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彼は、私のシャツのボタンを外し終えていた。
キャミソールを捲し上げないまま、ブラの中に手を突っ込んだ。
(キャミソールが伸びちゃうよ……)
どこか呑気に、でも深刻に そう思った。
乱暴な彼の手つきに優しさは感じられず、置いていかれたような気持ちになった。
無抵抗なまま 胸はさらけ出され、彼は赤ん坊みたいに 乳首に吸い付いた。
翔太は、高校から私のことを好きになったと言ったけど、思い返してみれば 進学して早々に彼女を作っていた。
校内でも、わりとヤンチャな人たちとつるむようになっていたし、私は 本当に ヤるためだけに告白されたのかもしれない。
ヤンチャな人と仲良くしてても、変わらず私と仲良くしてくれていたから、勘違いしちゃったな。
好きでもない人と付き合う代償を知った日だった。
翔太のことが好きだったら、こうされて きっと嬉しいはずなんだ。
私の胸に夢中になっていた彼が、ふと顔をあげた。
細い目をまん丸くして、慌てて手を退いた。
「ごめん」
彼は起き上がり、いつもの優しい顔に戻った。
「ごめん、痛かった?俺、つい……」
「ううん、私こそ ごめんね」
溢れ出る涙は止まらなくて、堪えようとすればするほど わんわんと泣き出してしまいそうになった。
「今日は、やめとこうか。急すぎたよね」
申し訳なさそうに謝る彼が、わからなかった。
お茶とお菓子を出してくれて、彼の 他愛ない話を聞いた。
日も暮れた頃、ちゃんと家まで送ってくれる翔太は、私の知ってる翔太だった。
家についても、翔太の手の感覚が残っていた。
胸の痛みが尾を引くように続く。
その日、私は、吐いた。
何度も翔太のニヤついた顔が思い浮かんで、そのたびに 自分の体が気持ち悪く感じた。
翔太の体温と汗が、妙に肌に合わなくて、余計に気持ち悪くなった。
それでも数ヶ月、彼と付き合い続けたのは、せめてもの罪滅ぼしのつもりだった。
今考えれば、すぐに別れた方がよかったんだとわかる。
別れれば、彼はまた別の人を好きになり、別の人とセックスできたんだから。
彼は何度も私とセックスしようと試みた。
そのたびに私は、怖くなって 気持ち悪くなって、彼を拒絶した。
もう、彼の匂いを嗅ぐだけで、ダメだった。
「ただ抱きしめるだけだから」と 彼は優しい声で言い、ベッドに横たわった。
ゴツゴツした腕は、まくらとしては あまりに硬く感じた。
「別れようか」
翔太は声を震わせて言った。
申し訳なさで、心が潰れそうになった。
「ごめんね」
私が謝ると、彼はポンポンと私の頭を撫でた。
友達としての長い付き合いは、たった半年弱の恋人ごっこで 消え去った。
全部、私のせいだった。
*
翔太と別れて、私は受験勉強に集中した。
宝城 一と同じ大学を受けたのは、全然知らなかった。
学部も違ったし、しばらく いっちゃんが同じ学校にいることすら知らなかった。
昔から自分は、かっこいい女の人に惹かれる傾向があると なんとなく思っていた。
幼稚園のときも、中性的な低音ボイスの女性の先生が好きだった。
小学生のときは、運動が得意で 髪の短い同級生の女の子が好きだった。
当時は 恋愛の好きかどうかなんてわからなかったけど、今思えば あれは恋だったんだと思う。
翔太とのこともあったし、私はもう 男性とは付き合えない性格なんだと思った。
だから試しに、SNSのレズビアンの人たちとつながってみることにした。
確証はもてないまま、なんとなく始めたSNSは 不思議な空間だった。
普通じゃないと思っていたことが、まるで当たり前のことのように思えてくる。
こんなにもたくさん、同性愛者の人がいるなんて、考えもしなかった。
そこで私は、千尋に出会った。
キャミソールを捲し上げないまま、ブラの中に手を突っ込んだ。
(キャミソールが伸びちゃうよ……)
どこか呑気に、でも深刻に そう思った。
乱暴な彼の手つきに優しさは感じられず、置いていかれたような気持ちになった。
無抵抗なまま 胸はさらけ出され、彼は赤ん坊みたいに 乳首に吸い付いた。
翔太は、高校から私のことを好きになったと言ったけど、思い返してみれば 進学して早々に彼女を作っていた。
校内でも、わりとヤンチャな人たちとつるむようになっていたし、私は 本当に ヤるためだけに告白されたのかもしれない。
ヤンチャな人と仲良くしてても、変わらず私と仲良くしてくれていたから、勘違いしちゃったな。
好きでもない人と付き合う代償を知った日だった。
翔太のことが好きだったら、こうされて きっと嬉しいはずなんだ。
私の胸に夢中になっていた彼が、ふと顔をあげた。
細い目をまん丸くして、慌てて手を退いた。
「ごめん」
彼は起き上がり、いつもの優しい顔に戻った。
「ごめん、痛かった?俺、つい……」
「ううん、私こそ ごめんね」
溢れ出る涙は止まらなくて、堪えようとすればするほど わんわんと泣き出してしまいそうになった。
「今日は、やめとこうか。急すぎたよね」
申し訳なさそうに謝る彼が、わからなかった。
お茶とお菓子を出してくれて、彼の 他愛ない話を聞いた。
日も暮れた頃、ちゃんと家まで送ってくれる翔太は、私の知ってる翔太だった。
家についても、翔太の手の感覚が残っていた。
胸の痛みが尾を引くように続く。
その日、私は、吐いた。
何度も翔太のニヤついた顔が思い浮かんで、そのたびに 自分の体が気持ち悪く感じた。
翔太の体温と汗が、妙に肌に合わなくて、余計に気持ち悪くなった。
それでも数ヶ月、彼と付き合い続けたのは、せめてもの罪滅ぼしのつもりだった。
今考えれば、すぐに別れた方がよかったんだとわかる。
別れれば、彼はまた別の人を好きになり、別の人とセックスできたんだから。
彼は何度も私とセックスしようと試みた。
そのたびに私は、怖くなって 気持ち悪くなって、彼を拒絶した。
もう、彼の匂いを嗅ぐだけで、ダメだった。
「ただ抱きしめるだけだから」と 彼は優しい声で言い、ベッドに横たわった。
ゴツゴツした腕は、まくらとしては あまりに硬く感じた。
「別れようか」
翔太は声を震わせて言った。
申し訳なさで、心が潰れそうになった。
「ごめんね」
私が謝ると、彼はポンポンと私の頭を撫でた。
友達としての長い付き合いは、たった半年弱の恋人ごっこで 消え去った。
全部、私のせいだった。
*
翔太と別れて、私は受験勉強に集中した。
宝城 一と同じ大学を受けたのは、全然知らなかった。
学部も違ったし、しばらく いっちゃんが同じ学校にいることすら知らなかった。
昔から自分は、かっこいい女の人に惹かれる傾向があると なんとなく思っていた。
幼稚園のときも、中性的な低音ボイスの女性の先生が好きだった。
小学生のときは、運動が得意で 髪の短い同級生の女の子が好きだった。
当時は 恋愛の好きかどうかなんてわからなかったけど、今思えば あれは恋だったんだと思う。
翔太とのこともあったし、私はもう 男性とは付き合えない性格なんだと思った。
だから試しに、SNSのレズビアンの人たちとつながってみることにした。
確証はもてないまま、なんとなく始めたSNSは 不思議な空間だった。
普通じゃないと思っていたことが、まるで当たり前のことのように思えてくる。
こんなにもたくさん、同性愛者の人がいるなんて、考えもしなかった。
そこで私は、千尋に出会った。
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