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1.恋愛初心者
28.彼女
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今まで、誰かに本気で恋をしたことがなかった。
中学のとき、先輩に迫られて、断れなくて流れで女同士でセックスしたのが初めてだった。
ちょうどお母さんがおかしくなり始めたばかりのときで、ストレスも今より凄かったから、セックスは良いストレス発散になった。
何度か先輩とセックスして、でも次第に恋人面されたのがなんだか癪に障って振った。
彼女は泣いていたけど、なんとも思わなかった。自分はなんて冷たい人間なんだろう?と、自分が嫌いになった。
それから、都合よく私は男女関係なくモテて、男ともセックスしてみた。純粋に「女の方がいいな」と思った。
私はどちらかというと、攻められるよりも攻めたいのだとわかった。
男に対してだって攻めることはできるけど、なんというか、“女”という性が強調されるみたいで、単純に男とのセックスに嫌悪感を抱いた。
それから私を好きだと言った後輩の女の子数人ともヤったし、同級生、先輩ともヤった。
ただ、ストレス発散でしかなかった。
不思議と、千陽にはそんな気が起きない。
あいつはやたら誘ってくるような素振りをみせるし、普通に可愛いし、手を出しても問題ないように思えるのに、その気にならない。
“友達”って思ってるからなのかな?
…いや、それもわからない。
そんなことより。
昨日のデートで穂のことをいろいろ知れた。
彼女は今まで誰とも付き合ったことがないという。
あの性格からして、付き合わずにキスやセックスをするとは思えない。
つまり、彼女は純白なのだ。
こんな汚れた自分が、彼女を簡単に汚してはいけない。
やるときは、ちゃんと最高のシチュエーションを考えないと。
“いたずらしちゃいますよ”
脳裏に蘇って、下腹部が疼く。
目を閉じて、フゥーッと息を吐く。
…意外と、私の予想に反して、今までも誰かにあんなことを言っていたりするのだろうか?
だとすれば、私みたいに、付き合ってなくても…なんてことがあったりするのだろうか?
私が告白した後、顔を近づけたら、彼女は目を瞑った。
キスし慣れてる…とも考えられるのか?
ううう、わからん。
枕に顔をうずめて、足をバタバタさせる。
…嫌だな。
もし彼女が、いろんな人に対してあんなふうに接しているのなら。
私だけがいい。
彼女が好きなのは、私だけがいい。
「ハァ」と大きなため息が出る。
恋ってこんなに辛いんだな。初めて知った。
振ったとき、先輩が泣いた気持ちが、今更になってわかるような気がした。
翌日、起きても教室には誰もいなかった。
穂の机を見ると、鞄が机に乗っていてホッとする。
外は真っ暗で、窓に雨が打ち付けられていた。
伸びをしていたら、扉が開く音がする。
振り向くと穂と目が合って、嬉しくなる。
…でも、隣にはいつか見たことのある男が立っていた。
地響きを鳴らして雷が落ちた。
彼女が…穂が、男の腕に抱きついた。
沸騰しそうな頭と、ズキズキと抉るような痛みが心に走る。
男が、怯えた穂の背中に手を回す。
ガリッと奥歯を強く噛む。
穂に「家まで送る」と言っても、男が返事をしてくる。
怒りが最高潮に達して、男に殴りかかりたくなる気持ちを必死に抑える。
暴力を振るうなんてありえない。父親と同じだなんて、思いたくもないから。
ふと視界に入った穂が、怯えているように見えた。
その表情に、心がズキリと痛む。
冷静さを少し取り戻して、私はフゥーッと息を吐く。
なんとか気持ちと顔を取り繕う。
そういうのは、得意なんだ。
「んじゃ穂、また明日ね」
明日、絶対に2人きりで話そうね。
シトシトと雨が降る。
昨日みたいに雷でも鳴っていたら、今度は私が穂に抱きつかれるのに…と、空を睨む。
放課後になって、千陽が近づいてくる気配がする。
でも今はそんなのにかまってる場合じゃない。
昼休みに、今日の掃除当番は確認済みだ。
私は彼ら彼女らにちゃんと掃除をするように伝えて、すぐに穂の腕を掴んだ。
穂が何か言っているけど、聞こえない。
教室から逃げるように、あの男に見つからないように、私は穂を引っ張りながらあてもなく歩く。
とにかく人気のない場所を…と思うのだけど、雨が降ってるから屋内に限られるのがもどかしい。
視界に、渡り廊下に続く扉が見えた。
渡り廊下の先には体育館しかない。体育館から生徒の声が聞こえる。
だから途中の自販機の前で立ち止まって、彼女を押しつけた。
中学のとき、先輩に迫られて、断れなくて流れで女同士でセックスしたのが初めてだった。
ちょうどお母さんがおかしくなり始めたばかりのときで、ストレスも今より凄かったから、セックスは良いストレス発散になった。
何度か先輩とセックスして、でも次第に恋人面されたのがなんだか癪に障って振った。
彼女は泣いていたけど、なんとも思わなかった。自分はなんて冷たい人間なんだろう?と、自分が嫌いになった。
それから、都合よく私は男女関係なくモテて、男ともセックスしてみた。純粋に「女の方がいいな」と思った。
私はどちらかというと、攻められるよりも攻めたいのだとわかった。
男に対してだって攻めることはできるけど、なんというか、“女”という性が強調されるみたいで、単純に男とのセックスに嫌悪感を抱いた。
それから私を好きだと言った後輩の女の子数人ともヤったし、同級生、先輩ともヤった。
ただ、ストレス発散でしかなかった。
不思議と、千陽にはそんな気が起きない。
あいつはやたら誘ってくるような素振りをみせるし、普通に可愛いし、手を出しても問題ないように思えるのに、その気にならない。
“友達”って思ってるからなのかな?
…いや、それもわからない。
そんなことより。
昨日のデートで穂のことをいろいろ知れた。
彼女は今まで誰とも付き合ったことがないという。
あの性格からして、付き合わずにキスやセックスをするとは思えない。
つまり、彼女は純白なのだ。
こんな汚れた自分が、彼女を簡単に汚してはいけない。
やるときは、ちゃんと最高のシチュエーションを考えないと。
“いたずらしちゃいますよ”
脳裏に蘇って、下腹部が疼く。
目を閉じて、フゥーッと息を吐く。
…意外と、私の予想に反して、今までも誰かにあんなことを言っていたりするのだろうか?
だとすれば、私みたいに、付き合ってなくても…なんてことがあったりするのだろうか?
私が告白した後、顔を近づけたら、彼女は目を瞑った。
キスし慣れてる…とも考えられるのか?
ううう、わからん。
枕に顔をうずめて、足をバタバタさせる。
…嫌だな。
もし彼女が、いろんな人に対してあんなふうに接しているのなら。
私だけがいい。
彼女が好きなのは、私だけがいい。
「ハァ」と大きなため息が出る。
恋ってこんなに辛いんだな。初めて知った。
振ったとき、先輩が泣いた気持ちが、今更になってわかるような気がした。
翌日、起きても教室には誰もいなかった。
穂の机を見ると、鞄が机に乗っていてホッとする。
外は真っ暗で、窓に雨が打ち付けられていた。
伸びをしていたら、扉が開く音がする。
振り向くと穂と目が合って、嬉しくなる。
…でも、隣にはいつか見たことのある男が立っていた。
地響きを鳴らして雷が落ちた。
彼女が…穂が、男の腕に抱きついた。
沸騰しそうな頭と、ズキズキと抉るような痛みが心に走る。
男が、怯えた穂の背中に手を回す。
ガリッと奥歯を強く噛む。
穂に「家まで送る」と言っても、男が返事をしてくる。
怒りが最高潮に達して、男に殴りかかりたくなる気持ちを必死に抑える。
暴力を振るうなんてありえない。父親と同じだなんて、思いたくもないから。
ふと視界に入った穂が、怯えているように見えた。
その表情に、心がズキリと痛む。
冷静さを少し取り戻して、私はフゥーッと息を吐く。
なんとか気持ちと顔を取り繕う。
そういうのは、得意なんだ。
「んじゃ穂、また明日ね」
明日、絶対に2人きりで話そうね。
シトシトと雨が降る。
昨日みたいに雷でも鳴っていたら、今度は私が穂に抱きつかれるのに…と、空を睨む。
放課後になって、千陽が近づいてくる気配がする。
でも今はそんなのにかまってる場合じゃない。
昼休みに、今日の掃除当番は確認済みだ。
私は彼ら彼女らにちゃんと掃除をするように伝えて、すぐに穂の腕を掴んだ。
穂が何か言っているけど、聞こえない。
教室から逃げるように、あの男に見つからないように、私は穂を引っ張りながらあてもなく歩く。
とにかく人気のない場所を…と思うのだけど、雨が降ってるから屋内に限られるのがもどかしい。
視界に、渡り廊下に続く扉が見えた。
渡り廊下の先には体育館しかない。体育館から生徒の声が聞こえる。
だから途中の自販機の前で立ち止まって、彼女を押しつけた。
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