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true love 本当の……
新たなーー
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今の音ーーなに?
アパート近くで、事故のような音が聞こえた。
胸騒ぎがした私は、念入りに施錠した鍵を開けて、外に飛び出した。
普段は、あまり顔を見ない他の住人も、驚いて出てきていた。
「あそこっ!! 人っ!! 倒れてるっ」
指をさした方を見ると、男の人が倒れていた。
暗がりで良く見えなくて、目を凝らすと、見覚えのある鞄が落ちている。
さっき葉築さんが履いていたはずの革靴も、私の足元まで飛んできていた。
事故に遭ったのは……葉築さん?
ーーーー
「はい、全身打撲と顔面にも傷を負って全治2週間ほどで、頭も打ってるのでMRIで念のために検査を……」
葉築さんは救急病院に運ばれ、付き添った私は、処置の間に室岡さんへ電話を入れ容態を報告した。
意識はないものの、命に別状はないと分かり、ホッとしていたら、
「被害者の奥田葉築さんの付き添いの方です?」
「……はい」
警察に呼び止められる。
交通課と刑事課捜査係の二人と共に、待ち合いのフロアに移動。深夜の病棟は、とても薄暗くて不気味だった。
「貴女の部屋から出た後の事故ですよね? どういった関係になられますか?」
「会社の同僚です……」
「……同僚、ね」
メモを取りながら、刑事は私を注意深く見た。
「彼の鞄が物色されてたんですよ、なので単なるひき逃げではない。悪質なひったくりかもしれないし……もしくは」
物色? まさか、 カメラを探して?
警察は、まるで私が犯人のような目付きをして聞いてきた。
「何かトラブルに巻き込まれた可能性もあります。思い当たるフシはありませんか?」
……そんな風に見えたのは、きっと、私に後ろめたい気持ちがあるから。
「……トラブルというか……」
「会社でもプライベートでも何でもいいんですよ、どんな事でも教えてください」
「……」
……信が一番怪しい。
でも、車を目撃してないし、断定もできない。
それに、話せば、盗撮された画像は見せなきゃいけないだろう。
映っている橋元先生に迷惑がかかる。
教師というのは聖職で、たとえ今は離職してはいても、何かあると叩かれやすいからだ。
調べは、過去の不倫にも遡るかもしれない。
でも。やっぱり、隠してはおけない。
「実は……」
私は、元カレによる盗撮カメラを、葉築さんが見つけてくれた事を話した。
翌日。
会社に行くと、皆の質問攻めにあった。
室岡さんが、まだ佐賀から戻らずにいた為、事務所内を取りまとめる人間もいなかったから。
「事故の現場に鷲塚さんがいたってことは、そういう関係って事よね?!」
荒城さんは、葉築さんの容態云々よりも、そっちの事実を確認したがった。
「仕事帰りに、ご飯を食べただけよ」
葉築さんには恋人がいる。
どんなに彼の態度が甘くなっても、それは変わってない。だから言えなかった。
「でも、あなたのアパート前なんでしょ?!ひき逃げされたの?!」
「それよりさ、どうする? 立道のせいで仕事溜まりまくった上に葉築まで入院なんて。うち、完全にキャパオーバーじゃん!」
男性社員の方は、色恋よりも、仕事の方が気になっていた。
「もしかしてさー、葉築やったの、立道じゃね?」
「ありえる!葉築、調べてたもんなぁ、あいつの不正」
盗撮トラブルを知らない会社の人は、そう噂してた。
どっちしても、早く解決してほしい。
その日の帰りに、私は、盗撮による被害届け、信から送られてきた画像、そしてカメラを警察に提出した。
お見舞い用の花を買い、その足で葉築さんの入院した病院に行くと、佐賀から帰ってきた室岡さんや、会社の人達がお見舞いに訪れていた。
ベッドの上の葉築さんは、額に傷を負ったものの、見た目は比較的元気そう。
「車にひかれて、そんだけのケガってお前サイボーグ?」
「盗まれたもんとかねーの? USBとか電話とかスケジュール帳とかさ」
「うちの機密情報狙った組織的犯罪かもよ? ライバル社のCDGとかさー」
「皆、テレビの見すぎだよ」
明るい笑顔を見てホッとし、花を活けに廊下の水場に移る。
すると、
「奥田さんの会社の方ですか?」
背後から声をかけられた。
「……はい」
振り向くと、とても綺麗な女性が立っていた。
キリッとしたパンツスーツ姿で、いかにも仕事が出来そうな……。キツメな顔は、威圧感を与えるほど。
「彼が、事故した時に居合わせた女性を探してるんですが」
「え」
ドキッとした。その鋭い視線に。
「私、奥田と付き合ってる新川といいます。彼が何かのトラブルに巻き込まれたと警察の方に聞きました」
「……」
また、
「何か、ご存じですか?」
新たな波風が立つ予感ーー
アパート近くで、事故のような音が聞こえた。
胸騒ぎがした私は、念入りに施錠した鍵を開けて、外に飛び出した。
普段は、あまり顔を見ない他の住人も、驚いて出てきていた。
「あそこっ!! 人っ!! 倒れてるっ」
指をさした方を見ると、男の人が倒れていた。
暗がりで良く見えなくて、目を凝らすと、見覚えのある鞄が落ちている。
さっき葉築さんが履いていたはずの革靴も、私の足元まで飛んできていた。
事故に遭ったのは……葉築さん?
ーーーー
「はい、全身打撲と顔面にも傷を負って全治2週間ほどで、頭も打ってるのでMRIで念のために検査を……」
葉築さんは救急病院に運ばれ、付き添った私は、処置の間に室岡さんへ電話を入れ容態を報告した。
意識はないものの、命に別状はないと分かり、ホッとしていたら、
「被害者の奥田葉築さんの付き添いの方です?」
「……はい」
警察に呼び止められる。
交通課と刑事課捜査係の二人と共に、待ち合いのフロアに移動。深夜の病棟は、とても薄暗くて不気味だった。
「貴女の部屋から出た後の事故ですよね? どういった関係になられますか?」
「会社の同僚です……」
「……同僚、ね」
メモを取りながら、刑事は私を注意深く見た。
「彼の鞄が物色されてたんですよ、なので単なるひき逃げではない。悪質なひったくりかもしれないし……もしくは」
物色? まさか、 カメラを探して?
警察は、まるで私が犯人のような目付きをして聞いてきた。
「何かトラブルに巻き込まれた可能性もあります。思い当たるフシはありませんか?」
……そんな風に見えたのは、きっと、私に後ろめたい気持ちがあるから。
「……トラブルというか……」
「会社でもプライベートでも何でもいいんですよ、どんな事でも教えてください」
「……」
……信が一番怪しい。
でも、車を目撃してないし、断定もできない。
それに、話せば、盗撮された画像は見せなきゃいけないだろう。
映っている橋元先生に迷惑がかかる。
教師というのは聖職で、たとえ今は離職してはいても、何かあると叩かれやすいからだ。
調べは、過去の不倫にも遡るかもしれない。
でも。やっぱり、隠してはおけない。
「実は……」
私は、元カレによる盗撮カメラを、葉築さんが見つけてくれた事を話した。
翌日。
会社に行くと、皆の質問攻めにあった。
室岡さんが、まだ佐賀から戻らずにいた為、事務所内を取りまとめる人間もいなかったから。
「事故の現場に鷲塚さんがいたってことは、そういう関係って事よね?!」
荒城さんは、葉築さんの容態云々よりも、そっちの事実を確認したがった。
「仕事帰りに、ご飯を食べただけよ」
葉築さんには恋人がいる。
どんなに彼の態度が甘くなっても、それは変わってない。だから言えなかった。
「でも、あなたのアパート前なんでしょ?!ひき逃げされたの?!」
「それよりさ、どうする? 立道のせいで仕事溜まりまくった上に葉築まで入院なんて。うち、完全にキャパオーバーじゃん!」
男性社員の方は、色恋よりも、仕事の方が気になっていた。
「もしかしてさー、葉築やったの、立道じゃね?」
「ありえる!葉築、調べてたもんなぁ、あいつの不正」
盗撮トラブルを知らない会社の人は、そう噂してた。
どっちしても、早く解決してほしい。
その日の帰りに、私は、盗撮による被害届け、信から送られてきた画像、そしてカメラを警察に提出した。
お見舞い用の花を買い、その足で葉築さんの入院した病院に行くと、佐賀から帰ってきた室岡さんや、会社の人達がお見舞いに訪れていた。
ベッドの上の葉築さんは、額に傷を負ったものの、見た目は比較的元気そう。
「車にひかれて、そんだけのケガってお前サイボーグ?」
「盗まれたもんとかねーの? USBとか電話とかスケジュール帳とかさ」
「うちの機密情報狙った組織的犯罪かもよ? ライバル社のCDGとかさー」
「皆、テレビの見すぎだよ」
明るい笑顔を見てホッとし、花を活けに廊下の水場に移る。
すると、
「奥田さんの会社の方ですか?」
背後から声をかけられた。
「……はい」
振り向くと、とても綺麗な女性が立っていた。
キリッとしたパンツスーツ姿で、いかにも仕事が出来そうな……。キツメな顔は、威圧感を与えるほど。
「彼が、事故した時に居合わせた女性を探してるんですが」
「え」
ドキッとした。その鋭い視線に。
「私、奥田と付き合ってる新川といいます。彼が何かのトラブルに巻き込まれたと警察の方に聞きました」
「……」
また、
「何か、ご存じですか?」
新たな波風が立つ予感ーー
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