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fluctuation 変動
ビッチ
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空き巣に入られてから数日後。
仕事中に警察から電話があった。デスクから離れて給湯室に行く。
「盗まれていた通帳が見つかりました」
……と。
印鑑の在処が分からずに通帳だけを持っていた犯人は、使いようがなくて、コンビニのゴミ箱に捨てていたらしい。
おまけに、
「……もしかしたら、なんですが、金銭目的に見せかけた犯行だったかもしれないですね、盗んだ現金も僅かだし……」
ゾワリ……とするようなことを言う。
「金銭目的以外に何かあるんですか?」
「下着とか本当に無くなっていたものはないですか?もしかしたら、猥褻な目的だったかもしれない」
下着、一応確認はしたんだけど。全ては把握出来てないかもしれない。
「狙われる心当たりはありませんか?」
そう聞かれて、頭に浮かぶのは、ただ一人だった。
ーーー信……?
別れを納得していなかった元恋人。
暫くはもう連絡もないし、諦めてくれたのかな?と思っていた。
だけど、警察には話したほうがいいのだろうか?
「……何か、思い当たる人物いましたか?」
電話越しとはいえ、躊躇った様子を感じ取った警察は、
「最近は、直ぐに警察の手抜きだとか、未然に防げたのではないかって叩かれる事件が多くてですね、特にストーカー絡みは……大きな事件に成りうる事なら話してくださいね」
「……はい」
念を押すようにして電話を切った。
……それでも、やっぱり、大袈裟な話にしたくはない。
男女の恋愛で、別れは必ずついてくるもの。自分が悪いのに、被害者面をするのも嫌だった。
スマホを仕舞い、ついでに湯飲みや急須を片付けていると、
「鷲塚さーん、サボってるところ悪いんだけど、奥田が呼んでるよ」
立道が給湯室を覗いて、私を呼んできた。
なんでイチイチむかつく言い方するかな?
「……わかりました」
手を拭いて、事務所に戻ろうとすると、不意に腕を取られる。
「もう、やんないの? ″ 略奪愛 ″」
ーー″ 略奪 ″……。
私が高校の先生と会っているのを見ただけで、なぜそこまで言うの?……
軽く睨んで、立道の手を振り払うと、
「他人のモノにしか興味ない女って、こえーよなぁ」
事務所の方にも聞こえそうなほどの声で、立道が続けた。
「 止めて、そんなんじゃないんだから」
初めて心動かされた恋の相手には家庭があった。
ただ、それだけ。
「そんなんじゃない? 良く言うよ。自分は周りは気が付いてないと思ってたみたいだけど、高校時代、知ってた人割といるみたいだよ? ″ 不倫 ″」
「……え」
それなのに、あの頃と同じように、私を責める人間がまた現れる。
「……調べたの?」
「言い方ひどいな。同僚の出身校なんて共通のデータにあるし、世の中狭いからさ!辿れば直ぐに当時の噂まで嗅ぎ付けられる」
「……噂……」
他人の足元をすくいたい人間は、どこにでもいる。
「大人しい顔して、マジでビッチだったんだな」
払いのけたはずの立道の手が、制服の上から私の膨らみを掴んできた。
仕事中に警察から電話があった。デスクから離れて給湯室に行く。
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おまけに、
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電話越しとはいえ、躊躇った様子を感じ取った警察は、
「最近は、直ぐに警察の手抜きだとか、未然に防げたのではないかって叩かれる事件が多くてですね、特にストーカー絡みは……大きな事件に成りうる事なら話してくださいね」
「……はい」
念を押すようにして電話を切った。
……それでも、やっぱり、大袈裟な話にしたくはない。
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スマホを仕舞い、ついでに湯飲みや急須を片付けていると、
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なんでイチイチむかつく言い方するかな?
「……わかりました」
手を拭いて、事務所に戻ろうとすると、不意に腕を取られる。
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ーー″ 略奪 ″……。
私が高校の先生と会っているのを見ただけで、なぜそこまで言うの?……
軽く睨んで、立道の手を振り払うと、
「他人のモノにしか興味ない女って、こえーよなぁ」
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「 止めて、そんなんじゃないんだから」
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ただ、それだけ。
「そんなんじゃない? 良く言うよ。自分は周りは気が付いてないと思ってたみたいだけど、高校時代、知ってた人割といるみたいだよ? ″ 不倫 ″」
「……え」
それなのに、あの頃と同じように、私を責める人間がまた現れる。
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「言い方ひどいな。同僚の出身校なんて共通のデータにあるし、世の中狭いからさ!辿れば直ぐに当時の噂まで嗅ぎ付けられる」
「……噂……」
他人の足元をすくいたい人間は、どこにでもいる。
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