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2.変化
73.王子様
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■■■
佐藤さんから返事がなくて、戸惑う。
すごい家中見られてて少し恥ずかしい。
「あたし、空井さんの部屋見てみたい」
「え?」
「だめ?」
モテる人のテクニックなのかな?
この“だめ?”って聞くの。
まあ、永那ちゃんと一緒にいる時間が長ければ、そのうち言動も似てきたりするものなのかな?
…いつか、私も。
「いいけど」
私が自室に案内すると、佐藤さんは「わあっ」と声を出した。
そのままスポッとベッドに座る。
「ベッド広いねえ!」
「…あ、うん。セミダブルだからね。1人にしては広いよね」
佐藤さんは布団を撫でてから、部屋中を舐め回すように見る。
きっと相手が佐藤さんでなければ…例え相手が佐藤さんだったとしても、前の私であれば、私は「人の家に初めて来て、勝手にベッドに座るのはどうかと思う。まずは相手に確認を取るのが筋でしょ?」とか言ってしまいそうだ。
「あれ?穂の部屋で勉強するの?」
永那ちゃんが顔を出す。
「あたしが見たいって言ったの」
佐藤さんが答える。
「ふーん。…えっと、それで、どこで勉強する?」
「3人だし、リビングがいいかなって」
「そうだね」
永那ちゃんがリビングのローテーブルの横に鞄を置いて、床に座る。
部屋にあるローテーブルよりは広いけど、私はダイニングテーブルで勉強するつもりだったから、その姿に笑ってしまう。
視線を佐藤さんに戻すと、完全に寝転がってて驚愕する。
…すごい堂々としてるなあ。
「ねー、永那ー!」
「んー?」
「ベッドめっちゃ広いよー!」
「知ってるー」
私はギョッとして永那ちゃんを見る。
…待って。
永那ちゃん普通にトイレに入ったし、私の部屋も把握していたし、ベッドの広さも知ってるって…前に来たことあるって言ってるようなものじゃない?
ゴクリと唾を飲む。
「永那ー」
「なんだよー」
「来てよー」
佐藤さんは何も気にしてないみたいに、気づいてないみたいに振る舞う。
でも、絶対わかってるよね?
…大丈夫なのかなあ?
「なんだよ」
永那ちゃんが眉間にシワを寄せながら顔を出した。
「一緒に寝ようよー」
「はあ?勉強しにきたんでしょ?」
「ちょっとくらいいいじゃん。ねえ?」
佐藤さんに見られて、ビクッとする。
「え?…あぁ」
こういうとき、なんて答えればいいのかわからない。
人と話すときは、誉に叱るみたいに言うのが常だったから。
「千陽勉強しないなら帰れよ、マジで」
永那ちゃんの口調が荒い。
「ちょっとだけー、ねー?」
永那ちゃんがため息をついて「ごめんね」と私に言う。
「てかさ、人のベッドに勝手に寝るとか、どんな神経してんの?お前」
佐藤さんの目が薄くなる。
「空井さん、何も言ってないんだからいいじゃん」
「確認したの?」
佐藤さんの目の下がピクピク痙攣していて、本気で怒ってしまいそうだ。
「あ、あぁ、大丈夫だから」
佐藤さんの視線が私に向く。
冷めきった視線に気まずさを感じる。
「ほら、だから一緒に寝よ?」
永那ちゃんがため息をつきながら私のベッドに寝る。
その瞬間、土曜日が思い出される。
日曜日、シーツも布団も洗濯したけど、景色は変わらないから一瞬で思い出せるのが怖い。
下腹部が疼いて、目を瞑った。
へへへという幸せそうな笑い声で、私は目を開ける。
佐藤さんが永那ちゃんを抱き枕にするように寝転がっている。
眉頭に力が込もる。
「やめろよ!」
永那ちゃんが佐藤さんを突き飛ばす。
その勢いで佐藤さんが壁に頭をぶつけた。
「あ、ごめん」
佐藤さんの目に涙が浮かぶ。
「だ、大丈夫?何か冷やす物でも持ってこようか?」
佐藤さんは無反応で、ポタポタと涙を溢した。
「ごめんて」
永那ちゃんが佐藤さんの頭を撫でる。
佐藤さんは頷いて、指で涙を拭っている。
私はどうすればいいのかわからなくて、頬を掻いた。
佐藤さんから返事がなくて、戸惑う。
すごい家中見られてて少し恥ずかしい。
「あたし、空井さんの部屋見てみたい」
「え?」
「だめ?」
モテる人のテクニックなのかな?
この“だめ?”って聞くの。
まあ、永那ちゃんと一緒にいる時間が長ければ、そのうち言動も似てきたりするものなのかな?
…いつか、私も。
「いいけど」
私が自室に案内すると、佐藤さんは「わあっ」と声を出した。
そのままスポッとベッドに座る。
「ベッド広いねえ!」
「…あ、うん。セミダブルだからね。1人にしては広いよね」
佐藤さんは布団を撫でてから、部屋中を舐め回すように見る。
きっと相手が佐藤さんでなければ…例え相手が佐藤さんだったとしても、前の私であれば、私は「人の家に初めて来て、勝手にベッドに座るのはどうかと思う。まずは相手に確認を取るのが筋でしょ?」とか言ってしまいそうだ。
「あれ?穂の部屋で勉強するの?」
永那ちゃんが顔を出す。
「あたしが見たいって言ったの」
佐藤さんが答える。
「ふーん。…えっと、それで、どこで勉強する?」
「3人だし、リビングがいいかなって」
「そうだね」
永那ちゃんがリビングのローテーブルの横に鞄を置いて、床に座る。
部屋にあるローテーブルよりは広いけど、私はダイニングテーブルで勉強するつもりだったから、その姿に笑ってしまう。
視線を佐藤さんに戻すと、完全に寝転がってて驚愕する。
…すごい堂々としてるなあ。
「ねー、永那ー!」
「んー?」
「ベッドめっちゃ広いよー!」
「知ってるー」
私はギョッとして永那ちゃんを見る。
…待って。
永那ちゃん普通にトイレに入ったし、私の部屋も把握していたし、ベッドの広さも知ってるって…前に来たことあるって言ってるようなものじゃない?
ゴクリと唾を飲む。
「永那ー」
「なんだよー」
「来てよー」
佐藤さんは何も気にしてないみたいに、気づいてないみたいに振る舞う。
でも、絶対わかってるよね?
…大丈夫なのかなあ?
「なんだよ」
永那ちゃんが眉間にシワを寄せながら顔を出した。
「一緒に寝ようよー」
「はあ?勉強しにきたんでしょ?」
「ちょっとくらいいいじゃん。ねえ?」
佐藤さんに見られて、ビクッとする。
「え?…あぁ」
こういうとき、なんて答えればいいのかわからない。
人と話すときは、誉に叱るみたいに言うのが常だったから。
「千陽勉強しないなら帰れよ、マジで」
永那ちゃんの口調が荒い。
「ちょっとだけー、ねー?」
永那ちゃんがため息をついて「ごめんね」と私に言う。
「てかさ、人のベッドに勝手に寝るとか、どんな神経してんの?お前」
佐藤さんの目が薄くなる。
「空井さん、何も言ってないんだからいいじゃん」
「確認したの?」
佐藤さんの目の下がピクピク痙攣していて、本気で怒ってしまいそうだ。
「あ、あぁ、大丈夫だから」
佐藤さんの視線が私に向く。
冷めきった視線に気まずさを感じる。
「ほら、だから一緒に寝よ?」
永那ちゃんがため息をつきながら私のベッドに寝る。
その瞬間、土曜日が思い出される。
日曜日、シーツも布団も洗濯したけど、景色は変わらないから一瞬で思い出せるのが怖い。
下腹部が疼いて、目を瞑った。
へへへという幸せそうな笑い声で、私は目を開ける。
佐藤さんが永那ちゃんを抱き枕にするように寝転がっている。
眉頭に力が込もる。
「やめろよ!」
永那ちゃんが佐藤さんを突き飛ばす。
その勢いで佐藤さんが壁に頭をぶつけた。
「あ、ごめん」
佐藤さんの目に涙が浮かぶ。
「だ、大丈夫?何か冷やす物でも持ってこようか?」
佐藤さんは無反応で、ポタポタと涙を溢した。
「ごめんて」
永那ちゃんが佐藤さんの頭を撫でる。
佐藤さんは頷いて、指で涙を拭っている。
私はどうすればいいのかわからなくて、頬を掻いた。
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