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outflow 流出
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その新年会のあとも、クレーム対応で怒涛のような日々が続いた。
「申し訳ございません!そちらに納めた全てのシステムは、新しいものと取り替えさせて頂きます」
情報漏洩による失った信頼を取り戻すために、葉築さんは被害に遭った会社を回る毎日。
その彼が、手の回らない事務処理を、私が受け持った。
稟議書、発注書、保証見直し……。
やる事は山のようにあって、ほぼ毎日が残業。
「……あれ? 今日も鷲塚さん、一人?」
葉築さんが外回りから帰ってきたPM 7:20。
室岡さんは佐賀に行っていて、事務所は私一人だった。
「はい、でも、もう帰ります。あと二件分で今回の被害会社の処理は終わりです」
ようやく、終わりそうだった。立道の尻拭いが。
「鷲塚さんばっかりゴメンな」
あの夜から、刺々しい物言いが無くなった葉築さんが、サーバーから珈琲を入れて持ってきてくれた。
「ありがとうございます」
気を遣われてる……。
そう思うと複雑だったけど。
″ 辞めるなよ ″
そう言ってくれた事で、自分の存在価値が認められたようで、仕事をやる上では有難かった。
「鷲塚さん」
「はい?」
珈琲を飲んでいると、葉築さんが再び声をかけてきた。
「話があるんだ。飯でも行かない?」
「……ごはん、ですか?」
話? なんだろ?
私が怪訝な顔を浮かべていたからか、
「もう、干物扱いしたり、淫乱みたいな言い方もしない。姉さんの事で話がしたいだけなんだ」
葉築さんは、セックス目的の誘いじゃないとハッキリと言った。
お姉さん……。橋元先生の元奥さん……。
葉築さんを息子さん、私の事を彼のガールフレンドだと思っていたお姉さん。
まだ、あのままの症状なのだろうか?
気になる。
「わかりました」
小さく頷くと、葉築さんも書類をまとめ、片付けを始めた。
丁度、その時ーースマホに着信音。
何気に見たら、最近は何も接触してこなくなった信からだった。
画像付のメッセージ。
何となく不安を抱いて、それを開け、
「……え」
心臓が破けるかと思った。
それくらい驚く内容だった。
「何が食べたい? 寿司以外なら何でも大丈夫だっ……って、どうかした?」
信から送られて来た画像を見て、固まってしまった私。
葉築さんが「閲覧注意のオバケ画像?」と、覗き込もうとして、
「何でもないです!!」
慌ててスマホを閉じた。
「顔色、悪いよ? 本当に何でもないの?」
「……はい」
心臓がバクバクだ。なに、この画像。
こんなもの、いつ撮ったの?
そして、これを送って、信はどうしたいの?
信から送られてきたのは、とてもハレンチなものだった。
「申し訳ございません!そちらに納めた全てのシステムは、新しいものと取り替えさせて頂きます」
情報漏洩による失った信頼を取り戻すために、葉築さんは被害に遭った会社を回る毎日。
その彼が、手の回らない事務処理を、私が受け持った。
稟議書、発注書、保証見直し……。
やる事は山のようにあって、ほぼ毎日が残業。
「……あれ? 今日も鷲塚さん、一人?」
葉築さんが外回りから帰ってきたPM 7:20。
室岡さんは佐賀に行っていて、事務所は私一人だった。
「はい、でも、もう帰ります。あと二件分で今回の被害会社の処理は終わりです」
ようやく、終わりそうだった。立道の尻拭いが。
「鷲塚さんばっかりゴメンな」
あの夜から、刺々しい物言いが無くなった葉築さんが、サーバーから珈琲を入れて持ってきてくれた。
「ありがとうございます」
気を遣われてる……。
そう思うと複雑だったけど。
″ 辞めるなよ ″
そう言ってくれた事で、自分の存在価値が認められたようで、仕事をやる上では有難かった。
「鷲塚さん」
「はい?」
珈琲を飲んでいると、葉築さんが再び声をかけてきた。
「話があるんだ。飯でも行かない?」
「……ごはん、ですか?」
話? なんだろ?
私が怪訝な顔を浮かべていたからか、
「もう、干物扱いしたり、淫乱みたいな言い方もしない。姉さんの事で話がしたいだけなんだ」
葉築さんは、セックス目的の誘いじゃないとハッキリと言った。
お姉さん……。橋元先生の元奥さん……。
葉築さんを息子さん、私の事を彼のガールフレンドだと思っていたお姉さん。
まだ、あのままの症状なのだろうか?
気になる。
「わかりました」
小さく頷くと、葉築さんも書類をまとめ、片付けを始めた。
丁度、その時ーースマホに着信音。
何気に見たら、最近は何も接触してこなくなった信からだった。
画像付のメッセージ。
何となく不安を抱いて、それを開け、
「……え」
心臓が破けるかと思った。
それくらい驚く内容だった。
「何が食べたい? 寿司以外なら何でも大丈夫だっ……って、どうかした?」
信から送られて来た画像を見て、固まってしまった私。
葉築さんが「閲覧注意のオバケ画像?」と、覗き込もうとして、
「何でもないです!!」
慌ててスマホを閉じた。
「顔色、悪いよ? 本当に何でもないの?」
「……はい」
心臓がバクバクだ。なに、この画像。
こんなもの、いつ撮ったの?
そして、これを送って、信はどうしたいの?
信から送られてきたのは、とてもハレンチなものだった。
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