君に恋したのは二度目だと言われても(あなた前世からのストーカーですか?)

光月海愛(こうつきみあ)

文字の大きさ
5 / 5

しおりを挟む
「え、発掘に行くんですか!?」

「そう。一年生は大学指定の場所だけどね」

 嬉しいことに入学して間もない一年生も、史跡へ発掘調査に行けるらしい。それを聞いたハリエットの顔がニヤけていく。

 場所はペア・レジスという南にある海岸沿いの町。そこは、市民がツアーで化石発掘を楽しむ場所でもあり、二年生以上は何度も足を運んでいるらしい。

「そんなに期待して行くと貝掘り程度の発掘なんだからガッカリするよ。まぁ、ハリエットは女の子だからそれくらいがいいのかもしれないが」

 二年生のジョーンズが先輩風を吹かしつつ、ハリエットを女の子扱いする。

「ガッカリなんてしないわ。発掘できたら葉っぱだってなんだっていい。来年になったらミスター・ジョーンズより世紀の大発見してみせるから」

「そんな強気な君もミイラを見たら腰を抜かすさ」

「ミイラも、なんならお化けだって大歓迎よ!」

「ほんとかぁ?」

「いや、ハリエットならサタンが現れてもマジで平気そうだよ」

 ははは、と笑い合う、和やかな空気の中で、一人、隅で静かに本を読んでいるのがダニーだ。
 研究室では、皆で意見を出し合って進めていくものだが、彼は自らそこに入ってくることはない。

(一体、何をするためにこの学部を専攻してるの?)

 そう訝しがっているのはハリエットだけじゃなかった。


「ミスター・グリフィン。貴方も参加するんだよね?」

 ジョーンズが彼に声を掛け、彼が読んでいた本に注視する。

「……行くよ」

 ダニーが顔を上げずに答えた。声にも愛想の欠片も無かった。

「さっきから何の本を読んでるのかと思ったら、考古学や歴史とは無関係っぽいね」

「全く関係ないこともない」

 短く反論していたダニーが読んでいた本は、

「"魔術の部屋"? これが僕らの学習との共通点あるって?」

 紳士淑女が読むにはちょっとオタク色の強いものだった。ハリエット以外の生徒達がどよめく。

「魔術ってタロットだとか占星術だとか人の心理の隙間をついて騙すものじゃん。僕らは確実に物的証拠や材料から歴史や人物学を学ぶから、全く目的が違うと思うんだよね」

 ジョーンズは、元から貴族であるダニーの事が気に入らないのか、ちょっと攻撃的だ。
 この大学では、学費を納め、それなりの成績評価を出していれば爵位などの社会階級は関係ないから、こういった反論も無礼とはされない。

 険しいダニーの目つきがさらに鋭くつり上がり、ジョーンズを捉えている。
 この冷たい瞳にハートを撃ち抜かれた女子学生が多いのも事実で、彼目当てに考古学に専攻を変えた者もいるらしい。
 そのことが余計にジョーンズの癪に障ったようだ。

「そもそも君は何のために考古学部にいるのか、やる気が無いなら他に移るべ……」
「史跡も魔術も人が残した文化に間違いないんじゃない?」

 ここでハリエットが口出しをした。

「科学が発達した今でも魔術を主とした教団や組織はあるし、それが歴史に与えてきた背景もある。今回のペア・レジスでは関連性はないけど、オカルトな知識が必要な時もでてくるわ」

「チッ」

 と、舌打ちし、ジョーンズはダニーに絡むのをやめて、他のグループのところへ行ってしまった。おまけに、

「俺を庇ったつもりなら余計な御世話だ」

 ダニーからは、疎ましさ満開の視線を向けられる。

「あ、そう。別に庇ったつもりもないけど、でももう少し皆と距離を縮めた方が良いと思うわ。社会に出ても何かしら繋がってくる人もいるわけだし」

「君のように男にチヤホヤされて人気者になったつもりでいる方が見ていて痛々しいよ。もう少し男性との距離をとった方が良いんじゃないか? 淑女の振る舞いとしては、ね」

(痛々しいって……)

 ハリエットは、やはりダニーには嫌われてるのだと感じた。

(きっと、私のことを軽薄な女だと思ってるんだ)

 別に、構わない。
 元々極力関わらないと決めた。彼がああいう態度ならば、そのうち学部でも居づらくなって消えていくに違いない。

 ハリエットはダニーの気持ちなど知らずに、ただ彼に呆れていた。


 そして。
 楽しみにしていた、初めての発掘の日を迎えた。


しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

貴方なんて大嫌い

ララ愛
恋愛
婚約をして5年目でそろそろ結婚の準備の予定だったのに貴方は最近どこかの令嬢と いつも一緒で私の存在はなんだろう・・・2人はむつまじく愛し合っているとみんなが言っている それなら私はもういいです・・・貴方なんて大嫌い

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

なぜ、私に関係あるのかしら?

シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」 彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。 そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。 「…レオンハルト・トレヴァントだ」 非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。 そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。 「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」 この判断によって、どうなるかなども考えずに… ※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。 ※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、 ※ 画像はAIにて作成しております

【書籍化】番の身代わり婚約者を辞めることにしたら、冷酷な龍神王太子の様子がおかしくなりました

降魔 鬼灯
恋愛
 コミカライズ化決定しました。 ユリアンナは王太子ルードヴィッヒの婚約者。  幼い頃は仲良しの2人だったのに、最近では全く会話がない。  月一度の砂時計で時間を計られた義務の様なお茶会もルードヴィッヒはこちらを睨みつけるだけで、なんの会話もない。    お茶会が終わったあとに義務的に届く手紙や花束。義務的に届くドレスやアクセサリー。    しまいには「ずっと番と一緒にいたい」なんて言葉も聞いてしまって。 よし分かった、もう無理、婚約破棄しよう! 誤解から婚約破棄を申し出て自制していた番を怒らせ、執着溺愛のブーメランを食らうユリアンナの運命は? 全十話。一日2回更新 完結済  コミカライズ化に伴いタイトルを『憂鬱なお茶会〜殿下、お茶会を止めて番探しをされては?え?義務?彼女は自分が殿下の番であることを知らない。溺愛まであと半年〜』から『番の身代わり婚約者を辞めることにしたら、冷酷な龍神王太子の様子がおかしくなりました』に変更しています。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

離婚した彼女は死ぬことにした

はるかわ 美穂
恋愛
事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。 もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。 今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、 「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」 返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。 それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。 神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。 大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。

私のことを愛していなかった貴方へ

矢野りと
恋愛
婚約者の心には愛する女性がいた。 でも貴族の婚姻とは家と家を繋ぐのが目的だからそれも仕方がないことだと承知して婚姻を結んだ。私だって彼を愛して婚姻を結んだ訳ではないのだから。 でも穏やかな結婚生活が私と彼の間に愛を芽生えさせ、いつしか永遠の愛を誓うようになる。 だがそんな幸せな生活は突然終わりを告げてしまう。 夫のかつての想い人が現れてから私は彼の本心を知ってしまい…。 *設定はゆるいです。

処理中です...