ー密 会ー溺れる前に抱き止めて 【最後にSS】

光月海愛(こうつきみあ)

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true love 本当の……

アスファルト

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 「話があるのに、友達と来たの?」

   信は本来、酷く悪口を言ったり、人を貶めるような行動に出るタイプじゃない。
   この前、私を軽い女だと罵った時も、山下と一緒だった。

   あの人がいると、信は強気でいられるのかもしれない。

  「山下とは近々、飲み屋をやろうと思ってる。だからその開店準備で良く一緒にいるんだ」

   飲み屋……水商売を……。

   薔薇園は継がないのだろうか?

   今となっては、そんなこと、もうどうでもいい。

   お願いだから、私の前から消えてーー

 「私には話はないよ。ただ、もう付きまとわないで欲しい……」

 「俺をストーカーみたいな言い方すんなよ!」


   大声に振り返る人の視線を気にし、信は周りをキョロキョロし始めた。

  ……そう、この人はいつも見た目を気にしてる。

   全身、ブランドもので固めて。

   いい車に乗って。

   本当に、それだけ。



「……ストーカーじゃない。 部屋に忍び込んで、盗撮カメラ取り付けて。 おまけに葉築さんまで襲って。立派な犯罪よ。なのに、なんで警察に捕まってないの?」

    別れたことで罪悪感はあったけど、それよりも重い罪を、信は背負ってしまっている。


  信が、怒った顔で私に詰め寄ってきた。

 「だから、それ、なんなんだよ?!」

  思わず体がすくむ。

  「 警察にも言ったけど! 別れる前、遊びに行った時に、確かにカメラを取り付けたよ。それで書類送検されたけど。だから部屋に忍び込んだのとは違うし、ましてや車で誰かをひいた覚えもない!」

 「……え」

   信の眼から、嘘は感じられなかった。

 「俺は、空き巣やひき逃げがあった時にはアリバイあった。店で飲んでたんだからな」

 「……じゃあ……誰が……」

  私の部屋を荒らしたの?
  ただの空き巣?

 「そんなん知るか」

  葉築さんを狙ったのは、誰?

  言葉を失った私の腕を、信がグッと掴んだ。

 「……!」

 「カメラの事は悪かった。それだけ、伊織の事ばっかり考えてたんだよ。だから、もう一回、俺と付き合うこと考えてくれよ」


   葉築さんと食べようとした桃ケーキを、地面に落としてしまった。



   

   ゼラチンに包まれたピンク色の果肉が、アスファルトの上で死んだ魚のように光っている。


 「離して、もう本当に無理だから」

   取られた腕を振るも、


  「頼む、橋元や会社の男よりも絶対良い思いさせてやる。バーで儲けてみせるから」

   信は、離してくれない。


   ″ フラレる事 ″ を避けたい信は、気持ちなんて、どうでもいいのかもしれない。


  「これ以上、しつこくしたら、ストーカー被害で届けるから」

   必死だった信の顔が、大きく歪んだ。


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