ー密 会ー溺れる前に抱き止めて 【最後にSS】

光月海愛(こうつきみあ)

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determination 決意

将来

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   葉築さんは、好きなの?」

 「俺は、場所には拘らない」

  葉築さんの呼吸が少し上がってきてるのを感じた。

   ……シたいんだなって、分かったけれど。


  「私は、あんまりお風呂じゃ濡れないの……」

   素っ気ない返事をしてしまった。

   今夜は、今後の事を、ちゃんと話したいと思っていたから。

  「蛇の生殺しじゃないか」

  「お風呂でシたら、もう夕飯なんて作れないもの」

  「そんなん良いよ、テイクアウトで」

  「ダメ。材料買ってるから」

  「えー~~」

   まるで、子供みたい。

   私に、冷たくしていた頃の葉築さんが嘘みたいだ。

  「……じゃあ、特別ね」

   私は、彼の自己主張した部分に手を伸ばした。


   繋がるわけでもなく、私の口を使うわけでもなく……

   ーー 葉築さんは、私の手の中でイッてしまった。


  「あぁ、……なんか情けねぇなぁ……」

  彼が屈辱的な声を出し、浴室に虚しく響く。

  「そんなことない」

  「足さえケガしてなかったら、無理やりヤってたかも」

  「だからお風呂じゃ濡れないんだって」

   拘束したり、押さえつけたりと、あんなに攻撃的なセックスをしていたのに、今は、立場が逆になったみたい。

 「前の伊織なら、流されて絶対ここでもシてたよな?」

 「どうだろ? 」

 「なんか、強くなったな」

  「……」


   そうなのかな?
   そんなことはないけれど。

   確かに、流される事は減ったかもしれない。


 「とりあえずご飯作るね」

  葉築さんよりも先に上がって準備を急いだ。


  もしかしたら。

  最後になるかもしれない、彼との食事のーー





   お風呂から上がり、髪を乾かした葉築さんは、持参のパジャマに着替えていた。

   なんか、新鮮……。ちょっとサイズが大きいみたい。

   料理を並べながら見つめていたら、

 「あ……やっぱ、変だよな? モロにパジャマだもんな。病院、こんなのしか売ってなかったんだよ」

   ちょっと、気恥ずかしそうにしていた。

  「変じゃないよ。似合ってるよ」

  「………あっ! オムライスじゃん? 卵の匂いすると思った!」

   テーブルの料理を見ると、崩れそうなくらい、顔をほころばせる。

 「すげー、ミネストローネもあるんだ。あ、サラダにはマヨネーズかけていい?」

 「マヨラーなの? 一応ドレッシングかけてるよ」

 「卵でできた物は何でも好きなんだ」

   食欲旺盛の葉築さんは、あっという間に完食してしまった。



   食事中、お酒を一滴も飲まなかった葉築さんに、

 「珈琲飲む? それともこっち?」

   冷蔵庫の缶ビールを見せると、

 「真面目な話があるから、珈琲がいい」

   と、さっきまでの、柔らかい表情を消していた。

 「……わかった」

   心臓がドクドクしてる。

   真面目な話。きっと、これからの事だ。

   私は、珈琲を淹れて、彼の前に正座した。


  「今さらだけど、 将来を見据えて付き合ってください」


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