Rabbit foot

Suzuki_Aphro

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1. No pain, No gain.

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 コン、コン、コン。

 ゆっくりと片目を開ける。軽快なノック音の合間に籠ったような音。その正体は、警察官たちが車窓越しに俺たちへ呼びかけている音だった。

 急いで起き上がる。颯は熟睡しているが、勝矢は目を覚ましたようだ。体中が痛みだす中、手を伸ばしエンジンスタートボタンを押した。カーナビが起動したため、オーディオをオフにする。ディスプレイには9時32分と表示されていた。

 3分の1ほど下がったところで、パワーウィンドウを止める。

「突然すみませんね」

 中年の男性警察官が、帽子のつばを持ちながら言った。

「いえ…。あの、何か…」

 無断駐車か、パトロールに来ただけか、それとも。

「この車、君の?」

「違います。これは、はや…彼のです。すみません、熟睡しているみたいです」

「えっと、君たちは大学生?身分証明できるものある?」

「大学生ですけど…免許証なら」

 免許証を取り出そうとポケットに手を入れた。

 あれ?

 背筋に一筋の汗が流れた。ポケットから、財布が失くなっている。

「あ、あれ…。どこ置いたっけ…」

 俺はドリンクホルダーの底や座席の下を探す。

 ない、ない、ない―。

 財布を颯の車に置いた記憶はないし、最後に財布をしまったのはいつだ。思い出せない。事故現場付近の階段に落としてしまったのか。

 警官が不審がっていると、勝矢が助け船を出してくれた。

「すみません、これって何の聴取ですか?強制ではないんですよね?僕たち、ただ休んでいただけですが。身分証まで提示する必要あります?」
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