ー密 会ー溺れる前に抱き止めて 【最後にSS】

光月海愛(こうつきみあ)

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true love 本当の……

弾ける

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   事故に居合わせたというのは、私だ。
   でも、言っていいの?
   葉築さんは、何て説明する?

   花を花瓶にさせないまま、返事に困っていると、

 「鷲ちゃん! 水道出しっぱなしだよ。病院でも節水しなきゃ」

  ーー天の助け。室岡さんが現れた。


 「あ! これはこれは、もしかして噂の葉築の彼女さんですか?! 写真よりもお美しい!」


    写真で見たことがある室岡さんは、目を輝かせて彼女に挨拶をした。

 「支店長さんだったんですね! 失礼しました。奥田がお世話になっております。私、EDKKさんとも取引のある、二ツ橋商社の新川と申します」

  すかさず、名刺交換に入る。
  元々取引先の女性だと聞いていただけに、彼女の、営業ウーマンらしい身振りや振る舞いは、さすがだと思った。
    見とれていると、

   ″ 早く行け ″
と言わんばかりに、室岡さんが目で合図をするので、そのまま、花を持って病室に戻った。

   皆が雑談を続ける中、

 「お先に失礼します」

   逃げるように家に帰る私。

   もっと、葉築さんと話したかった。


   そう思っていたら、その夜、葉築さんからメッセージがきた。

   戸締まりを厳重にして、ちょうど、一息ついた時だった。

 【花ありがとう。明後日には退院できるみたいだ】

  良かった。じゃあ花は邪魔だったかな?

  薔薇等のゴージャスなモノではなく、カスミソウとガーベラのお安い花だったけど。

  とりあえず、″ おめでとう ″ と返そうとしたら、

  ブブブ!
  返事を待たずにまたメッセージが……。


 【今から電話かけていい? 声を聞きたい】


  単純に嬉しかった。薔薇のように綺麗な彼女がいるのに、と……。

   それだけで私は満足だったのに、葉築さんの話しには、とても動揺した。


 「俺、彼女と別れたんだ」



「別れた……?」

  あの綺麗な彼女と?

 「……うん。今日、会社の皆が帰った後に、そんな話になった」

「どうして?」
 
   事故のせい? 新川さん、聞いてきたもの。

  ″ 事故に居合わせた女性を探してる ″ って。

  浮気を疑われた?

「どうしてって……」

   葉築さんは、すこし間を置いた。
  カチカチ……と、時計の秒針音だけが忙しく響く。

  この時間が長くて、動悸がして、苦しかった。
  彼の言葉を待つのが怖かった。


 「鷲塚さんと、正々堂々と付き合いたいからだよ」

  聞いた途端……苦しかった心臓が、一気に弾けたみたい。

   彼の決断が、また、私の中に大きな罪悪感を作る。
   確かに、この前のキスは今迄のものと違ったし、ハッキリと気持ちを感じ取る事ができた。

  でも……、

 「……なんか、言ってくれよ」

  また、自分のせいで何かを壊すの?

 「……伊織?」

  私は、橋元先生の時と同じように、他人の愛を奪ってしまうの?


 「葉築さんは、平気なの? 私は、お姉さんの家庭を壊した女だよ?」

  あなたは、後悔しないの?

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