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1. No pain, No gain.
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しおりを挟む颯の活躍を労うために、それから壱歩が誕生日を迎え成人となったため、僕と颯で飲みに行くことになった。僕と壱歩はレモンサワーで、颯はピーチサワーで乾杯した。いきなり生ビールを飲む勇気は、誰も持っていなかった。生ビールは苦いだけではなく、コクと香りも美味しいと大人たちは言う。僕は未だ、"コク"の正体を明かせずにいる。
「野球を辞めた時、なんとも思わなかった。悔しいだとか、辛いだとか。あれだけ熱中していたのに」
旬のぶりの刺身に舌鼓を打ちながら、僕たちは静かに颯の話を聞いていた。
「辞めたいって言ったんだ。割と仲が良かった人に。そしたら、いいんじゃない、て。あっさり過ぎて。まぁ、俺なんか影薄いしレギュラーでもないし。分かっていたけど、軽くショックだったな」
颯は枝豆を一粒放り込んだ。颯の、野球を辞めた時の気持ちは、僕が感情を出しづらくなったことと似ていると思った。
「大丈夫、野球だけが人生じゃないよ。これからやってみたいこととかあるの?」
壱歩が悟ったような言葉をかかる。
「バイトして、野球以外の色んなことを経験したい」
颯は卵焼きにマヨネーズをつけて食べた。僕が彼らに勧めた卵焼き。居酒屋のそれは、どれもふわふわしていて甘みがあって、家で作れないから来ると毎回頼んでしまう。
店内はほぼ満席で、店員さんは世話しなく動いていた。料理や酒を待っている間、沈黙する場面があった。隣で飲んでいた集団客の会話が、自然と耳に入る。
「昔はさ、飲酒運転は当たり前だったんだよね。だから、最近は世知辛くなったというか」
「そうそう。軽く酔っていただけで受け答えができれば、甘く見てくれた警察官もいたなぁ」
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