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1.恋愛初心者
11.好きってなに?
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教室の半分を掃除し終えて、机を反対側に寄せようとしたところで日住君はやって来た。
永那ちゃんは相変わらず寝ている。
「手伝います」
「悪いよ」
「大丈夫です」
「ありがとう…」
日住君は私の倍のペースで机を運んでいく。床掃除も手伝ってくれて、ゴミ袋の取り替えもしてくれた。なんとも手際が良い。
ゴミ袋を校舎裏に持っていく。
こうして、誰かとちゃんと最後まで掃除ができたのはいつぶりだろう?5月の頭くらいから1人でやっていた気がするから、1ヶ月ぶりくらい?
「今日はすごい土砂降りですね」
「そうだね、土日は晴れてたのに」
傘を差しながら、日住君が手伝ってくれて本当に良かったと心底思う。1人で校舎裏までゴミ袋を運ぶのは、きっと大変だっただろうから。
1人なら、屋根のあるところに1度半分のゴミ袋を置いてから集積所に行かなければならない。往復する手間を考えると、2人でやったほうが早いし楽だ。
集積所に入ってゴミの仕分けをしていると「どこでお話します?」と聞かれた。
「うーん…駅前のカフェとかはどうかな?」
「カフェですか」
「あ、嫌だった?」
「いえ、むしろ嬉しいです」
カフェ、好きなのかな?
「それなら、良かった」
教室に戻ると、永那ちゃんが伸びをしていた。
「お!おかえり」
まだ眠そうな顔をしながら、ニコッと笑ってくれる。
それだけのことなのに、胸をギュッと捕まれた感覚に陥る。
「ども」
日住君が軽く会釈する。
窓の外がピカッと光り、すぐにドーンと轟音が鳴った。
「いやっ!」
思わず横にいた日住君の腕にすがる。
私は小さい頃から雷が大の苦手だった。雷雨の時だけは、いつも誉がいてくれて良かったと安心したものだった。
「先輩…っ!大丈夫ですか?」
「だ、ダイジョブ。ごめんね」
恥ずかしくなって、前髪を指で梳く。
「きっと近くに落ちましたね」
日住君が優しく背中をトントンと叩いてくれた。それに少し驚いて、肩がピクリと上がる。
「ところで、なんで後輩君が教室にいるの?」
いつもより声のトーンが低い永那ちゃんは、頬杖をついてこちらを眺めていた。
「ああ、それは」
日住君が言いかけて、私は遮るように「私が掃除の手伝いをお願いしたの」と言った。
「ふーん」
日住君は頷いて、私の机に置いていた鞄を取りに行く。私もその後を追うけれど、永那ちゃんの視線がなんだか痛い。
「穂」
学校でその名前を呼ばれるのは小学生ぶりで、ドキッとする。
「今日は私が家まで送るよ」
永那ちゃんから目が離せなくて、なんだか背筋がゾワゾワする。
「すみません、先輩。この後、空井先輩と用事があるので」
「じゃあ、待ってる」
なんだか険悪な雰囲気。
日住君の声も、いつもより低くなっている。喧嘩でも始まりそうで、少し怖い。遠くでゴロゴロと雷も鳴っているし、私は固まることしかできないでいる。
「いや、待たれても…。2人で外に出るんで」
永那ちゃんの目がどんどん細くなっていき、深く息を吸いながら顎を上げる。
彼女は座っているから私達よりも視線が下なはずなのに、見下ろされているような圧を感じる。
チラリと私に目を遣ると、彼女はフゥーッと息を吐いて立ち上がった。
俯いて、前髪が垂れ下がり、永那ちゃんの表情は見えない。
緊張でドクドクと鼓動が速くなる。
日住君も永那ちゃんも、いつものやわらかい雰囲気が全くない。
なぜこんなことになってるのか、まるで検討もつかなくて、意味もなく手をグーパーグーパーさせる。
パッと顔を上げた永那ちゃんは、いつもの笑顔で「そっか」と言った。
その笑顔にホッとする。
「んじゃ穂、また明日ね」
「うん、また明日」
ヒヤリと汗がひとすじ垂れる。
永那ちゃんは相変わらず寝ている。
「手伝います」
「悪いよ」
「大丈夫です」
「ありがとう…」
日住君は私の倍のペースで机を運んでいく。床掃除も手伝ってくれて、ゴミ袋の取り替えもしてくれた。なんとも手際が良い。
ゴミ袋を校舎裏に持っていく。
こうして、誰かとちゃんと最後まで掃除ができたのはいつぶりだろう?5月の頭くらいから1人でやっていた気がするから、1ヶ月ぶりくらい?
「今日はすごい土砂降りですね」
「そうだね、土日は晴れてたのに」
傘を差しながら、日住君が手伝ってくれて本当に良かったと心底思う。1人で校舎裏までゴミ袋を運ぶのは、きっと大変だっただろうから。
1人なら、屋根のあるところに1度半分のゴミ袋を置いてから集積所に行かなければならない。往復する手間を考えると、2人でやったほうが早いし楽だ。
集積所に入ってゴミの仕分けをしていると「どこでお話します?」と聞かれた。
「うーん…駅前のカフェとかはどうかな?」
「カフェですか」
「あ、嫌だった?」
「いえ、むしろ嬉しいです」
カフェ、好きなのかな?
「それなら、良かった」
教室に戻ると、永那ちゃんが伸びをしていた。
「お!おかえり」
まだ眠そうな顔をしながら、ニコッと笑ってくれる。
それだけのことなのに、胸をギュッと捕まれた感覚に陥る。
「ども」
日住君が軽く会釈する。
窓の外がピカッと光り、すぐにドーンと轟音が鳴った。
「いやっ!」
思わず横にいた日住君の腕にすがる。
私は小さい頃から雷が大の苦手だった。雷雨の時だけは、いつも誉がいてくれて良かったと安心したものだった。
「先輩…っ!大丈夫ですか?」
「だ、ダイジョブ。ごめんね」
恥ずかしくなって、前髪を指で梳く。
「きっと近くに落ちましたね」
日住君が優しく背中をトントンと叩いてくれた。それに少し驚いて、肩がピクリと上がる。
「ところで、なんで後輩君が教室にいるの?」
いつもより声のトーンが低い永那ちゃんは、頬杖をついてこちらを眺めていた。
「ああ、それは」
日住君が言いかけて、私は遮るように「私が掃除の手伝いをお願いしたの」と言った。
「ふーん」
日住君は頷いて、私の机に置いていた鞄を取りに行く。私もその後を追うけれど、永那ちゃんの視線がなんだか痛い。
「穂」
学校でその名前を呼ばれるのは小学生ぶりで、ドキッとする。
「今日は私が家まで送るよ」
永那ちゃんから目が離せなくて、なんだか背筋がゾワゾワする。
「すみません、先輩。この後、空井先輩と用事があるので」
「じゃあ、待ってる」
なんだか険悪な雰囲気。
日住君の声も、いつもより低くなっている。喧嘩でも始まりそうで、少し怖い。遠くでゴロゴロと雷も鳴っているし、私は固まることしかできないでいる。
「いや、待たれても…。2人で外に出るんで」
永那ちゃんの目がどんどん細くなっていき、深く息を吸いながら顎を上げる。
彼女は座っているから私達よりも視線が下なはずなのに、見下ろされているような圧を感じる。
チラリと私に目を遣ると、彼女はフゥーッと息を吐いて立ち上がった。
俯いて、前髪が垂れ下がり、永那ちゃんの表情は見えない。
緊張でドクドクと鼓動が速くなる。
日住君も永那ちゃんも、いつものやわらかい雰囲気が全くない。
なぜこんなことになってるのか、まるで検討もつかなくて、意味もなく手をグーパーグーパーさせる。
パッと顔を上げた永那ちゃんは、いつもの笑顔で「そっか」と言った。
その笑顔にホッとする。
「んじゃ穂、また明日ね」
「うん、また明日」
ヒヤリと汗がひとすじ垂れる。
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