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outflow 流出
クレーム
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「え? 私に?」
まだ営業職として辞令がおりてるわけではないし、名刺も配ってないのに、どこから?
「本当は、立道くんにって言われたけど、あの人不在だから、鷲塚さんお願い。お客さん名は聞きそびれちゃった」
と、電話を回してきたのは、荒城さん。
事務所を見ると、室岡さんをはじめ、確かに営業マンは出払っていた。
コピーを取っていた私は、すぐそばの電話を取った。
「お電話代わりました。鷲塚です。不在の立道に代わりまして、私で良ければご用件をお伺いしますが……」
聞いても分からないかもしれないけど。
すると、電話口から、耳を貫きそうな怒鳴り声が……。
「おい! どうなってんだよ!そこの商品!!」
運悪く、電話の内容は、クレームだった。
「おたくの新商品のシステム!取り入れた途端にエラー続出だし、年内に受注した新規の客、全部別の会社に取られてんだよ!」
電話の相手は、立道が年末の忙しい時に新規契約した、直営店ではないディーラーだった。
「申し訳ありません。エラーに関しては直ぐに対応致しますので。エラーコード等、表記されてましたらお教え頂けますか?」
聞いて直ぐにメンテナンスサービスの方に回すつもりで聞いたのだけど、
「エラーより先に、流れた情報の責任を取れよ!」
先方は、キャンセルになった取引の補償をしろと言う。
これは、こっちが持つ責任なのだろうか?
分かりかねた私は、
「申し訳ありません!立道に連絡を取りまして、お電話差し上げますので」
一度切って、担当に委ねることにした。
けれど、なかなか立道には連絡がつかない。
「ただいまー」
先に葉築さんが戻ってきたので、その件を相談した。
「エラーなら、システムのトラブルだろうからメンテナンスの手配すればいいけど、……新規契約の客を取られたって?」
聞いた葉築さんは、不可解な顔をして、その客先のデータを見ている。
「そんなの営業の力不足じゃないの! 発注前後に他社の車の方が欲しくなるなんて良くある話を、うちに責任取れってオカシイわよ!」
横から口を挟んできた荒城さんをスルーして、葉築さんは、ずっと渋い顔をしてた。
「……どうしました?」
こんな時、直ぐに解決法を見つけられるのがこの人の魅力の一つなのだけれど。
「契約を横取りされたのが、一件じゃないってのが気になるな、と……それに、この新商品を納品してエラーになったクレームはまだ無いから」
葉築さんは、それ以上何も言わずに、どこかに電話をかけ始めた。
「あの、私はどうしたら?」
営業になるものの、受けた電話を全て彼に委ねていいのか分からなかった。
すると、葉築さんは、荒城さんの方をチラリと見て、
「彼女のパソコンから立道にメールしてみてよ。
″ 私事で大事な話があるから直ぐに事務所に戻って ″、って」
荒城さんという ″ 女″ の武器で、なかなか戻らない営業マンを帰社させるようだ。
すると、30分後。
「ただいまー……」
立道が、荒城さんの方を見ながら事務所に戻ってきた。
現金な奴。
まだ営業職として辞令がおりてるわけではないし、名刺も配ってないのに、どこから?
「本当は、立道くんにって言われたけど、あの人不在だから、鷲塚さんお願い。お客さん名は聞きそびれちゃった」
と、電話を回してきたのは、荒城さん。
事務所を見ると、室岡さんをはじめ、確かに営業マンは出払っていた。
コピーを取っていた私は、すぐそばの電話を取った。
「お電話代わりました。鷲塚です。不在の立道に代わりまして、私で良ければご用件をお伺いしますが……」
聞いても分からないかもしれないけど。
すると、電話口から、耳を貫きそうな怒鳴り声が……。
「おい! どうなってんだよ!そこの商品!!」
運悪く、電話の内容は、クレームだった。
「おたくの新商品のシステム!取り入れた途端にエラー続出だし、年内に受注した新規の客、全部別の会社に取られてんだよ!」
電話の相手は、立道が年末の忙しい時に新規契約した、直営店ではないディーラーだった。
「申し訳ありません。エラーに関しては直ぐに対応致しますので。エラーコード等、表記されてましたらお教え頂けますか?」
聞いて直ぐにメンテナンスサービスの方に回すつもりで聞いたのだけど、
「エラーより先に、流れた情報の責任を取れよ!」
先方は、キャンセルになった取引の補償をしろと言う。
これは、こっちが持つ責任なのだろうか?
分かりかねた私は、
「申し訳ありません!立道に連絡を取りまして、お電話差し上げますので」
一度切って、担当に委ねることにした。
けれど、なかなか立道には連絡がつかない。
「ただいまー」
先に葉築さんが戻ってきたので、その件を相談した。
「エラーなら、システムのトラブルだろうからメンテナンスの手配すればいいけど、……新規契約の客を取られたって?」
聞いた葉築さんは、不可解な顔をして、その客先のデータを見ている。
「そんなの営業の力不足じゃないの! 発注前後に他社の車の方が欲しくなるなんて良くある話を、うちに責任取れってオカシイわよ!」
横から口を挟んできた荒城さんをスルーして、葉築さんは、ずっと渋い顔をしてた。
「……どうしました?」
こんな時、直ぐに解決法を見つけられるのがこの人の魅力の一つなのだけれど。
「契約を横取りされたのが、一件じゃないってのが気になるな、と……それに、この新商品を納品してエラーになったクレームはまだ無いから」
葉築さんは、それ以上何も言わずに、どこかに電話をかけ始めた。
「あの、私はどうしたら?」
営業になるものの、受けた電話を全て彼に委ねていいのか分からなかった。
すると、葉築さんは、荒城さんの方をチラリと見て、
「彼女のパソコンから立道にメールしてみてよ。
″ 私事で大事な話があるから直ぐに事務所に戻って ″、って」
荒城さんという ″ 女″ の武器で、なかなか戻らない営業マンを帰社させるようだ。
すると、30分後。
「ただいまー……」
立道が、荒城さんの方を見ながら事務所に戻ってきた。
現金な奴。
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