に教えた。
「そこは穂ちゃんのノート見てわかったよ」
たまにそう褒めてくれるから、嬉しくなる。
最後は日本史の問題を出し合って、確認する。
私が教科書の隅に載っているような問題を出すと落ち込まれた。
4時前に誉が帰ってきて「また永那ちゃん寝てる!」と言って笑っていた。
永那ちゃんの顔を覗き込んで、恐る恐る頬を突いている姿に笑ってしまう。
この人懐っこさは誰に似たんだろう?
「誉君可愛いー」
優里ちゃんに頭をわしゃわしゃ撫でられて、満更でもない顔をしている。
「佐藤さん、綺麗」
頬杖をついて、まっすぐ佐藤さんを褒める。
佐藤さんは何も言わないけれど、ニコッと微笑んでいた。
「誉君、将来はプレイボーイだなー?」
優里ちゃんが言う。
「プレイボーイ?」
誉が首を傾げる。
「モテモテってこと!」
「えー!俺が?」
「そうだよー」
また頭を撫でられている。
「俺、姉ちゃんみたいな人と結婚したいな~」
急に話題を振られた上に、とんでもない告白をされてギョッとする。
それって小さい娘が父親に言うことじゃない?
「わあ!お姉ちゃんっ子だ!」
「いってー!」
急に永那ちゃんが起き上がる。
「永那ちゃん!?」
「大丈夫?」
誉が永那ちゃんの顔を覗き込む。
永那ちゃんは涙目になりながら、足元を見た。
右足を椅子の上に乗せて、小指を擦っている。
「おい、千陽だろ。っざけんな、マジで痛いんだけど」
「いつまでも寝てるからでしょ」
佐藤さんは足をブラブラさせて、謝る気は全くなさそうだ。
「なんか冷やす物持ってこようか?」
誉が永那ちゃんに話しかける。
「うぇ!?…あ、た、誉君」
永那ちゃんの声が裏返る。
「だ、大丈夫。ありがとう」
永那ちゃんはしばらく小指を擦っていた。
どんな力で踏んだんだ…。
佐藤さんが片付け始めて、優里ちゃんも慌てて片付ける。
「またこんな時間?」
永那ちゃんが項垂れる。
「永那ちゃん、ずっと寝てるからだよ」
誉が笑いかけると、永那ちゃんの耳が赤くなる。
「なんで知ってるの?」
「姉ちゃんが言ってた」
永那ちゃんは目を細めて、私をジッと見た。
「でも永那ちゃんって頭良いんだよね?」
「っえ?…ああ、どうかな?」
頭をポリポリ掻きながら、優里ちゃんへの対応と全然違って面白い。
「この人は頭がおかしいから、参考にしちゃだめだよ、誉君」
優里ちゃんが人差し指を立てながら言ってる。
「おい、優里、やめろ」
誉が永那ちゃんと優里ちゃんを交互に眺めて笑ってる。
佐藤さんがもう廊下に続くドアの前に立って暇そうにしている。
「ねえ、みんな明日も来る?」
誉が3人を見て聞く。
「明日も来ていいの?」
優里ちゃんが誉に目線を合わせて言ってくれる。
「うん、毎日来てもいいよ!」
「嬉しい!…じゃあ、明日もお邪魔しちゃおうかな?」
優里ちゃんが私をチラリと見るから、私は頷く。
今日は玄関でお見送りして、誉とリビングに戻った。
「佐藤さんは無口なんだね」
誉が楽しそうに笑う。
「永那ちゃんと優里ちゃんは面白い」
私は誉の頭を撫でる。
「俺、姉ちゃんの友達好き」
「よかった」
私達はローテーブルに移って、床に座る。
「そういえば誉、さっきのなに?」
「さっきの?」
「お姉ちゃんみたいな人と結婚したい、とか」
少し恥ずかしくなって、顔が熱くなる。
「え?…だって姉ちゃんのご飯おいしいし」
そこ?…そこなんだ。単純だなあ。
しかもそれだと、相手に作ってもらう前提だな…。
もうちょっと教育しないと、将来結婚したとき、マズいかもしれないと危機感を抱く。
「あとはー、まあ、ちょっとウザいけど、いつも勉強見てくれるとことかは、ありがたいなーって思ってるよ?」
“ちょっとウザい”は余計じゃない?
なんでお姉ちゃんには素直に褒めてくれないかな?
21
お気に入りに追加
201
あなたにおすすめの小説


百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。


体育座りでスカートを汚してしまったあの日々
yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

マッサージ
えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。
背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。
僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる